東京哀歌    

                                        (1992)
    線路沿いの長い道は  行き止まり横にそれ折れ曲がり
    何も思わず歩きたいけれど  なかなかまっすぐにたどれない
    バスに乗って七つめで降りて  高校の裏の道へ出た
    昔ここを友だちと歩いて  十年後のことを描いてみた
    ああ  どこへ行く白い街ふらふら  夢は今も夢のまま
    ああ  私だけ変わらずにそのまま  途方に暮れて立ちつくす
    三が日の東京は快晴で  息が詰まるほど星光る
    流れ星は見えそうもないけれど  もう少しこのままでと祈った
    長い間飼い慣らしたはずの孤独にしたたかに手を噛まれ
    そうかおまえは野生だったんだねって  新鮮な驚きを感じてる
    ああ  どこへ行く白い街ふらふら  この街にいたから会えたのに
    ああ  私だけ変わらずにそのまま  みんないつか消えて行く
    孤独で死んでてせわしなく冷たいと  よく考えもしないで口にする
    とても好きだった古本屋も銭湯も  いつの間にやら駐車場
    知らない街から来た人たちが  私の故郷を変えて行く
    背も届かない手も届かない  東京タワーも見えなくなった
    ああ  どこへ行く白い街ふらふら  心の底から愛してる
    ああ  私だけ変わらずにそのまま  いつもいつもここにいる


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