斉坂すみれ(田辺聖子著「愛してよろしいですか?」(集英社文庫))   



「そんなバカな遊びしてるひまなんか、ないわよ。あたし、忙しいんだもん。会社でも、朝から晩まで、ひとりで忙しい目をしてる のよ。あたし、一生けんめい、仕事してんのよ。誰も認めてくれないけど、キッチリ仕事してるつもりよ。誰にも意地わるしたことな いし、男の子の仕事の尻ぬぐいもしてやるし、課長なんかもかばってあげてるつもりよ。あたし、一生けんめい、生きてるわよ」



「愛してよろしいですか?」のあらすじ

「私」(斉坂すみれ)は三十四歳の独身OL。休暇でローマへ行った時、大学生の矢富渡と出会った。こまめでやさしい渡は、旅先 で一緒に過ごすには恰好の、気持ちのいい男の子だった。
大阪へ帰り、また仕事に打ち込む「私」に、渡から連絡が入る。一緒に食事に行ったり、ドライブに行ったりするうちに、「私」は、 誰にでもやさしく愛想のいい渡を見直し、その優しさを独占したくなる。しかし、渡はローマ旅行で会ったほかの女の子にもやはりこ まめに連絡を取っていたのだった。
夢を壊されたように思って面白くない「私」は、世代がちがうのだからと思い、渡のことを忘れようとするが忘れられない。渡に会う と、仕事のときのまじめで有能な面が消えて少女のようになってしまい、渡の調子のよさに腹を立てたり、もてるように見せようとし た作戦がばれて、泣き出してしまったりする。そんな「私」をみていると、渡はおかしくて可愛くなると言い、二人は恋人同士になる。
就職活動で苦労していた渡だったが、無事に大阪の会社に就職が決まり、東京の大学を卒業したら帰って来ることになる。渡が本当 に自分を愛しているのかわからず、さまざまに悩む「私」だったが、渡に、結婚したい気持ちを打ち明けられる。本当の気持ちだけを 言えばいいと言う渡は、もはや年下の男の子ではなくて、立派な大人の男のように「私」には見えた。



「私」はその名前から、親しい人には「スウちゃん」と呼ばれ、渡もそう呼ぶようになります。渡は人の心に敏感なので、ひとまわ りも年上で、優秀なOLであるスウちゃんの、女の子らしい可愛らしさを見抜くことができたのでしょう。スウちゃんも、若い男の子 には珍しい渡の(本当は)きっちりした面をちゃんと見ています。二人の付き合いはとても自然で、年齢の差を感じさせません。さわ やかなハッピーエンドで終わる結末には、幸せに・・・と祝福したくなります。
学生時代、スウちゃんは私の社会人としてのお手本でしたが、すでにスウちゃんの年齢を越えてしまいました。で、思うのですが、 スウちゃんにとって渡くんは、頼れる大人の男のように見えないとやっぱりだめなのかしら。しっかり者のスウちゃんに、気立ての いい渡くんが頼る、というのもいいような気がするんですが・・・。


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