ヨーロッパ 物欲の旅 〜準備篇〜

平成16年7月17日〜25日



ドレスデンのRX-8


準備まででダラダラと長いので、旅行本編へのリンクをこちらに用意しました。ご利用ください



「一度ヨーロッパに遊びに来いよ」
約2年前の事。アムステルダムへ海外赴任となったIが言った。
「おう。行く行く。」
その時は碌に考えもせずに答えた。

それから1年半が経った。その間にも1、2回誘われたが、結局行かず終いだった。
…そりゃそうだ。ヨーロッパなんてまともに行ったら30万円以上かかってしまうし、1週間以上は休暇も欲しい。必勝の信念だけではどうにもならない。

そうこうしている内に、今年の6月に入ってから、再びIから連絡があった。
「赴任は3年間の予定だったが、経費削減で営業所が廃止になり、8月一杯で日本に帰る事になった。7月の工場連休に夫婦で最後のヨーロッパ・ロングドライブするが、一緒に行くか?」

丁度、ボーナスが出た直後で、7月には長期連休がある。しかし、30万円は…。
躊躇していると、1週間もしないうちにMさんからもお誘いがあった。
「盆にイギリスに行かない?」。
こちらも、前回の旅行の際に「行きましょう行きましょう」と安請合いしていた。まさかこんなに早く勧誘があるとは思わない。完全な不意打ちで、軍は壊乱状態だ。

…どうするか。このまま30万円惜しさに逃げたら、ビッグマウスのチキン野郎と罵られる事は間違いない(ビッグマウスと言っても信州白馬のコンビニではない)。
「あー、もう、こうなったら、どちらか片方には参加しよう。それが男としての責任だ。逃げたら負けだ。」それだけはどうにか決意した。


次にどちらのツアーに参加するかを考えた。
(1)7月15日以降にアルカイダのテロ予告があった
(2)ロンドンとアムステルダム、明らかにロンドンの方がテロに遭う可能性が高い
(3)Iは316でATだがBMWを所有。本場アウトバーンを助手席でもいいから走ってみたい
(4)ロンドンとドイツ、僅差でロンドンの方が飯が不味そう
何とも後ろ向きな理由で、Iの方に決定する。



ともかく6月も中を過ぎて、漸くIのツアーに参加する事までは決定したのだが、今度はIの方のスケジュールが決まらない。まあ、Iとしては自動車での旅行、距離こそあるがEU内の移動は国内旅行並みの手軽さなので、最悪前日に宿だけでも決まっていれば良い。最低でも2週間前には飛行機を予約しておかなければならないこちらとは感覚も違う。しかも「おふくろが遊びに来るかもしれない」等と言い出す始末。
夫婦の旅行にお邪魔させてもらう以上(しかも国際免許は取らなかったので、車の運転交代すら出来ない)、スケジュール決定を強いる訳にも行かず、決め撃ちでアムステルダム発着の安売り券を予約しておく。一応Iの家がアムステルダムだから上手く行けば最初から拾ってもらえるかもしれないし、最終日に一泊させてもらえるかもしれない。そして最悪一人旅になったときにも、オランダ・ベルギー・北フランスなら、要塞や砲台も有名なものが多いので損害も少ない。

7月に入って、Iの方から旅行スケジュールが固まったと連絡が来る。…ベルリン・プラハって何よ(笑)?。切符の手配も済んでいるので、今更フランクフルト発着の便に変更する訳にも行かない。
ただ、さすがに向こうも多少気がひけたのか、「最終日、プラハから(気力が持てば)アムステルダムまで乗っけていく」という約束をしてくれる。「気力が持てば」という条件は不安だったが仕方ない。しかも往きはベルリンのホテルに集合。アムステルダムからどうやってベルリンまで移動するか頭が痛い。夜行バスとか(笑)。ともかく、KLMやDBのホームページ等を見ながら色々と思案する。


その結果、
7/17(土)夕方、関空発香港着
7/18(日)香港発アムステルダム着、ブリュッセルに移動、ブリュッセル観光後に、夜行列車でベルリンへ向け出発
7/19(月)ベルリン観光 夕方にI夫妻と合流
7/20(火)ベルリン観光 (主に博物館)
7/21(水)ベルリン発プラハへ
7/22(木)プラハ観光
7/23(金)プラハ発アムス帰宅(移動距離約1000km)、駄目ならフランクフルト辺りで放り出されるので自力でアムスへ移動
7/24(土)昼過ぎの便でアムステルダム発
7/25(日)香港経由、昼過ぎに関空着
という日程になる。
18日の大移動が不安。


ホテルは、Iと一緒に泊まる分に関しては、同じホテルを事前にWebで予約することになったのだが、他はこちらで決めなければならない。しかも時間と金が勿体無いからと、ブリュッセル→ベルリンを夜行寝台車にしてしまうという無謀ぶり。碌に英語も話せないのに切符が取れるのか?英語すら通じなかったらどうするのか?不安は増す一方。
少しでも当日の負担を減らそうと、列車の切符のWeb予約に挑戦してみるが、英文の説明を読んでいる内に締め切りを迎えてしまって購入できず。現地での一発勝負、寝台を取れなかったら、現地でホテルと翌早朝発の切符の手配もしなければならない。不安で押しつぶされそうだ。



こうして旅行の準備を進める中で、昨年のスウェーデン出張の痛い経験を思い出す。
とにかくTVや新聞・雑誌は最低でも英語、Iは結婚2年目の新婚なので、どうせ夜は早めに放り出されることは確実。そうなると、夜が暇になる。
スウェーデン出張の際には「坂の上の雲」を3冊持って行ったのだが、それでも1週間は長かった。しかもデジカメのメモリも足らなくなるから、別途予備を購入しなければならない。折角のヨーロッパ、メモリの関係で写真枚数を制限したくない。どうしたら良いのだろうと思案に暮れていた。

出発の4日前に、ソフマップでジャンクのサブノートパソコンを衝動買い。Cerelon600MHzでHDDは無いが、CDROM内臓で3万円。これで寂しい夜とデジカメのメモリ不足からはおさらばである。
もちろん、メモリは64MBのみで足らないし、HDDも買わなければならない。これらの物を別途買っていては足が出る。そしてこれには当てにするところがあった。

今から1年前まで、PanasonicのCF-51Sを使っていた。2kg弱の軽いサブノートで、Cerelon400MHzしかないが、無理をすれば実写動画の再生も可能だった。炬燵パソコン、更には旅行先での動画再生マシンとして活躍していた。
しかし、画像の加工の際に度々落ちていた事、OSにゴミが溜まって動画の再生が重くなった事から、IBMの重ノートパソコンを購入し、CF-51Sは少佐に売り払う事になった。
昨年9月の木崎湖ツアーの際に売却。しかし売却の1ヵ月後に液晶が破損して使用不能になった。勿体無いと、秋葉原の液晶屋を少佐に紹介するなどしたが、合う物が見つからなかった為にそのままになっていた。

運が良ければ捨てずに取ってあるだろう。その時には破損したノートパソコンに内臓している256MBのメモリと15GBのHDDとをボッタクリリーズナブルな値段で引き取る事にしようと、勝手に決定。買って帰ったジャンクノートの通電チェックをしてから、少佐に上記旨のメールを打つ。
しかし、その日の内には返事は返ってこなかった。毎日繋げる少佐ならメールもチェックしている筈。まさかこんな時に限って出張か?。
「後3日しか残っていないのに、こちらの計画が崩れたらどうするつもりだ、少佐」(かなり勝手)、と翌日の仕事も手がつかなかった。
そして翌日の夜、少佐からメールが返って来た。以下、多少修正して貼り付け。



少佐です。

売るなんてとんでもない、差し上げますよ。
てゆうかもう送りました。

クロネコヤマト oooo-xxxx-oooo

とりあえず全部入れたつもりなんですけど、
足りないものがあったら言ってください。
あと、モニターのふたはネジで固定されていませんので注意。


以上、よろしくおねがいします。


自分は、これ程感動したメールを読んだ例が無い。「感動の電子メール100選」なんていうものが出版されるとしたら、この選に入る事は間違い無いだろう。ありがとう少佐。今日からあなたは中佐に昇進だ。おめでとう中佐。


そしてメール発信の2日後には、本当にブツが到着。そのまま本体ごと送ってくれたので、メモリとHDDを抜いた本体&電源をヤフオクで売り払う事も可能だ。ああ、素晴らしい。スペイン仕様のGM30(ケース付き、旧型フィルター)を1万円未満で落札したとき以来の感動である。

しかし、時間が無いので感動に浸ってばかりも居られない。何しろノートパソコンもOSを入れなければただのボックス。CF-51Sの際には、FDD無し、CDROM無しで、インストールに1週間もかかった苦い記憶がある。
しかし内臓CDROMであっさりとブートに成功。インストールもすんなり終了。他人頼りのアクロバティックな作戦だったが、こうして見事に成功した。ありがとう中佐、ありがとうビル○イツ、ありがとうソ○マップ。

翌日には、再生ソフトの整備と、動画の移動。どうでしょうを20本くらい入れておく。



○7月17日

出発当日。
コーナンまで買い物に行って電動バリカンを購入、ベランダで頭を丸刈りに。外国に行くのだから多少のやんちゃは大丈夫だ。
ただ、余りに悠長に準備をしていたので、空港到着がギリギリになってしまう。おかげで現金を下ろす暇が無く、4万円分のユーロしか両替できなかった。何かもう、成す事全てが一杯一杯である。



それから、今回の旅の本当の目的。

Iとは多少の趣味の一致もあるが、どうせ夫婦の好みで移動する筈。そうなると、合流から離脱までの間は、好きな場所に行く事は不可能かと予想される。(好きな場所:軍事博物館、城砦、要塞、骨董屋、その他)
キーとなるは単独行をしている間だけ。つまり、初日のブリュッセルと2日目のベルリン、運が良ければ最終日のアムステルダムの最大三日間である。
そして、この三日間の為に、3冊のガイドブック購入し、またWebを駆使し、ブリュッセルでは蚤の市とフリーマーケット、ベルリンは高架下の骨董街、アムステルダムはフリーマーケットの、其々の開催時間と位置とを確認する事に成功する。もしかすると運命的な出会いが待っているかもしれない(鑑定団的ネタになってしまう可能性のが大だけど)。
…そう、今回の旅のテーマは「買出し」。リュック背負ってヨーロッパへ。一般的な観光地なんてアウトオブ眼中。興味有るのはオンリー「物」。
以下の「物」を探索予定のことである。

(1)ガスマスク
(2)ストーブ(携帯コンロ)
(3)アンティーク腕時計
(4)ナ○関連品(○チ関連はおおっぴらに出来ないので伏字)
(5)その他、骨董品、一般

…その筈なのに、日本を出ようとしている時点で現金が4万円しかない。これでは蚤の市はおろか、骨董屋ですら物が買えない。せめて買出し専用に5万円以上の現金は欲しかった。ああ、いきなり予定が狂ってしまう。この事実を米国大統領は知っているのか。大日本技術帝国崩壊の音が…


ともかく、出発。




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