平成９年９月号（Vol6）

１、ダイアナの死

　ダイアナ元皇太子妃死亡のニュースが世界中を駆け回りました。マザー・テレサも亡くなりました。世界的関心を集める二人の女性が相次いでこの世を去ったのです。

　ダイアナの死は、女性に特に同世代の私達に哀しみを与えました。それは何故でしょう。彼女は切ないほどに愛を求めた女性でした。彼女の人生は、親からも夫からも得られなかった愛を求め続けた人生でした。社会的弱者に対する彼女の同情には、切ない同志愛が含まれていたことに私達は気付いていたのです。自分と同じに他人の愛と手を必要としている立場の人々に対する「それでもお互いに幸せになりたいね」という彼女の気持ちに。
　彼女は、彼女が愛して欲しいと願った人々に裏切られ続けました。両親は離婚し、夫には他に愛する人があり、信頼した恋人は彼女との恋愛をお金で売ってしまいました。

　できれば彼女には、愛を与えられるよりも、愛を与え続ける人生を送って欲しかった。得られぬ愛を人々に注いだ時に、彼女には親や夫から与えられるものよりも多くの愛を得たはずなのに。しかし、彼女にそこまで求めるのは酷でしょう。一度でも決して裏切られることなく誰かに愛された経験を彼女が持っていたならば、彼女は愛を与え続ける人生に幸せを感じることができたでしょうに。自分が全面的に受け入れられたという精神的安定感と満足感という経験なしに、他人を全面的に受け入れることができるか、私にも自信がありません。

２、マザー・テレサ

　マザーは「愛されるよりも愛しなさい。」と教え、実践した人です。まさしくマザーの名に相応しく、人を愛し続けた方です。「この世の最大の不幸は誰からも自分が必要とされていないと感じること。」と彼女は言ったそうですが、まさしく夫から疎まれたダイアナは、外見とは異なり自信のない「この世で最も不幸」な女性でした。それでも愚かなくらい率直に愛を求め続ける姿が切なかった。彼女は地位もお金も宝石も美しさも全て持っていました。ただ一番大切なものだけが欠けていたのです。

３、私達がこの地上に不自由な肉体というものを纏って生きる理由、それは愛を伝え、伝えられるためです。他者を心に掛け、手を貸すこと、すなわち愛なのです。

　霊層の高低は一体何で決まると思いますか。それは愛の多寡で決まるのです。この世の中の社会的地位の高低や、知的レベルの高低や、成功の度合いではありません。霊能力や思考力や、戦略能力や、事務処理能力でもありません。こんなものは何の関係もないのです。愛の多寡、これで霊層の高低は決まるのです。私達がこの地上においてどれほどの努力を積んでも、愛情を出し惜しみするならば、それは霊層の成長には何らの寄与もしません。霊層の高い御霊とこの世で出会うことによって、低い霊層の御霊も愛を伝えられ、霊層を向上させることができるのです。それが私達がこの地上に生まれてきた理由です。
　修行する、学ぶといっても愛し方を学ぶのです。ただそれだけのことがどれほど難しいことか、目覚めかけた人にはおわかりのはずです。

４、　私の考えによると、この世は夏期集中特別コースのような予備校です。みんな本来の学校、生活ベースがあり、一時的に特訓を受けにきているのです。様々な場所から、様々な人々が集まっているのがこの世というものなのです。よって、死ぬということは元の場所に帰ることなのですから、別にそれ自体嘆く必要はないのです。

　では、何故特訓を受けに来なければならないのでしょう。実は肉体という不自由なものを持ち、時間と距離に邪魔をされるこの世界は、この肉体という特殊性ゆえに、霊層の異なる御霊が同時に存在できる希有の場所なのです。基本的に肉体のない御霊の世界は意念の世界です。ですから、まるで電波の周波数が異なる場合に同時に同じ場所に存在しても互いの電波は影響しあわないように、次元の異なる御霊は極めて特殊な場合を除き、決して出会う事はないのです。霊層の高い御霊が低い霊層の世界へ行くことはなんとか可能なのですが、特に霊層の低い御霊が次元の高い世界へ行くことは不可能なのです。
　つまり、霊層の低い御霊にとって、この地球上の世界は、霊層の高い御霊と同時存在出来、教え導かれるほとんど唯一の希有なる場所なのです。イエス様やお釈迦様が肉体を纏ってこの地上に来て下さったからこそ、私達はこの地上でその教えに触れることができるのです。

　肉体を持つということは、それ自体ある次元の人々にとってはかなり苦痛であり、不自由を身に纏うことに等しいのです。しかしその一方、不自由の代償として、他の人々に手を貸してあげることができます。そして他人の成長に手を貸してあげるということは、同時に自分の成長にも大きく貢献するのです。その機会が霊界では与えられいません。ただ一人であっても、助けてあげたということは霊的に見れば大きな体験であり、成長です。だから、次元の高い霊界から来た者にとっては、この地上は不自由ではあっても、とても有意義な体験をすることのできる特別な場所なのです。
　また、手を貸してもらった方にしてみれば、霊界では同じ次元の霊魂が集まっているのですから、自分に手を貸せる御霊は身近にはいないのです。しかし、この地上には自分よりも次元の高い霊魂が存在しており、なにかと手を貸し、導いてくれます。そして、急速な成長を遂げることが可能となるのです。しかもこの地上の特殊性のおかげで、導きのためにこの地上に偉大な御霊が現れることもあるのです。

　神霊界は私達の想像をはるかに上回って存在します。私達はその中で芥子粒よりも小さい存在です。しかし、霊界に大きいも小さいもないように、芥子粒も全宇宙に匹敵するのです。私達の悦び、私達の涙はすべての霊界に繋がり、その霊界に影響を及ぼします。この地上での私達の体験や思いの全てが私達の霊界へのお土産になるのです。死ぬまでにどれほどの愛を他者に注ぎ、どれほどの愛を得て大きくなれるか。できれば両の手に抱えきれない程のお土産を持って、みんなの所に帰りたいものですね。

５、ダイアナはプリンセスというアイドルスターであり、そして世界的アイドルスター「ダイアナ」は逝ってしまいました。死自体は悲しむべき事ではないし、若くして死んだことも決して辛いことではありません。もう決して裏切られることは無いのですから。彼女の人生は華やかでしたが、その影の彼女の孤独が涙をさそうのです。愛して欲しい人に決して愛してもらえなかった彼女は、一人辛い人生を歩みました。まさしく「CANDLE IN THE WIND」でした。この世的成功は全てほとんど努力なしに手に入れました。そして彼女は教えてくれました。お金も宝石も花も世界中の賞賛も、ただ一人の愛情よりも軽いことを。全てを手に入れても何になるのでしょう、全てを受け入れてくれる人なくして。彼女は必死でそれを求めました。与えられなかったものを求め続けたのです。

　彼女に今少しの理性と知性が有ったならば、自分が求めても得られないものを、自分が人々に与え続ける人生を選んだのでしょう。でも誰が彼女に、それを求めることが出来るでしょうか。

６、マザーが近年訴えていた「心の飢餓」、みんなにそのことに気付いてもらうための、ダイアナは美しい生け贄だったのかもしれません。

　「自分が、自分の家庭が、愛に満たされていなければ、隣人を愛せません。」行動の人マザー・テレサが日本に来たときに述べた言葉です。そして自分が愛に満たされる為には「愛されるより愛しなさい。」と。

　もし、世界に終わりが来るのならば、それは神様の仕組みではなく、人間が行った行為、人間の欲望の究極の形です。神様のせいではありません。人々の欲望、憎しみやいらだちの雲が地球を覆っています。

地球のために「戦う」前に、今、側にいる人を愛してあげて下さい。