第5章 トカイワイン |
フランス国王・ルイ14世が、「王のワインにして、ワインの王である」といったトカイワイン。世界3大貴腐ワインのひとつで、ハンガリーのトカイ地方で産します。 フランスやイタリア、ドイツのワインは日本では普通に売っています。更に、カリフォルニア、チリ、オーストリア、ニュージーランドといったワインも比較的良く見かけることが出来ます。しかし、ハンガリーワインとなると、よほどの専門店でもない限り、ほとんど見かけることはありません。ですが、実は、ハンガリーはぶどう栽培に適した土地がいくつもあり、大変なワイン王国です。白ワインの産地でトカイ・アッスと呼ばれる貴腐ワインが有名なトカイ、ワイン畑の丘に囲まれる窪地に沢山のワインセラーが並ぶ美女の谷があり、牡牛の血と呼ばれるエグリ・ビカヴェールが有名なエゲル、更にバラトン湖周辺、ショプロン・・・・・・、22の栽培地域があります。 ※ハンガリーでは1994年に施行されたワイン法によりぶどう産地は22地域が指定されています。 ※世界三大貴腐ワインとは、ハンガリーのトカイ・アッス、フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼです。 |
こうしてトカイワインの話を書き出している私ですが、実は、酒はたしなむ程度で、これっぽっちもワイン通ではありません。当然、トカイワインのことも知りませんでした。今でこそ、時々入手し、楽しんでいますが、トカイワインを知ったのは、1999年の夏に、皆既日食の観測のためにハンガリーを訪れた時が初めてでした。 えっ、これがワイン! ビックリです。この驚きが今に至っていて、一言紹介しないでおくわけには行かなくなったのです。 そのくらい感動したトカイワイン。ある時、オスマン・トルコとの戦いで、ぶどうの収穫が遅れました。ぶどうは干しぶどうのような状態になってしまいましたが、仕方なくこれを仕込んだところ、なんと、芳醇な甘いワインが出来たのです。これが世界で初めての貴腐ワインの誕生です。ぶどうにカビの一種の貴腐菌が付いて水分が無くなり、甘さが凝縮された結果です。しかし、これはどこででも出来るというものではなく、特殊な気候があって初めて出来るようです。この貴腐菌は特定の地区でしか発生しない上に、ぶどうに付く時期など、貴腐という現象は色々な条件が重なって初めて起きるのです。しかも、戦争で収穫が遅れたという偶然があって初めて、貴腐ワインが出来たのですから、奇跡の産物と言っても良いでしょう。 |
ハンガリーで買った 6プットニョシュ |
日本で買った 5プットニョシュ |
買ったその日に ホテルで空けてしまった 小瓶の3プットニョシュ |
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白ワインですが琥珀色をしています。 |
トカイの貴腐ワインは、トカイ・アッスと言います。トカイ・アッスはアルコール発酵を終えたワインや、アルコール発酵途中のワインジュース、葡萄をプレスしてえたぶどうジュースに貴腐ぶどうを漬け込んで作られます。この入れるぶどうの量で、3〜6プットニョシュとエッセンシアがあります。プットニョシュというのは、136リットルの樽の中に、プトンと呼ばれる背負いかごで貴腐ぶどうを何かご入れたかの数で、6かごより多いとアッス・エッセンシアとなります。当然、入れる貴腐ぶどうが多いほど甘くなります。また、貴腐ぶどうの成分だけ(桶に積み上げた時、自重でにじみ出てきたもの)で作られたものに、エッセンシアがあります。これは、シロップのようなあまさとか。ところで、この甘さを表すプットニョシュですが、今は、実際にはかごの数ではなく、残糖がどれだけあるかで決めているといことです。 貴腐ワインではありませんが、トカイ・ワインには、自然のままにと言う意味のソモロドニがあります。トカイ・ソモロドニは、貴腐菌が付いているブドウとそうでないものを選別しないで普通のワインと同じように造りますが、スウィートとドライがあります。スウィートはアッスほどではないが甘く、甘さの中にさわやかさがある感じです。ドライも決して辛口と言うことはなく、さわやかです。これらは値段も手頃です。 |
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トカイ・ソモロドニ・スウィート 3種 |
ウニクム |
ワインとは別ですが、ハンガリーには、ユニークなお酒があります。その名も『ウニクム』、マジャール語(ハンガリー語)でウニクムは、英語ではユニークです。名前の通り独特の味わいです。ブランデーと46種類のハーブから作られ、健康と滋養強壮に良いと言うことです。十字のマークがそれを象徴しているとか・・・・・・・ 胃の調子が悪い時など、特に効果的ということです。 効果のほどは別として(確かに効きそうです)、私の場合はこの独特の味わいがクセになり、結局、時々買い求めては、楽しんでいます。 |
トカイワインは日本のメーカが通販で扱っています。また、お酒の量販店で、ソモドロニ、エグリ・ビカヴェール、ウニクムが買えました。日本のワインメーカが輸入販売しているソモドロニは、近所のスーパーで買いました。その気になれば、割と簡単に手に入るようです。是非、試してみたら良いでしょう。 |
さて、前述の通りワイン通ではない私です。細かいことは、別の情報源に任せて(インターネットで『トカイワイン』で検索するとそれなりの情報が見つかります)、そろそろ次へ行くことにしましょう。次は、列車でウィーンへ向かいます。列車はバルトーク号。ハンガリーを代表する音楽家の名前が付いた列車です。 |
第5章 トカイワイン