おまけ劇場「片づけのいいんちょ」

おまけ劇場「片づけのいいんちょ」7話〜12話

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第7話◆

<前回までのあらすじ・ゴミ捨てから帰ったもんがらは、怒りに肩を震わせるいいんちょに直面  する。いいんちょがもんがらの鼻先に突きつけた物とは一体?> 「なんやのこのCD−ROMは!」 「いや、それは、その」 「もんがらくんは、うちのこと本気で好いてくれてる思てたのに!」 「いや、それはもちろん、いいんちょのことは大好きだよ」 「だったらなんでこんなもん持っとるの!」 「『こんなもん』はひどいよー」 「ひどいのはもんがらくんの方やわ。うちに隠れてこんなもんやっとるなんて!」 「別に隠れてないよ。言う機会がなかっただけだって」 「言い訳は男らしくあらへんに!」 「そんなぁ」 「こうやって首輪と鎖で拘束したり、縄で縛ったり、無理矢理させたりしたい思うとるんやろ!」 「そんなこと思ってないってばー」 「せやったらなんでこんなんやる必要があるん?」 「それは、面白いから…」 「面白い!? やっぱりもんがらくんはこーゆーのが好きなんかいな!」 「そ、それは、好きだけど」 「エッチスケベ痴漢変態! もう信じられへんわ!」 「そうじゃないんだ。誤解だよ、いいんちょ」 「今更五階も六階もあるかいな!」 「だからぁ、いいんちょが考えてるようなHなだけのゲームじゃないんだよう。その『痕』は」 <第8話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第8話◆

<前回までのあらすじ・もんがらの部屋で『痕』のCD−ROMを見つけたいいんちょは、パッケ  ージの画面写真を見て激怒。もんがら必死の弁解は通じるか?> 「ほな、どんなソフトや言うの。このパッケージはどう見てもスケベなソフトやない」 「そう思うのが素人の浅はかさ」 「なんやて!?」 「いえ、なんでもありません。とにかく、その『痕』は単なるHソフトじゃないんだってば」 「そうやろか? にわかには信じられへんのやけど」 「…俺の眼を見ろ、いいんちょ!」 「な、なんやの、突然?」 「このバイカル湖の湖水のように澄んだ眼を見てくれ」 「なんか充血しとるわ。霞ヶ浦並の濁り方やな」 「そ、そーじゃなくて。嘘をついている眼に見えないだろ、と言いたいの」 「もんがらくんの眼を見たら、かえって信じられんくなったわ」 「ひ、ひどい…」 「心情的にはもんがらくんを信じたいんやけどな」 「…俺は嘘なんかつかない。ジッチャンの名にかけて!」 「アホかーい!」  すぱーん! 「ひ、ひさびさのハリセンツッコミ…」 「ここで漫才やっとってもらちがあかんわ。実際にやって見せてくれればすぐ判るやん」 「言われてみれば、ごもっとも」 「論より証拠や。はよやってみ」 <第9話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第9話◆

<前回までのあらすじ・もんがらはいいんちょの誤解を解くために、『痕』を実際にプレイしてみ  せることになったが…> 「じゃ、始めるよ。」  ♪こんけん、きんこーん、きんこーん(オープニング曲『寝覚月』)  『夢。夢を見ている。暗い部屋の中で、ひとり身体を抱いて震える夢だ。』 「なかなか渋いオープニングやね」 「だからよくできたソフトだって言ったでしょ。判ってくれた?」 「まだ判断を下すには早すぎるわ」 「うー」  『四女の初音ちゃんは15歳の高校一年生』 「高校!? どー見ても小学生やん!」 「いや、それは、ソフ倫規定が…ごにょごにょ」  『申し遅れましたが、私、県警の長瀬といいます』 「この刑事さん、来栖川先輩を迎えに来る執事さんによう似とるなー」 「いいんちょ、それは言っちゃダメだって」  『血に混じって、臓器の破片が散らばっている。…その淡いピンク色の物体を見て、俺はスー  パーで売られている白子のパックを思い出した。』 「いややわぁ。白子食べられへんようになるやないの。うちこういうの苦手やねん」 「そりゃいいこと聞いちゃった」 「もんがらくん、なんか言うた?」 「いいえ、なんにも」  『俺がその鎖をじゃらりと引くと、鎖は響子さんの恥ずかしい部分とお尻を食い込むように圧迫  し、彼女は苦痛の呻き声を漏らした』 「やっぱり、スケベなソフトやん!」 「まだ判断を下すには早すぎるよ」 「うちのマネせんといて」  『蒼い月光に照らされた千鶴さんの裸は、神秘的で、エロチックで、そして、何よりも、美しか  った。』 「またスケベな場面やん! 今度も鎖でつないだりするん?」 「しないしない」  『…この身にかえても、あなたを殺します…』 「なに!? ホンマに殺されてしまうのん?」 「まあ、最後まで見ててよ。もう少しだから」  『その瞬間、俺は、鬼と化した。』 「鬼になってしもたら、まずいんとちゃう?」 「だから、見ててってば」  『千鶴さんは、じっと俺を見つめている。「…わたし…もう…たすからない…から…」』 「うそやろ? なんとか助かるんやろ、な、もんがらくん?」 「………」  『「…い…いもうと…たちのこと…たのみ…ます…」そう言った途端、彼女の手から力が失せ、  するりと俺の手からこぼれ落ちた。』 「…うっ、ううっ」 「なに? もんがらくん、たかがゲームで泣いとるん?」 「そう言ういいんちょだって、目が潤んでるじゃないかぁ」  『このまま、いつまでも夢が続けばいいと思った。こうして、いつまでも千鶴さんに抱かれてい  たいと思った。俺の髪を撫でる千鶴さんの手。それは、野をそよぐ風のように優しく、朝の陽射  しのように暖かだった。』 「お涙頂戴な話やったなー。大衆に迎合した作家が書きそうなシナリオや」 「こういう話が好きなんだけど、いいんちょは気に入らなかった?」 「うちもこういう話、結構好きや。人の弱点を突くなんて、もんがらくんも卑怯やな」 「がくっ」 <第10話に続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第10話◆

<前回までのあらすじ・『痕』をプレイしてみせたもんがらは、いいんちょの誤解を解くことに  成功したようだが…> 「ふう、いいんちょも『痕』の良さを解ってくれたみたいで、よかったぁ」 「ホンマにもんがらくんの言う通りやったね。もんがらくんがおもろい言うのも解るわ」 「でしょう?」 「パッケージ見たときは、絶交したろかと思うたんやけどね」 「おおこわ」 「…なあ、もんがらくん。ちょっと訊いてみたいんやけど」 「何? いいんちょ」 「男の子って、この千鶴さんみたいな年上の女性に甘えてみたいとか思たりするもんやの?」 「そ、そりゃあ、年上の女性への憧れは誰でも経験するんじゃないかな」 「ふーん。もんがらくんも?」 「それはまあ、ね。…だけど、いいんちょもしっかりしてるから、年上の女性みたいに思えるとき があるよ」 「それって、うちが老けてる言いたいの?」 「そうじゃなくて、甘えてみたいとか思うときがあるってこと」 「え?…ほなら、もんがらくん、甘えてみる?」 「ええっ!…い、いいんちょの胸に顔をうずめたりとか?(どきどき)」 「そこまで言うとらせんわ!…でも、もんがらくんにならそれくらい許してもええかもな」 「じゃ、じゃあ(どきどきどき)」 「もんがらくん、目つきがやらしいに」 「………(どきどきどきどき)」 「手つきもやらしい!」 「………(どきどきどきどきどき)」 「ほぅ…(色っぽいため息)」 「…い、いいんちょーーーっ!」がばあっ!  すぱこーーん!!! 「アホッ! 冗談に決まっとるやろ!」 「いたた…。ひ、ひどいよ、ここまで期待させといてー(うるうる)」 <第11話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第11話◆

<前回までのあらすじ・いいんちょに「甘えてみる?」と小悪魔的なことを囁かれたもんがらは、  一も二もなくその豊かな胸に飛び込もうとするが、「冗談や」と一蹴されてしまった。> 「はうー。あれだけ盛り上げておいて、寸前でおあずけなんて、残酷だよ、いいんちょ」 「何ぶちぶち言うとるねん。冗談に決まっとるやろ。本気にしてどないすんねん」 「だってー。ぶちぶち」 「ほら、いつまでも物欲しそうな顔しとらんで! 忘れとるんとちゃうか? うちらはもんがらく んの部屋の片づけをしとるんやで!」 「そ、そうでした。忘れてました」 「あきれてモノも言えんわ。肝心の部屋の主がこれやもんなー」 「しゅ、しゅみましぇん…」 「張り合い無いから、うち、もう帰るわ。ほなな〜」 「ああ、待っていいんちょ! そんなケロちゃんみたいなこと言わないで!」 「…ケロちゃんて、誰や?」 「読んでる皆さん、カードキャプターさくらを見てない人には意味不明なネタですみません」 「もんがらくん、誰に謝っとんのや?」 「さあ、誰でしょう?」 「…変なもんがらくん」 「ま、その話は置いといて。ちゃんと片づけるから、帰らないで、いいんちょ。お願い」 「しゃーないなぁ、もう。うちも貴重な休日をさいて手伝っとるんやさかい、もんがらくんもちゃ んとやってくれへんと、うちがまるっきりアホみたいやんか」 「ごめんなさい。今すぐちゃんとやります」 「ほな、さっさと終わらそ」 <第12話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第12話◆

<前回までのあらすじ・片づけをしていることを忘れていたもんがらに、いいんちょはあきれて帰  ってしまいそうになる。もんがらはなんとか引き留めるが…>  どたんばたん。がたがた。どさどさ。 「よし、床の上は片づいたね」 「ほな、掃除機かけてくれる? うちはベッドの上を片づけるさかい」 「りょーかい」 「それにしても、掛けぶとんの上にこんなに物を置いて、寝るときはどうしとるん?」 「そのままふとんの下に潜り込んで…」 「アホ、何考えとんねん! ものぐさもそこまで行くと、怒るを通り越して感心してまうわ」 「いやー、それほどでも」 「謙遜すな! うちは皮肉を言っとるのや」 「…掃除機持ってきまーす」すたたた…  ずーん、ずぅーん、ずずーん(←掃除機の音) 「よーし、あらかた終わったかな」 「もんがらくん、雑巾はどこや?」 「洗面所の脇に自分で縫ったやつがあるよ」 「自分で縫うたん? へー、もんがらくんて、意外とマメやね」 「まあね。へへへ」 「それなのに4ヶ月も片づけをせえへんとは、理解に苦しむわ」 「あう」  きゅ、きゅ、きゅ、きゅ 「ほぼ完了やね」 「なんだか自分の部屋じゃないみたいだ」 「もんがらくん、この本はどこに置いたらええの?」 「本棚の右端下から2段め」 「この箱は?」 「天袋に入れといてよ。…ん? まてよ、天袋?」 「ここやね」がらがらっ 「いいんちょ、ちょっと待ったーっ!」 <第13話へ続く>

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