夜の歌  

                                         (1988)
  夜更けの地下鉄  風に吹かれず電車を待てば
  どこか遠くで荒野を走る夜汽車の汽笛が聞こえる
  自分も他人も見たくないほど疲れきった帰り道は
  何度も何度もきりのないルフランをくちずさむ
  たとえばそんな夜の中に歌が生まれて
  ひと足早い明日を私に見せてくれる
  静かな夜にふと目覚めて闇を見つめる
  思い出せない夢をたどって時計の音に耳をすます
  氷のような言葉を投げて遠くなったはずの人が
  なぜかやさしくなつかしく不意によみがえる
  時折そんな夜がくると胸に積もった
  悲しい夢がガラスのような歌に変わる
  きれいな遠い星を見上げて今夜もひとり
  あれは金星  あれは流星・・・!  白い光がひとつ走った
  心の中の願い事など探す間もなく
  彼方に消えた  それでもなぜかしあわせな気持ち
  いつしかそんな夜を超えた少し向こうに
  切なく夢みて歌い続けた明日がくる


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