平成１１年１０月号(Vol.17)

　八月一一日のグランドクロスからこっち、トルコ、ギリシャ、台湾、メキシコと大きな地震が続き、日本でも原発施設における事故の発生となにかと騒がしい今日この頃ですが、皆様は平穏にお過ごしですか？
　私は、夏場崩した体調も回復し、生活を掻き乱していた仕事も終わり、家出娘のフクちゃんも２５日後に無事帰還し、今は束の間の安楽を貪っています。とはいえ、年末に向かって、何かと気忙しい時期ではありますが。
　さてさて、最近、癒し系ミュージックが巷では大流行で、心の病も蔓延しているそうですね。リラックスを合い言葉にアロマセラピーやメディテーションも一大市場になりました。ということで、今回はストレスの源について書いてみましょう。

　人の行動は次の三つのものに支配されていると私は思っています。それは脳（考え）と感情（心）と理性（神性・御霊）です。勿論、これらは独立に存在するのではなく、互いに関連し、影響を与えあっています。ですから脳（考え）も感情（心）も大切なのですが、一番重要なのは、みんなが通常お脳の働きと思っている理性（御霊）なのです。御霊という言葉、聞き慣れないものかもしれませんね。御霊とは、肉体をまとって存在している人間の本体です。それ故に人は霊止（ヒト）と言われるのです。そして、人がこの地上に人間として存在する最大の理由は御霊の成長、鍛錬、修行のためなのです。

　しかし、人間生活を長く続けていると、肉体的な制約から御霊の存在をついつい忘れがちになります。でも人間は人間になる前から御霊として存在し、肉体を脱ぎ捨てた後も御霊として存在します。本体は御霊の方なのです。御霊の修行の為に肉体を纏っているだけなのです。人間としてよりよく生きることは御霊の修行のためにこそ大切なことなのです。これで終わりだったら多少道義的に問題があってもリッチに暮らした方がましですし、楽して暮らした方が幸せです。しかし、残念ながら人間の本体は肉体ではありません。この世限りの人生ではないのです。

　さて、現代社会の生活はストレス過多といわれますが、では何故このような社会が成立したのでしょうかねえ？人は本来、成長・発達を欲しています。でも、その成長は御霊の成長・発達のはずなのです。本当なら「衣食足りて、礼節を知る」ための衣食を足らせるための経済の発達が、いつの間にか目的になってしまったのですね。人間の本性に反しているから、何か本性にしっくりこないのです。それがストレスのもとになっているのです。
　本来の目的ではないから、手に入れても手に入れても、いくら沢山持っていても、まだ不安で、まるで過食症のように不必要にさらに集めようとするのです。昨今、銀行が次々に合併しているのはその不安感の現れです。いくらお金を持っていても、いくら支配力を持っていても不安なのです。心を病んでいる人が多いのも、そのためです。本性に反したものを目的として邁進しているのですから、いくら手に入れても、いくら持っていても不安に決まっています。そして手に入れられないと、さらに不安感は増すでしょう。学歴も、地位も、お金も、持っていても持っていなくても不安なものです。

　人は本来、経済的成長・発展を希求していません。それはあくまでも手段・過程に過ぎないものです。人間として生まれた目的は御霊の成長・発展であり、そのための努力によって、初めて本来の安心感と充足感と満足感が味わえるのです。

　自己の能力の限りにおいて正直にそして真摯にひたすら義務（御霊の修行）を果たそうと努力する時、その当然の報いとしてストレスのない生活と生き甲斐と満足感とが得られるのです。この簡単な不変の真理を、人間はともすれば見失いがちです。

　人間の御霊は常に成長・発達を求めます。その意味で、成長を阻害しない柔軟な脳と感情を持つことが必要です。信念をもって行動することは必要なことですが、一方でいつでも変更可能な柔軟さを持つことです。何事にも捕らわれてはなりません。
　今の世の中、流れが速いですね。特に経済界の流れは速いものです。しかし何が本来のものかを見失いさえしなければ、十分についていける程のものであることも事実です。変化していくことを恐れないことです。価値観なんていっつも変わっていくのですから、捕らわれないことです。自分自身であることとは、御霊の修行を本来の目的とするということなのですから。自分の中の理性の声・御霊の声に素直に耳を傾け、一時の感情や、偏ったり不足している情報に基づいた考えに捕らわれないことです。そうすれば、どれほどの急流の中であっても、何の不安も恐れも躊躇もなく生きていけることでしょう。

　来年、さらなるうねりが来ようとも、皆様にとって本来の意味でよりよい成長・発展を遂げられる年でありますように、私は祈り続けて、年明けを迎えるつもりです。
　よいお年をお迎え下さい。

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