室蘭要塞はこっちだぁ!

平成17年10月12日〜18日





室蘭要塞はこっちだぁ!



「水曜どうでしょう」という番組がある。
北海道のローカルテレビ局の深夜番組なのだが、偶然に偶然が重なりまくってローカル局の深夜番組としては破格に面白くなった。7年間で200回を越える番組を放送した後に一度は番組を終了したが、番組をまとめたDVDはそれぞれ5万枚以上の売上を記録し、放送終了後も断続的に新作を送り出している。そして遂には札幌の真駒内競技場を借り切って、3日間にわたるトークショーを開く事になった。
企画が発表された5月頃は、正直なところ迷っていた。すでに会社を辞めることは決めており、そうなると広島から北海道まで行かなければならない。しかも一人きりで三日間も持つかどうか心配でもあり、チケットの発売が始まっても購入できないでいた。
ところが、チケットは発売間もなく売り切れてしまう。「どういうこと?」かなりな数が用意されていた筈だが、それでも売り切れたのだ。すると、電話予約で引き換えの無かった分だけ、再度販売する事が判った。これは買うしかない。買って北海道まで行くしかない。そう思って再発売当日、ローソン須磨駅前店のロッピーに発売5分前から待機。あとはひたすらボタンを連打して、どうにか2枚程購入した。

後は同行者である。さすがに一人は寂しい。
どうでしょうが好きで、尚且つ北海道に有休を取って三日間来れる人は少ない。最近仕事が特に忙しくなってきている隊長に駄目元で聞いてみると、すんなりとOKしてくれた。もう、全てイケイケである。(辞職もイケイケでやっちまったが)



次に、どうやって北海道に行くかである。

一番安いのは、飛行機である。札幌で4泊しても、往復で6万円内で行ける。しかし、これだとあまりにも面白くない。
折角暇を持て余しているのである。寝台列車と長距離フェリーとを駆使して、北海道を往復してしまおうという事になった。

9月も末になって、やっとチケットを買いに行くと、トワイライトエクスプレス(大阪→札幌)は既に売り切れ。仕方が無いので日本海(大阪→函館)を押えておく。ただ、これだと札幌に午前中につけないので、前泊が必要となってくる。だったらと登別温泉で安宿を探して予約しておく。
復路は小樽からフェリー。3日目の企画が終わったと同時にダッシュして、どうにかその日のフェリーに間に合う寸法である。翌日の夜に舞鶴に入港するので、舞鶴から大阪まで連絡バスに乗り、大阪から広島まで夜行バスで帰る。本当なら梅田のMさんの所にでも一泊させてもらおうかとも考えたが、平日の夜なので止めておく。

ともかく切符の手配も終わったが、往きにトワイライトエクスプレスに乗れないのは悔しい。出発の前日に駄目元でミドリの窓口に行ってみると、運良くB寝台(コンパートメント)が空いていたので差し替える。
トワイライトは函館に昼過ぎに到着する日本海よりも、半日早く大阪を出る。それならば函館で途中下車して朝市でイクラ丼を食べて、函館要塞を見てから登別温泉泊だと浮かれていたのだが、家に帰って時刻表を調べてみると、トワイライトエクスプレスは洞爺駅まで停まらない事が判明する。
「イクラ丼がぁ、要塞がぁ」と落胆したが、どうしようもない。といって午前中から登別温泉に入ってしまうのも芸が無いし、といって前日から札幌に入ってしまうのも勿体無い。代わりの観光地を探していると、東室蘭にも停まる事が判ったので、室蘭で15cmカノン砲掩体を探す事にする。ネットで調べると、大体の位置(町名)までわかったので、後は現地を歩き回って調べるだけだ。

慌しく準備を終えたものの興奮で寝れず、3時間程寝ただけで出発ということになった。



○10月12日



EF81も専用色



左:最後尾はスイート、右:ロイヤルの室内


左:ラウンジ、右:貧乏人のB寝台もちょっとリッチ


0919広島発ののぞみで大阪へ。11時半にはホームに上がり、入線してきた列車を撮影。スイートの内部も撮りたかったが、さすがに止めておく。
食堂車の他にもラウンジカーが接続されており、ラウンジ横にはシャワー室もある。普通のブルートレインと同じ24系の車両だが、製造年が新しいので奇麗である。B寝台のコンパートメント(いわゆる普通のB寝台)も、扉がついているので静かである。

1200に大阪を出発。コンパートメント内は一人きり。といって途中から乗ってくるので好き勝手もできない。


食堂車、右はトンネル内で照明が点いた時の写真



左:オムライスセット、右:北近江の田園風景を眺めながらの昼食


1300過ぎに食堂車が開くので、速攻で行く。オムライスセット(1000円)とコーヒー。室内も良く、調度品も奇麗で、ボーイの対応も素晴らしい。つい勢いで翌日の1500円もする朝食も予約してしまう。日の出を眺めながらの優雅な朝食になるだろう。
ただ一つ気になるのは、揺れが酷い事。狭軌レールでこれだけカーブが多いとどうしようもないのだが、何とかならないものだろうか。

高岡でやっと2人目が乗ってくる。50くらいのおばさんだ。
話をしてみると、5年前に夫に先立たれたものの、一人息子も結婚してくれたので勤め先を辞めて、半年休暇をとることにしたそうである。トワイライトエクスプレスに乗っているのは、「ぶらり一人旅」という感じで、とあるTVに出てきた北海道の富良野にある喫茶店に行く途中だそうだ。うちの母親と境遇も歳もあまり違わない。違う所はというと、こちらは息子はプーでいまだ独身であるということだ。
夕食の弁当(食堂車で調理、1575円)を食べつつ午後11時まで話し、就寝。
寝る前に予約して置いたコインシャワーを試してみるが、案外と快適。ただ水が臭いのは、下水の再利用なのか大阪で給水したからなのか。
上段の為なのかほとんど寝付けなかった。


コインシャワー、プリペイドカードを挿入すると6分間使用可能



○10月13日



青函トンネルの説明会


0300、ラウンジカーにて青函トンネルの説明会が開かれる。時間にも関わらず、座りきれない程の客が集まっていた。
今回担当の車掌が話下手だったし、真夜中で真っ暗な為にトンネルのインパクトがあまりなかったが、それでもなかなかに感動ものである。30分程で終了し、もう一度寝床に戻る。



牧場の朝と朝食


0545に起床。「牧場の朝(by久米宏)」そのものの風景に感動する。
0600、食堂車で朝食(1575円)。洋食にしたのだが、卵は目玉焼きにして欲しいところだ。パンは焼き立てで美味しい。




DD51の重連、もちろん専用色


0717に東室蘭に到着。牽引車がDD51の重連に替わっている。どうりでディーゼルの排気ガス臭かった筈だ。
ここでトワイライトエクスプレスを下車。長かった豪華列車での旅もここで終わりだ。



支線に入って室蘭へ。駅のロッカーに荷物を入れて、情報収集の為に室蘭市の図書館を目指す。しかし開館時間が9時30分からなので諦め、とにかく測量山に突っ込む事にし、タクシーを拾う。



測量山(室蘭要塞、観測所跡)


コンクリートの帯が観測所の跡



左:だいたいこの辺りにしか残っていない、右:山頂からの景色(南東方向)




陸軍による測量を行う際に、その基点となった為に「測量山」と名づけられた。この、室蘭市街の西にある標高200mの山頂付近に、本土決戦用の砲台の観測所が設けられた。しかし戦後、山頂にテレビ塔を建設する時にほとんど破壊されてしまい、現在ではコンクリートの帯が山肌に数メートルほど残っているだけである。


測量山の中腹にある公園まで降りて、市史編纂所に電話をして砲台の大体の場所を聞くと、小橋内町でなくチャラツナイの方向を指示され(後で、別の高射砲陣地の場所を指示していただけだった事がわかる)、いぶかしみながらも海の方向へと向かう(しかも別の岬と間違って逆方向へ行っていた)。
岬らしき場所に出たものの砲台らしきものは見つからず、調べてきた通りに小橋内町を端から端まで探し回る事にする。



15cmカノン砲掩体部(室蘭要塞)


左:掩体を北西から、右:東側(後部)塞がれている


左:西側(正面)塞がれて、尚且つツタに覆われている、右:北側


左:東側から、右:北東から




傍から見たら団地内をうろつく不審者としか思えなかっただろうが、隅々まで歩き回ってやっと1ヶ所を見つける。全部で15cmカノン砲が2門、10cmカノン砲が2門の計4門が作られたらしいのだが、残り3門はどうしても見つからなかった。(1ヶ所しか残っていないらしい…詳細な聞き取り調査とかしたらもう少し判るのかもしれないが)
(もう一つ考えられるのは、大きな開口部に15cm、小さな開口部に10cmカノンがそれぞれ配置されていた可能性もある。つまりこの掩体が2つで計4門という事になっているのかもしれない。ともかく不明)

私有地となっており、掩体は倉庫として使われている。砲門側はツタで覆われて形状がはっきりとしないが、後ろは奇麗である。可能なら市ででも買い上げて保存してもらいたいが、さすがにここまで住宅地のど真ん中だと保存も難しいだろう。


他の3箇所が見つからなかったので、観光案内所に向かう。しかしここでも判らず、遂には市史編纂所の位置を案内してもらい、そこで聞くことに。
午前中に電話で対応していただいた方に伺うと、住宅地図での位置と、室蘭市の他の戦争遺跡の地図をいただく事ができた。砲台はあの1ヶ所しか残っていないようで、おかげでタクシーで戻る羽目にならずに済んだ。12時近かったので、慌てて御暇する。


一応完了、という事で昼飯。ところが、ろくな飯屋が見つからない。疲れてしまい、荷物に入れていたカロリーメイトでも食べようかと駅に戻っていたら、駅前に回転寿司を発見する。着いたときには砲台の事でいっぱいで、飯屋まで気が回らなかったにしても酷い。
この回転寿司で、いくら、いくら、筋子、海老、サーモンを食べる。筋子というのがあるのが北海道らしい。



「鹿部はこっちだ!」の鬼


1240発の電車で東室蘭、東室蘭からも鈍行で登別へ。登別からはバス。途中、カメラを構えていたにもかかわらず、名物の「鹿部はこっちだ!」の鬼を撮り損ねてしまう。(メインの写真は翌日に撮りなおし)




登別温泉の温泉街


登別温泉。案外と小さい。
早速にチェックインを済ませ、外湯に入りに行く。2000円もするが、温泉街で一番大きそうな第一滝本館へ行く。
大きい。泉質も3種類くらい出ており、あのツムラの「登別カルルス」の白濁温泉にも浸かれた(本当のカルルスは無色透明なのだが。記憶違いか?)。1時間ほどゆっくりと入るが、疲労も出てきて辛くなり、撤退。

ホテルの部屋で昼寝。3時間程寝ていた。

寝てばかりもいられないので、STVのどさん子ワイドをチェック。木村洋二アナの生を見ることができたが、1x8の時と違ってやたらと真面目で違和感を感じた。


ホテルの内風呂へ。あまり大きくない。泉質も1種類だけで、無理をしてでも外に出かけておいて正解であった。


夕飯が無いので外に食べに出る。ラーメンでも食べようと、滝本館に行った際に店のチェックはしておいたラーメン屋に行くのだが、午後8時を過ぎるのに開いていない。他にも開いていない飲食店が多く、仕方が無いので開いている店で良さそうな所に入る。入ったラーメン屋のおばちゃんに話を聞くと、この温泉地では午後9時を回らないと開けない店が多いらしい。その代わり終わりは遅く、大体の店が深夜までやっているそうだ。
蟹入りミソラーメンを注文。値段の割にインパクトが薄い。矢張り温泉街の限界か。
帰りにコンビニで地ビール(青鬼と赤鬼)を購入。部屋で飲む。小缶2本でも程よく酔っ払う。

折角なのでローカル番組もチェック。ハナタレックスを「生だよ、生」と感動しながら見る。サントリービールCMで大泉洋が出ているのをこれまた「生だよ、生」、10月19日からの水曜どうでしょうの番組CMも「生だよ、生」と。テレビ東京系も放送しているし、北海道のTV事情は羨ましい限りである。

疲労も出てきたのでとっとと寝る。



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