おまけ劇場「片づけのいいんちょ」

おまけ劇場「片づけのいいんちょ」13話〜最終話

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第13話◆

<前回までのあらすじ・いいんちょの協力でもんがらの部屋の片づけもほぼ終了。残った箱を片づ  けるべく天袋を開けようとするいいんちょにもんがらの制止の声が響きわたる!> 「もう開けてしもたわ。どないしたん?」 「ああ…、いやその」 「凄い声で止めるもんやから、中からライオンでも出て来るんかと思たわ」 「この部屋は動物園かい」 「別に麻薬や拳銃を隠してあるわけやないやろ?」 「ないない。そんなものは」 「なら問題ないやん。変なもんがらくんやな」 「(気がつかなきゃいいけど)」 「ほいっと。これで片づけも完了やね。それにしても、段ボール箱の多い天袋やな」 「気にしない、気にしない。さあ、お茶でも入れるよ」 「気にしないと言われると、かえって気になるわ。さっきの絶叫も変やし。何が入っとるん?」 「そ、それはぁ〜」 「はっきりせんね。直接見た方が早いわ。よいしょ」 「ああ…」  ずるずる。ぐらり 「あ、いいんちょ、危ない!」 「きゃーっ!」  がたん、ごん、どさどさどさーっ! 「あたたたた…」 「いいんちょ、大丈夫?」 「眼鏡がどっかへとんでしもたわ」 「(じゃあ、今は見えてないじゃん。助かった〜)」 「で、結局箱の中身は何や?」 「眼鏡がないと何も見えないでしょ。箱なんかどうでもいいから、眼鏡探そうよ、眼鏡」 「眼鏡がのうても、顔近づければ見えるわ。(じーっ)ああーーっ!!」 <第14話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第14話◆

<前回までのあらすじ・いいんちょは天袋の中身の箱を引きずり出す。しかし箱がひっくり返り、  眼鏡をとばしてしまう。顔を近づけて箱の中身を見たいいんちょは…> 「もんがらくん! これ、スケベ同人ソフトやん! こんなもん隠しとったんか!」 「ええ?? そんなもの買った覚えはないけどなあ。…はい眼鏡」 「あ、ありがと。…それはともかく、これ、どう見てもスケベ同人ソフトやん」 「『さくらの季節』かぁ。それ、市販ソフトなんだけど」 「ウソやぁ。このキャラはどう見てもレイアースとエヴァンゲリオンとセイントテールやん」 「意外とアニメに詳しいね、いいんちょ」 「こ、神戸の悪友の影響や。…それにしても、同人ソフトでもないのに、こんなにパクリキャラを つこてもええんかいな?」 「そんなことは発売元のティアラに言ってくれー」 「ほな、それは置いとくとして。またスケベなソフトを隠しとったとは、どういう訳や?」 「無用な誤解を避けるために、敢えて黙っておいたんだけど。でもHなだけのソフトじゃない んだよ。どれも」 「そうなん? ま、『痕』のこともあるし、信じてもええけど。ほな、この『メッセンジャーフロ ムダークナイト』とか『雫』とかは、スケベなだけのソフトやないんやね?」 「そうだよ。どれも内容的に優れているんだ。特にシナリオが」 「そうなんか。せやったら、またやって見せてくれるん?」 「残り話数も少ないから、やめておきましょう」 「残り話数って…なんの話や」 「こっちの話。じゃあ、お茶入れてくるから、そのソフトはまた天袋にしまっといてよ」 「わかったわ。…それにしても、丸い銀色のシールの付いたソフトばっかりやなー」  ぱたぱたぱたぱた…がちゃ、ばたん 「お待たせ、いいんちょ。シュークリームは嫌いじゃないよね」 「うん、好きやわ。あ、うち、ブラックコーヒーはダメなんやけど」 「そう思って、紅茶にしといたよ。水出しのアールグレイ」 「ありがと」 <第15話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第15話◆

<前回までのあらすじ・前もって『痕』を見ていたため、18禁ソフトを見つけたいいんちょのお  怒りは未然に防がれる。そしてふたりは紅茶を楽しむことに…> 「はい、いいんちょ。ガムシロップ使ってね」 「ありがと。アイスティーなんか飲むの、久しぶりやわ」 「喫茶店のおばさんから貰った水出しアールグレイだけど、どうかな?」 「うん、冷たくて美味しいわ。熱い紅茶に比べると香りが弱いけど、口の中で広がる感じやね」 「そう! 低温で感覚が引き締められた口腔に、アールグレイの香りが広がり、レモンの酸味とガ ムシロップの甘味が手を取り合って駆け抜け、さながら高原を駆け抜けるそよ風のような爽やかさ が全身を包み込む…」 「ふふ、もんがらくん、『美味しんぼ』の読み過ぎや」 「ばれたか。…あ、よかったらシュークリームも食べてよ」 「うん、ありがと。うち、シュークリームは好きなんやけど、あんまり食べると太りそうでいやや わ」 「女の子って、ホント神経質なほど太ることを恐れるねー」 「だって、…男の子って、太った娘よりスマートな娘の方が好きなんやろ?」 「それは、人それぞれだと思うけどなぁ」 「じゃ、もんがらくんはどんな娘がええの?」 「え!? そ、それはその、スタイルにはあまりこだわらないから」 「ほな、何にこだわるの?」 「…強がりで、意地っ張りで、他人に弱さを見せるのが大嫌い、でもほんとはとてもか弱く繊細で 寂しがり屋の、眼鏡をかけて髪を三つ編みのおさげにした神戸出身の娘が、誰よりも好きだ!(き っぱり!)」 「えっ(赤面)…そ、その条件を全部満たす娘が、早う現れるとええね。影ながら応援しとるわ」 「うー、もう現れてるのにー」 「…はあ。でもやっぱり、少しはダイエットした方がええかもなぁ。最近脂肪が付いたような気が するんや」 「いいんちょ、別に太ってなんかいないよ(胸の辺りはたっぷり脂肪が付いてるみたいだけど)」 「もんがらくん、胸が何やて?」 「い、いいえ何も言ってません!(地獄耳だなあ)」 「なんか胸の辺りに視線を感じたんやけど」 「気のせい気のせい」 「男の子って、なんでこう胸ばっか見るんやろなー」 「それは男の本能というやつでしてね」 「…やっぱり胸見てたんやん!」 「し、しまったー! 誘導尋問だったのか!」 「ほんまにもう。…そんなに見たいんやったら、見せたろか?」 <第16話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第16話◆

<前回までのあらすじ・スタイルを気にするいいんちょに、「太ってないよ」とフォローを入れた  もんがらは、視線を胸に向けてしまう。それに気付いたいいんちょは爆弾発言を!> 「胸、そんなに見たいんやったら、見せたろか?」 「ぶぶーーーっっ!!!」 「きゃあ! もんがらくん、きたない!」 「ご、ごめん! いいんちょがとんでもないこと言うもんだから、吹き出しちゃった!」 「ああ、ブラウスに紅茶がついてしもた! はよ洗わんと、染みになってまうわ!」 「え、えーと。いいんちょ、胸の話は?」 「そんなこと言うとる場合かいな! だいたい茶色いしみのついたブラウスじゃ恥ずかしくて帰れ へんわ」 「うー、むねー。…って、『帰れない』!? …もやもや(いけない妄想)」 「なにゆるんだ顔しとるんや、もんがらくんは! この家、乾燥機はあるん?」 「え? あ、あるけど」 「ほな、急いでこのブラウス洗うて乾かしてくれへん?」 「は、はいはい。………むねー」 「いつまでも未練がましくむねむね言うとらんで、さっさとする!」  ばたばたばた、ぱたぱたぱた… 「それじゃ、いいんちょのブラウスを洗濯している間は、このワイシャツを着ててくれる?」 「うん、ありがと」 「脱衣所はここね。洗濯機もそこにあるから、着替えたらブラウスは洗濯機に放りこんどいて」 「わかったわ。ほな、ちょっと脱衣所借りさせてもらうわ」  ぱたん。…ぷつ、ぷつ、ぷつ、ぷつ、…かさかさ、すすすっ(←衣擦れの音) 「………(←想像している)」そーっ… 「もんがらくんっ!! のぞいたらあかんに!!」 「(ギクッ!!)はははいぃ!!」  かちゃ 「はい、着替え終わったさかい、洗濯してくれる? …もんがらくん、のぞいてへんやろね?」 「のぞいてなんかいないって。(のぞこうとはしたけど)じゃ、いいんちょは部屋に戻っててくれ る?」 「うん。ほな、洗濯よろしくな」  ぱたぱたぱた… 「さーて、それじゃさっさと洗濯しますか。…ああ、いいんちょがついさっきまで袖を通していた ブラウスだぁ。いつの日かいいんちょをこうぎゅうっと抱きしめたいなぁ」ぎゅううぅっっ 「………もんがらくん」 「うわあっ!!」 「うちのブラウス抱きしめてナニやっとるの?」 <第17話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第17話◆

<前回までのあらすじ・もんがらはいいんちょに紅茶を吹き掛けてブラウスを汚してしまい、急遽  洗濯をすることに。ところが洗濯場でブラウスを抱きしめているところを見られてしまう!> 「ナニしとるん?」(ジト目) 「あ、あのそのつまり〜」(冷汗) 「もんがらくんて、そういう趣味があったん?」(冷たい視線) 「そ、そうじゃなくて〜」 「…変態」(突き刺すような視線) 「違うんだ、いいんちょ。その〜」 「変態」 「誤解なんだよ〜」 「変態」 「だから、あのね?」 「へ・ん・た・い!」 「いいんちょ、聞いてくれ! お願いだから!」 「…聞いたるわ。なんやの?」 「ブラウスが好きなんじゃない! いいんちょが好きなんだ!」 「せやったら、なんでブラウス抱きしめて陶然としとるん? どう見ても変態やん」 「だって、直接いいんちょを抱きしめようとしたらハリセンでひっぱたかれるでしょ? だから…」 「代償行為としてうちのブラウス抱きしめてた、と言いたいんか?」 「そう」 「あっきれた! もんがらくん、男やろ!」 「そりゃ、そうだけど?」 「男やったらハリセン程度を恐れてどないすんねん! たまには何者も恐れずに全力で突っ込んで みたらどうやの!」 「…え?」 「さ、アイスティーがぬるまってまうわ。さっさと洗濯始めて、部屋戻ろ」  すたすたすた… 「な、なんかよくわかんないけど、破局は免れたみたいだ…」 <第18話へ続く>

◆おまけ劇場「片づけのいいんちょ」第18話◆

<前回までのあらすじ・ハリセンでひっぱたかれることを恐れるもんがらに、いいんちょは「男な  ら恐れずに突っ込んでみろ」と怒る。そして二人は部屋へと戻る…>  ぱたぱたぱたぱた、がちゃ、ばたん 「さ、せっかくもんがらくんが入れてくれたアイスティーやし、ぬるまってしまう前に飲も」 「うん…いいんちょ、もう、怒ってない?」 「もんがらくんがブラウス抱きしめて悦に入ってたことか?」 「う、うん」 「うちが怒ってるのは、もんがらくんに意気地がないことの方や。ブラウスなんか抱きしめんでも、 本物が目の前にいるやん」 「え? そ、それって…」 「ほかにも、これのこととか」がさっ 「あ、そ、そのアルバムは!」 「片づけの最中に見つけたんや。うちの写真ばかりやけど…」 「ごめん、いいんちょ! 無断で撮ったりして!」 「せやろなぁ。うち、全然撮られた覚えないし、正面から撮った写真は1枚もないもんな」 「いいんちょの写真が欲しくて、つい…」 「だったらうちに直接言えばええやん! もんがらくん、変なところで引っ込み思案なんやから!」 「…ごめん」 「もんがらくん、うちのこと、好いてくれてるんやろ?」 「もちろん!」 「だったら、ふざけ混じりで言うてばかりおらんで、たまには真面目に心を伝えようとしてくれへ ん? もんがらくんが恥ずかしがり屋なのは解っとるけど、うちも真剣な言葉を聞きたいときだっ てあるんや」 「…いいんちょ…」 「だから意気地なしや言うとぉねん」 「…いいんちょーっ!」がばっ! 「きゃっ!?」  …どさっ 「ちょ、ちょっと、もんがらくん!? いきなり押し倒すなんて、何考えとるん!?」 「いいんちょ、好きだ、大好きだ!」ぎゅうっ! 「…もんがらくん、うちは『恐れるな』とは言うたけど、『慌てろ』とは言うてへんに?」 「え?」 「明日から一緒に勉強するんやろ? これからずっと一緒にいられるんやろ?」 「う、うん」 「だったら、慌てることないやん。激しすぎる炎は早う消えるけど、静かに燃える炭火はいつまで も燃え続けるんよ。うちらも炭火みたいに暖かくてずっと続く、そんな関係を作ろ? な?」 「…うん。ごめん、いいんちょ、乱暴なマネをして」 「ふふ、許したるわ。…ところで、うちがここに来たのは何のためやったっけ?」 「あ、そういえば、一緒に遊園地に行く約束をしてたんだっけ! 片づけですっかり忘れてた!」 「もう夕方やし、遊園地は無理やね」 「じゃ、ブラウスが乾いたら、一緒に夕飯を食べに行こうか?」 「うん、遊園地はまた今度やね。…もんがらくん」 「何? いいんちょ」 「…キスくらいなら、今許したっても、ええよ」 「…いいんちょ…」  ………お幸せに。 ◆ 「片づけのいいんちょ」完 ◆ 著・もんがらかわはぎ

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