この本を手にとって下さった方々へ

　占い師は、もしかしたら、ただ占えば良いのでしょう。けれども「私は結婚できるでしょうか」という問いに「はい、二年後に結婚運があります。」と答えることに、一体どれほどの意味があるのでしょう、私は懐疑的にならざるをえません。もちろん、元々が積極的で明るい方ならば「そうか、二年後か。それじゃ今年くらいから頑張って相手を見付けなきゃ。」と考えて、実際にそのようになっていかれる方もいらっしゃいます。そして「先生、有り難うございました。占い、当たっていました。」と御連絡下さるかたもいらっしゃいます。しかしこんな方は本当に一部です。結婚運があるからといって、それだけで幸せな結婚ができる訳ではないのです。それに結婚しさえすればいいというものでもないでしょう？実際、過半数の方が、そのまま結婚しなかったり、結婚した後で離婚したりする現実をどうすればいいのでしょうか。

　占いでみれば、悩むには悩むだけの理由があるのです。例えば、いわゆる「恋愛運」に問題があるとか、「結婚運」に問題があるとか。しかし、今、私が恋愛運が悪いとか、結婚運が無いとか書かなかったのは、私なりに理由があるのです。つまり、問題があるので、その問題をまず解決しなければならないし、その問題を解決しさえすれば、その分野でも何らかの展開を期待できる可能性がある、と私は信じているからです。そしてその問題点はすべて自分自身に内包されているのです。
　私は、依頼者の方に、その問題を自覚して頂き、自分で解決の為に考え行動する参考にしていただくために、例え話や類似例をたくさん話します。それらの話が、その依頼者の方に安心とやる気を与えると思うからです。なかには勿論「私にはそんなこと出来ない。」とか、「もっと簡単に、なんとか出来ませんか。」とかおっしゃる方がいらっしゃいますし、「私に問題があるとは思えません。」とおっしゃる方も確かにいらっしゃいます。そりゃあ、場当たり的に打つ手があるときもありますし、場合によってはすぐに手を打たなければならないこともあります。しかし、それはあくまでも緊急の手段であって、根本を解決しておかなければ、またすぐ再発するのです。そしてその根本は自分自身の内にあるのです。そこを自分自身で解決しておかなければならないのです。安易な、他力本願的な解決法が欲しい方は、私にはどうしようもないのです。その間違いに気付いて下さるように祈るだけしか。

　この本に取り上げた話は、私がよく話している実話です。もちろん分かりやすいようにディフォルメしてありますけれども。ですから私の依頼者には結構なじみの話ですし、実際に依頼者の方々もこれらの話から多くの示唆を受けて、頑張って問題をクリアーされた方もいらっしゃいます。そしてそれでこの話の主人公になっていらっしゃる方もね！
　「みーんな悩んで大きくなった」わけで、「みんなで悩めば怖くない」と思いません？
　ラロシュ・フーコーという人の名言に「過ちを犯さない人間は、たいてい良いこともしない。大過なく人生を送る人間は、自分が思っているほど立派な人間ではない。」というものがあるそうです。そう、人間、生きていれば一度や二度は何や彼やと起こるものです。かの徳川家康公ですら「重荷を負うて遠き道を行くがごとし」とおっしゃっているのが人生です。というよりも、彼が「重荷を負うて」生きてくれたからこそ、約三〇〇年の平和を人々にもたらすことが出来たのです。問題を避けることは一概に良いとはいえないと思います。問題にぶつかり、解決に必死で取り組むことは、人を強くし逞しくしてくれます。

　事なかれ主義なんていう主義があるのかないのか知りませんが、自分だけ「大過なく人生を過ごそう」と考えた人々が、結局「世間」や「自分が思っているほど立派な人間ではな」かったサンプルケースは最近沢山ありますよね。裏社会への利益供与や、汚職事件で名前が挙がっている方々や、問題が起こったときに何でも隠そうとする自治体や、そうそう「もんじゅ」の事故もありましたね、学校内のいじめの問題でも。「大過なく人生を過ごそう」と問題から目を背けることは、何も問題解決には役立たないどころか、さらに大きな問題を引き起こしかねませんよね。
　自分自身の問題に気付いて下さい。実際ほんのちょっとした心がけで、解決することも多いのです。勿論かなり大胆に行動しなければならない場合もありますが、個人的な恋愛、結婚などの問題でしたら、本当に心がけ次第なのです。
　そのための参考事例です。どうか役にたてて下さい。
　事例をまず読んで、自分だったらどうだろうか考えて見て下さい。それからついでに私の考えにもできれば耳を傾けてみて下さい。さらに暇があればお友達にでも「どう思う？」などと聞いてみれば、いろいろな考え方があるものだ、と感心するかもしれませんね。

　そうやって、自分の問題点を探り出し、そして解決のために、毎日心持ちをちょっとだけ振り返って下さい。そしてゆっくりと少しずつ解決に向かって進んでゆきましょう。どうせトラブルと縁が切れないのなら、迎え撃つ覚悟で、積極的に生きている人生の中に存在する試金石として格闘したいものですよね。見えないふりをするよりも、ましてや逃げ回るよりも、ね。

　今回、テーマを結婚に限定しました。理由は、時代の流れの中で、価値観が急速に変化している分野であること、さらに人間としての普遍的な問題に係わることです。しかもこの問題は、経済問題等に比較し一見つまらなく見えますが、社会の根幹に係わる問題であるからなのです。
今、約二〇〇〇年に一度の大きな時代の変わり目です。多少占星術的にいえば、春分点が約二〇〇〇年を経て魚のサインから水瓶のサインに移行する、その時なのです。このような転換点は過去にもありました。そしてその度に人類は大きな転換を経てきたのです。まず、なによりも価値観が変化するのです。そしてこの価値観の変化が人間社会の全ての局面を変化させていくのです。それは急激にある時は揺り戻しながらあるいは緩やかに移行していくことでしょう。

　水瓶のサインは風のエレメントに属し、クオリティーは不動です。本宮は友人関係を司ります。理想的で独立的、社交的です。その傾向はすでに顕著に現れ始めています。
　そして水瓶の守護星は天王星で、天王星の象徴するものは変化であり、自由への要求です。例えば人物でいえば、改革者であり、物品でいえば最新技術、今でいえばマルチメディアなどです。
天王星の発見は一七八一年で、象徴的な出来事は一七八九年のフランス革命、一七八七年合衆国憲法成立つまりアメリカの独立でしょうか。この頃から近代が始まり、独立と戦争と科学の時代に入りました。価値観は大きく変化し始め、現在すでにかなり進行しているといってよいでしょう。そして今、魚のサインに象徴される二〇〇〇年が終わろうとしています。

　理想的で独立的といえば聞こえはいいのです。自由への要求ももっともなことです。友人関係の重要性は最近とみに高まってきています。しかし、全てについて前提となっていることがあるのです。それは「自分の事は自分ですること」、「自分の責任は自分でとること」です。勿論、友人達は力を貸してくれるでしょう、本人にその気があれば。しかし助けを求めなければだれも構ってくれないでしょうし、本人にその気がなければだれも助けてはくれないでしょう。自立的でなければならないのです。

　統率し命令する人がいてそれに従うことは、ある意味ではとっても楽なことです。なにしろ責任がありません。国民の幸せと繁栄は、今までは為政者が考えるべきことでした。しかし今後は自分で考えなければなりません。金融ビッグバンだって、各種の規制緩和だって、今後は政府は干渉しないから、自分たちでやってくれ、ということです。
　身近な例でいえば、昔は年頃になれば周囲のひとが心配してくれてそれなりのお見合いを用意してくれました。現在ではお見合いしたければ、自分でお金を支払って然るべき機関に紹介を依頼しなければなりません。自身で決断し、行動しなければならないのです。

　今後は自身の責任で行動しなければならない場面が急激に増えて行くでしょう。日本でもとっくに経済界、金融界において金融自由化だの、終身雇用制の崩壊だのと従来の制度は崩れつつあります。勿論、個人の生活の場である家庭においても徐々に変化は生じつつあります。日本における夫婦別姓の論議など典型でしょう。世界における、女性の地位の向上についての論議の高まりも、アメリカで流行のセクシャルハラスメントや家庭内暴力に対する論議の高まりも同根です。

　実力主義の給料になれば、特に若い戦力の人々の給料が年輩者より多くなるでしょう。勿論年齢を重ねた有能な管理者はそれなりの金額を確保できるでしょうが、数は極端に少なくて済むでしょうから、中高年の給料は総体的に安くなり、失業率も増えるでしょう。そして若手もいづれ年をとるのですから、稼げる内に稼いで置こうと、競争はさらに熾烈を極めるようになるかもしれません。一方で自分のやりたいことしかやりたくないと、我が道を行く人達も、確実に増えていくでしょう。

　女性だって働くとなったら、女性としての社会的保護は、今後はなかなか望めないと考えた方がいいと思います。それに変わるのが同じ立場にある人達のネットワークでしょう。仲間でみんなで助け合うことで、一時的に不利な立場を乗り切ることが可能でしょう。

　「熾烈な競争と、一方では助け合う仲間」、個々人が独立し、そして平等な立場で助け合う。自分のことだけしか考えない人は、孤立してしまいます。

　価値観が移行し社会が変化するといっても、悪いことばかりや、良いことばかりではありません。どだい、私達一人一人がこれからの世界を創り出すのです。良い社会になるか、より悪くなるか、それは分かりません。私達次第なのですから。

　思うに、この地上は予備校の夏期集中特訓コースのようなものです。みんな本来の学校があって、一時的に特訓を受けにきているのです。そう、私達は志願して、許されてこの特訓コースに参加しているわけです。折角許されてここにきているのです。精一杯、自分自身の魂の成長のために生きてみませんか？私達のたどる人生のカリキュラムは、既にこの地上に生まれる前にある程度定められています。そして、それにどのように対処するかは私達の自由意志に任されているのです。つまり、人生の問題の一つ一つが私達を鍛えてくれる試金石なのですね。勿論私達には自由意志が与えられているのですから、問題から逃げることも誤魔化すこともできるわけですよね。でも、そんなことばかりしていると、一体何のためにこの地上に生まれてきたのか、分からなくなります。人生の意味がないじゃないですか。

　全てに適用できる公式やルールはあり得ません。そしてこの地上において、絶対的な善も絶対的な悪もありません。そして私達の知識も経験も限られています。ですから、私達は一歩一歩、考えながら手探りで生きて行くしかないのです。様々な条件の下でも自分は自分なりに最善をつくして生きるしかないじゃないですか。その為に生まれてきたのですから。

　今回この本をケーススタディー形式にした理由も、全てに適用できるルールはないと考えたからです。少しずつでも類似のケースがあれば、それが自分で考えるきっかけになってくれるかなと。もし、読んで下さった方で多少でも参考になったり、きっかけになったりしてくれれば、私はとても嬉しく思います。わたしの依頼者の方々にも、いつも何らかのきっかけになっている話ばかりです。多分、いえきっと、参考になってくれると思います。

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