にがい雨    

                                       (1983)
    傘忘れぬれながら街を歩けば
    うつむいているくせに水たまりにはまる
    雨の日が好きなのは傘がある時
    ない時は心まで水びたし
    ため息ついて歩いてもやみそうもない
    したたり落ちるしずくが
    なんだかにがいこの雨
    落ちてくるひと粒が頭を叩く
    ばかだなというように  あのひととそっくり
    ひどい人  会えないと言ってたくせに
    ここへ来て頭だけ叩いたの
    腹を立てて歩いてもやみそうもない
    口にも目にも入った
    なんだかにがいこの雨
    雨よ降れ  雨よ降れ  身体をぬらし
    目ににじむひとしずく  目立たなくなるまで
    雨よ降れ  雨よ降れ  どうせ降るなら
    そのあとで何もかも変わるほど
    やけになって歩いてもやみそうもない
    あきらめて空を仰げば
    なんだかにがいこの雨


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