平成１１年４月号(Vol14)

　前回のコンポステラでお知らせ致しましたように、本日四月二三日、ラブ イン ザ ミストが出版されます。もう、注文はお済みでしょうか？？？？是非是非宜しく！！！
　さて、前回は何故本を出版するのかについて触れましたけれど、今回はこの本に詰まった私の思いについて述べてみましょう。

　ところで皆さん、ラブ イン ザ ミストって何だと思われました？
西洋黒タネ草の英語名です、尤も本当の名前はニゲラで、ラブ イン ザ ミストはニックネームのようなものですが。う〜ん、しっかし、和名はダサい。日本にも「都忘れ」とか「わすれな草」「紫式部」だとか素敵な名前の花は一杯あるのに、一体どうした！これはダサすぎる。とかなんとか、つまらないことを思ったりした私、和貴水でした（まだまだ慣れません）。
　でも、素敵な名前だと思いません？一部にはピンと来ないという声もありますが、本人は意外と気に入っています。まるで霧の中に煌めく道しるべのように、細かく分かれたガクの中に小さな青い花が咲きます。本の表紙もそれをイメージしたものです。

　そう、昔、私は、霧の中を歩いていました。先が見えないどころか、足下すら見えないという状況のなかで、手探りと勘で歩いていました。でも誰かがまるで手でも引いて呉れているかのように導かれ、その導きのままに歩んできたような気がします。世間体や親の嘆きや、友達の評価を気にする余裕もありませんでした。歩くことに一生懸命だったのです。
　そして忘れもしない、三〇歳の誕生日、ついに私は霧の中から抜け出したのです。それは突然でした。その日会社で書類を記載していた私は、日付を書くときにその日が誕生日であることに気づきました。その瞬間です。なんと表現したらよいのでしょう、突然自分の周りが急に明るくなったかのような感覚があり、自分がついに霧の中から脱出した、と実感し、踊り廻りたいような歓喜に捕らわれたのです。危うく周囲の人達をびっくりさせてしまうところでした。　
　高校２年生になる春休みに突然霧の中に迷い込んでから約１５年間たっていました。その間、ずっと何かを掴むために放浪をしていたような、あるいは地底を旅していたようなそんな気がします。本当に長かった、というのが抜け出したその時の実感です。

　一冊の本を書き上げて、ふっと思ったことは、この本が、今霧の中を彷徨っている人にとっての地図と方位磁石にはなれなくても、私を導いてくれた見えない手のようなものに気づくきっかけになってくれればいいな、ということでした。そしてこの本をラブ イン ザ ミスト〜霧の中の愛〜と名付けたのです。

ラブ イン ザ ミスト　　エピローグより
　「やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。（枕草子）」
　霧の中から抜け出ても、そこは険しい山道かもしれません。でもね、視界は利きます。ずっと歩きやすいものですよ。

　今、占いと教育を業としている私は、いつも失望と期待の交錯の中にいます。でも、これは研究だけをしている人には味わえない実践をする者だけの悲しみと喜びです。残念ながら、私には、この変貌する時代が取り残す人々を救う力はありません。しかし伴に時代の波を乗り越えて歩んで行くことはできます。ノアの箱船であっても。本人はそれくらいの覚悟で占いをやっているのです。ちょっとカッコつけて言えば、ね。

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