遥かなる富山 〜飛騨遠征〜

令和元年11月1日〜4日



高原諏訪城から見た江馬氏下館




 10月の12〜14日の三連休に飛騨を攻めることになった。

 参加者は東京組2名と広島在住の私の計3名。普通、飛騨高山に行くなら名古屋経由であったが、2015年3月14日に北陸新幹線の長野金沢間が開通した為、東京から富山まで2時間ちょっとで行けるようになり、距離も近く富山が田舎であることから渋滞の心配も無く、富山経由で行くのが断然に便利になった。しかし広島からだと富山まで5時間弱もかかり、始発で行っても富山駅での集合が11時となってしまう。3日しかない日程で半日も潰れてしまうのはもったいない。そこで、11日金曜日の晩に職場からそのまま出発し、富山で前泊することにしたのだが、富山でホテルが見つからなかった為、金沢で一泊し、翌朝北陸新幹線で富山まで向かうことにした。これなら30分だけではあるものの、これまで乗る機会に恵まれなかった北陸新幹線に乗ることもできる。早速金沢にホテルを取り、当時まだ東京へ長期出張中だったこともあり新宿駅まで行って切符を購入したのである。



 ところが、10月12日から13日にかけて大型の台風19号が東日本を襲った。当初は針路が関東方面になるし、新幹線さえ止まらなければ飛騨方面は大丈夫じゃない?くらいの雰囲気だったが、次第にその猛烈さが判明し、10月9日に11月2日〜4日の三連休への延期が決定された。そして台風19号は東日本に甚大な被害をもたらし、後に「令和元年東日本台風」と命名されることになった。

 遠征地である飛騨地方はそれ程大きな被害は無かったようだったが、千曲川の氾濫で北陸新幹線の車両基地が水没し、多くの車両が使用不能になってしまった。その為しばらくの間、北陸新幹線は大幅な間引き運転をすることになった。ただでさえ人の多い三連休に、この状態で富山まで行けるのかと心配したものの、11月になることにはダイヤはほぼ元通りに復旧していた。



〇11月1日

 18時の終業と共に広島駅へと移動。大急ぎで駅ビルのスーパーで夕食を買い、18時39分発ののぞみ56号で新大阪へ。20時12分発のサンダーバード47号に乗車し、金沢へと向かう…筈だったのだが、京都駅を出発した辺りで車内アナウンスが。なんでも、北陸本線で夕方に列車が大型の獣を衝突し、不通になっているそうだ。ただ10時頃には復旧するかもしれないとのことだったので、「予定でも金沢着が午後11時になっているのに、午前様は嫌だな…」とか思っていたのだけど、サンダーバードが大津京駅で停まったまま2時間近くが経過する。ホームにいた駅員に聞いても復旧の目途はわからない。このまま金沢へと突っ込んでもホテルで寝る時間なんて無くなるし、それに翌日からレンタカーの運転を控えていることもあり、湖西線の下りがある内に京都に戻り、そこで一泊することにした。

 早速パソコンからホテルの検索。オンライン予約では埋まっている。連休の京都でホテルなんて空いていないよね、と思ったものの、片っ端から電話をかけてみる。すると幸いなことに京都駅の近くに空いている所があった。割引も何もなく12000円もするのだが仕方ない。宿の手配がついたので、金沢のホテルに電話して予約をキャンセル。事故によるものなのでキャンセル料は取らないとのこと。助かる。東京にも電話。事情を話し、富山駅での集合が遅れることを伝える。
 京都駅に11時過ぎには戻ったのだが、ここで遅延処理をしないと特急券の払い戻しも何もできない。そこで改札に行くのだが、有人の改札がなかなか見つからない。それから、どうにか見つけたものの、今度は手書き処理の為に10人程の手続きで30分ちかく待たされることに。
 12時前になって、ようやくホテルにチェックインする。部屋のテレビのニュースで、今頃になってようやく全線復旧したと知る。4時間近く続いたゴタゴタで身も心もヘトヘトになっていたので、すぐに就寝。




〇11月2日

 始発列車であるサンダーバード1号に乗る為に、京都駅へ。自分と同じように昨日行く予定だった乗客で混み合うだろうと、1時間早い6時には駅へと向かったのだが、駅に着いてみると、今度は湖西線で小型の獣と衝突し、サンダーバード1号と5号が運休していたことを知り、慌てて3号の指定券を購入する。何事も余裕を持って行動するに限る。
 サンダーバード3号は果たして満杯で、指定席通路も人で溢れていた。そんな中、自分の席の横に老夫婦が立っていた。爺さんの方は大きいキャリーバックを椅子代わりにして座っていたが、少し若い奥さんの方は立っていた。席を譲ろうかとも考えたが、逆に失礼かとも思い、金沢に着くまで話をすることにした。
 その爺さんはボランティアで日本語を教えており、その教え子で富山の水力発電所で働くミャンマー人の招きで、夫婦そろって富山に行く途中とのこと。他に大阪で老舗の酒屋をやっていた話などもうかがう。従業員用の寮があり、知り合いの酒屋の息子などを預かって教育していたのだが、3年間の修業期間中は酒を飲んではならなかったそうだ。面白い話ばかりで、金沢まで3時間近く話していた。

 どうにか金沢駅に到着。そこから富山行きのつるぎに乗車。富山止まりの列車だったので、自由席ですらガラガラだった。ようやく念願の北陸新幹線に乗ることが出来た。10時過ぎに富山駅に到着する。やっとのことで富山駅に辿り着いたのだが、今回の遠征はこれから始まるのである。

 1時間以上待たせてしまった東京組のKさんYさんと合流し、レンタカーを借りて南下を始める。





江馬氏下館


左:北西の堀、右:南西正面の堀


左:南西へと落ちる堀?、右:復元建物


左:南西正面の堀、右:南東の堀



 公園として整備されている。駐車場があり、堀を掘り直してある他、塀や建物も復元されていた。堀の断面や周囲の山城の配置を示した立体ジオラマなど、面白い展示もある。





高原諏訪城


左:取りつき部にある二重堀切、右:堀切


左:主郭北下の縦堀、右:主郭北下


左:主郭、右:主郭南側


左:主郭の南にある堀切、右:左手前ピークが傘松城、右下に江馬館



 取りつきのコーナーから少し奥に車の停められそうなスペースがある。主郭までは比較的よく整備されているが、そこから先は藪に埋もれつつある。
 切り立った尾根上に堀切を配置して上手く防御している。





洞城


左:南西下の郭、右:同左東端の堀切


左:主郭から南西下の郭を、右:主郭東端の土塁


左:土塁に散乱する石、石垣跡?、右:北東下の堀切



 登り道が分かりにくい。一度城の北西下にある谷を進むダートの林道に入り、直ぐに沢を渡って尾根に取り付く。急な尾根の直登で足が痛くなる。
 小規模だがメリハリが効いている。北東下の堀切くらい降りて写真を撮れば良かったのだが、色々と余裕が無かった。





石神城


左:2回目のアタックに失敗し鉄塔道を敗走中、右:主郭


左:主郭から東下の堀切を、右:主郭から西下の堀切を



 神社の裏手から登るのだが、途中から道が良くわからなくなった。パンフレットには南西に伸びる尾根に取り付くコース(上地図の点線)が描かれているのだが、突き当たった林道の左手を探してみてもそれらしい道は見つからない。仕方ないので林道を北東上に登る。途中、道らしきものがあり、入ってみると鉄塔道で、城の南斜面を進むが、足場が悪い上に斜面がきつく滑り落ちそうになったので撤退。再び林道を進み、東の尾根筋から主郭へと無理やり登る。
 主郭ですら半ば藪だったので、それ以上奥には行かず。





傘松城



 比高300m以上もあるので麓から歩いて登る気が無く、8合目まで続いている林道に車で向かう。しかし林道入り口で「関係者以外立入禁止」の看板に行く手を阻まれたので諦める。




 次に寺林城に向かうのだが、登り道が良く分からず、日暮れも近づいてきたので今日はパスする。




政元城


左:主郭を北東から、右:北東下の郭と東屋


左:主郭を西から、右:主郭にある堀切



 大国寺の西上の小高い丘の上にある。登り口もわかりやすく、公園のように整備されていた。かなり小規模で城というよりも砦とか狼煙台といった感じである。小さな主郭を堀切で2つに割っているのだが、意味があるのだろうか。





増島城


左:北から、右:北東から


左:南面、右:神社から北下の水堀を




1948年の航空写真(国土地理院、R1216-103)

 JR飛騨古川駅のすぐ南東にある。城域には古川小学校と特別支援学校が建ち、本丸には御蔵稲荷神社がある。北東面に辛うじて水堀が、そして本丸の周囲に石垣が残っているものの、石垣の多くは後世に積み直されたようである。終戦直後の航空写真を見ると、水堀がもう少し残っているのが判る。




 以上にて本日の予定を終了。

 実家に泊まるYさんと別れ、Yさんの予約してくれたスキー場にあるプチホテルへ。道の駅の駐車場からホテルへの入り口が分からず、迷う。

 中年男2人が泊まるには不似合いなお洒落なリゾートホテルで、夕食もイタリア料理のコース。酒も、普段ならビールや日本酒、焼酎といったところだが、本日はワインをいただく。生ハムとサラダの前菜にスープ、飛騨牛ヒレステーキ、フランスパン、デザートという比較的シンプルなものだったが、飛騨牛のヒレステーキが150gもあったので5000円だった。料理は美味しかった。

 いびきのうるさいKさんと同部屋だったが、耳栓でしのぐ。いや、自分もいびきは酷いらしいのだが(自覚は無し)、Kさんは直ぐに寝入ってしまうので問題はないらしい。羨ましい。





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