小野不由美

<十二国記>

月の影 影の海[上] 1992 講談社 94. 7.30
 「あなたは私の主、お迎えにまいりました」
 学校に、ケイキと名乗る男が突然現われて、陽子を連れ去った。海に映る月の光をくぐりぬけ、辿りついたところは、地図にない国。そして、ここで陽子を待ち受けていたのは、のどかな風景とは裏腹に、闇から躍りでる異形の獣たちとの戦いだった。
 「なぜ、あたしをここへ連れてきたの?」
 陽子を異界に呼んだのは誰なのか?帰るあてもない陽子の孤独な旅が、いま始まる!

月の影 影の海[下] 1992 講談社 94. 9. 5
 「私を、異界へ呼んだのは、誰 !? 」
 海に映る美しい月影をぬけ、ここへ連れてこられた陽子に、妖魔は容赦なく襲いかかり、人もまた、陽子を裏切る。試練に身も心も傷つく陽子を救ったのは、信じることを教えてくれた「ただひとり」の友─楽俊。ひとりぼっちの旅は、ふたりになった。しかし、”なぜ、陽子が異界へ喚ばれたのか?なぜ、命を狙われるのか?”その真相が明かされたとき、陽子は、とてつもない決断を迫られる!

風の海 迷宮の岸[上] 1993 講談社 94. 8.21
 麒麟は王を選び、王にお仕えする神獣。金の果実として蓬山に実り、親はいない。かわりに、女怪はその実が孵る日までの十月を、かたときも離れず、守りつづけるはずだった。しかし、大地が鳴り、大気が歪む蝕が起きたとき、金の実は流されてしまった!それから十年。探しあてた実は、蓬莱で“人”として生まれ育っていた。戴国の王を選ぶため連れ戻されたが、麒麟に姿を変える術さえ持たぬ泰麒──幼い少年の葛藤が始まる!

風の海 迷宮の岸[下] 1993 講談社 94. 9. 5
 とてつもない妖と対峙した泰麒は、身動ぎもせず、その双眸を睨み続けた。長い時間が過ぎ、やがて発した言葉は、「使令に下れ」。
 異界へ連れてこられても、転変もできず、使令も持たなかった泰麒は、このとき、まさに己が「麒麟」であることを悟った!
 しかし、この方こそ私がお仕えする「ただひとり」の王と信じる驍宗を前に、泰麒には未だ、天啓はないまま。ついに、幼い神獣が王を選ぶ──故郷を動かす決断の瞬間が来た!

東の海神 西の滄海 1994 講談社 94.10. 8
 「国がほしいか?ならば、一国をお前にやる」
 これが、雁州国延王・尚隆と、延麒・六太とが交わした誓約だった。
 民らが、かつての暴君によって廃虚となった雁国の再興を願い続けるなか、漸く新王が玉座に就いたのだ。それから二十年をかけて、黒い土は緑の大地にと、生まれかわりつつある。
 しかし、ともに幸福を探し求めたふたりのこどもの邂逅が、やがて、この国と王と麒麟と民との運命を、怒濤の渦に巻き込んでいく!!

風の万里 黎明の空[上] 1994 講談社 94. 8. 2
 慶国に、玉座に就きながらも、王たる己に逡巡し、忸怩たる思いに苦悩する陽子がいた。
 芳国に、王と王后である父母を目の前で殺され、公主の位を剥奪されて哭く祥瓊がいた。
 そして、才国に、蓬莱で親に捨てられ、虚海に落ちたところを拾われて後、仙のもとで苦業を強いられ、蔑まれて涙する鈴がいた。
 負うにはあまりある苦難の末に、安らぎと幸せを求めて、それぞれに旅立つ少女たち。
 その果てしない人生の門が、いま開かれる!!

風の万里 黎明の空[下] 1994 講談社 94. 9. 6
 景王──陽子は、官吏の圧政で多くの民が重税や苦役に喘いでいることを漸く知り、己の腑甲斐なさに苦悶していた。
 祥瓊は、父峯王が、纂奪者に弑逆されなければならないほど、国が荒んでいることに気づかなかった自分を恥じていた。
 鈴は、華軒に轢き殺された友・清秀の命を守れなかった自分に憤り、仇討ちを誓った。
 ──それぞれの苦難を抱えた三人の少女たちの邂逅は、はたして希望の出発となるのか!?

図南の翼 1996 講談社 96. 2. 2
 恭国は、先王が斃れてから二十七年。王を失くした国の治安は乱れ、災厄は続き、妖魔までが徘徊するほどに荒んでいた。
 首都連檣に住む珠晶は、豪商の父をもち、不自由のない生活と十分な教育を受けて育った。しかし、その暮らしぶりとは裏腹に、日ごとに混迷の様相を呈していく国を憂う少女は、王を選ぶ麒麟に天意を諮るため、ついに蓬山をめざす!珠晶、十二歳の決断。
 「恭国を統べるのは、あたししかいない!!」

魔性の子 1991 新潮社 94.11.20
教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。彼をいじめた者は“報復”ともいえる不慮の事故に遭うので、“高里は祟る”と恐れられているのだ。広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。幼少の頃に高里が体験した“神隠し”が原因らしいのだが……。彼の周りに現われる白い手は?彼の本当の居場所は何処なのだろうか?

<その他>

過ぎる十七の春 1995 講談社 95. 4. 5
 三月。直樹と典子兄妹は、従兄の隆の家を訪れた。ここは、木蓮や馬酔木や海棠や空木などに埋もれた野草の里。まさに桃源郷だ。
 しかし久方ぶりに会う隆の目は昏かった。そして、心やさしい隆が母親に冷酷な態度をとるのは何故?母子に、いったい何が!?
 「あの女が迎えにくる……」
 隆は幼い日の冷たい雨の夜を思い出し、直樹には、あの記憶が甦る。
 十七歳──少年たちを繋ぐ運命の春が来た。

緑の我が家 Home, Green Home 1997 講談社 97. 6. 6
 浩志は、父親の再婚をきっかけに家を出た。
 壁に囲まれた路地を入り、「緑の扉」を開いた浩志を迎えたのは、高校生の一人暮らしには十分な広さの部屋と、不可解な出来事。無言電話、奇妙な落書き、謎の手紙etc.
 そして、「出ていったほうがいいよ」と呟く和泉少年の言葉が意味するものは……。
 嫌がらせ?それとも、死への誘い!?
 ――怖い――。しかし浩志の家は、もはやここしかない!息をもつかせぬ本格ホラー。


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