未来の翼 11話

 その日、大帝国劇場は休演となっていた。劇場の1階、2階には誰もおらず静まり返っていたが、一般市民は立ち入り禁止の地下に花組を
 始め、風組もそろっていた
 「この経路でいけば敵との接触は・・・」
 「それなら正面から近道で・・・」
 「これだがらガザツな人は・・・」
 となにやら作戦司令室でもめている、事の発端は3時間ほど前、かすみの放送からだった
 「帝国華撃団、花組、風組各員に連絡!全員出撃体制を整えて作戦司令室に集合してください!くりかえします・・・」
 何事かと思い戦闘服に着替えた花組、風組各隊員は米田の予想外の言葉に驚いた
 「敵の本拠地が分かった。場所は・・・ここだ!」
 米田が指した場所は帝都から少し離れた山のふもとだが、そこは一度入ったら二度と出れない森…いわゆる樹海である
 「司令・・・この場所は・・・」
 大神も困惑している、敵の本拠地が分かった以上先手を打つのはたやすいが場所が悪すぎる
 「ああ、この場所はどういうわけか異様なほどに妖力を発していてレーダーなんて機能しない、森林戦になれば同士討ちもありうる」
 今回の戦闘は今までとわけが違う、敵の戦力、場所を考えると花組は苦しい戦いになる、誰もがそう思っていた
 「幸いにも敵さんの本拠地の建物は森を抜けた先だ、翔鯨丸で飛んでいける」
 米田が司令室のテーブルに映し出された建物を指差した、前は樹海、後ろは山、翔鯨丸なら十分に飛んでいける
 「それでルートなんだがな・・・敵にもまだかなりの降魔や脇侍がいるはずだ、降魔に関しちゃ空中戦の可能性が高い・・・神武で飛べるのはせいぜい大神・・・」
 とそこまで米田がしゃべった時・・・
 「ふっふっふ・・・こんな事もあろうかと俺が作った新兵器を使えば空中戦なんて問題外ですよ」
 隆起が不敵な笑みを浮かべると司令室の大型モニターにいろいろやっている
 「これです!」
 映し出されたのは神武の背中に装備するような翼のようなもの
 「名づけて霊子翼展開装置(りょうしよくてんかいそうち)、搭乗者の霊力に応じてこの装置が霊力の翼を展開し、神武を浮かせるという
  ものです」
 ちゃくちゃくと説明する隆起に紅蘭が質問した
 「ウチみたいに霊力低かったらつかえんとちゃう?」
 皮肉だが紅蘭は花組の中でも霊力が低い、それが不安だった
 「心配後無用、紅蘭の霊力でもちゃーんと動けるように設定してあるよ、展開時間は・・・ぶっ通しで使えば2時間だけど小刻みに使えば
  5時間は固いです」
 耐久性も完璧といわんばかりである、それ以上花組から反論は出なかった
 「よし、それじゃあ今後の作戦だが・・・」

 というわけである、それで延々と話し合いが続いているのである
 「だからこのルートなら近いだろ!早いほうがいいだろ!!」
 「なにを言っておりますの!多少遠回りでも消耗は避けるべきですわ!」
 すみれとカンナが特に言い争っている
 「どうしましょうか・・・司令」
 大神が米田に助けを求める
 「そうだなぁ・・・由里、お前航法管制だろ、意見あるか?」
 これは忘れられがちだが由里はミカサなどでも航法管制という役割を持っている
 「そうですねぇ、私としては・・・山の方から回り込むなんてどうでしょうか?」
 その意見に反論の余地はない、山側は守りが手薄の可能性は高い、正面から行くよりいいだろう
 「んじゃあ決まりだな、出撃は1時間後だ、万が一と言う事もある、やりたいことはすべてしておけ!以上解散!」
 その言葉で花組隊員は各自それぞれ散る
 「隆起はん・・・」
 その中で紅蘭が隆起にかけよる
 「悪い・・・やりたいことあるんだ・・・」
 「うん・・・わかった」
 隆起の顔は決意に共になにか迷いの様なものも感じられた
 それから隆起は部屋に閉じこもった、紅蘭はおそらく精神統一でもしているのだろうと解釈しておいた
 その後紅蘭は地下の格納庫へと歩いた、そう、隆起の開発した霊子翼展開装置の事である
 「たいしたもんやね・・・全員分の神武にこれを装備するなんて・・・」
 とそこに風組の制服のかすみがきた
 「あ、紅蘭さん・・・隆起さんの事なんですけど・・・」
 「ほえ?」
 かすみはまるで話すを迷っているかのようだった
 「隆起さん・・・その装備を開発するのに陸軍の方に頭を下げに行ったり、すみれさんに頼んで神崎重工の方からの援助も頼んだんです」
 衝撃の事実が告げられた、隆起はこれのかけていたということ、絶対に勝つと言うことを心に決めていたのだろう」
 「隆起はん・・・」
 そんな隆起を知らなかった紅蘭は自分が何もしてあげれなかったことに罪悪感を感じている
 「でも・・・隆起さんは言ってくれました、これで成功すれば陸軍の連中に一泡吹かせられるって」
 「ウチらもがんばらんとな・・・」
 「そうですね」
 紅蘭は決意を新たに覚悟を決めた
 「行きましょう、そろそろ時間です」
 「了解や!」
 
 司令室・・・

 「よし、全員集合したな」
 その場にいる11人をを見渡した米田
 「いいか、敵はまだかなりの数がいると思われる、裏手から回るにしても戦闘はあるだろう」
 「多少の消耗は覚悟の上ですね・・・」
 「幸い空中戦はある程度できるからな、それに、翔鯨丸も武装強化してある」
 大型モニターに出された花やしきの地下に収用されてる翔鯨丸の映像、翔鯨丸の左右には各4門、計8門の砲門が装備されてる
 「よし!大神、出撃だ!!」
 一通り説明を終えた米田が大神に叫んだ
 「帝国華撃団!!出撃せよ!!」
 司令室に大神の号令が響き渡った

 翔鯨丸はゆったりと進んでいた、そう、艦内は音もほとんど聞こえずに静かだった、まるで嵐の前の静けさである
 そんな中隆起は艦橋から離れたところで空を見ていた
 「・・・はぁ・・・」
 おもわずため息が出る
 「なーんやそんな暗い顔してー」
 「紅蘭・・・」
 いつものテンションで出てきた紅蘭であるがそのテンションについていくことの出来ない隆起
 「そないな顔しとったら勝てる戦いも勝てへんで〜」
 「わかってっけど・・・」
 紅蘭は隆起の顔を見て直感的に1つ思いついた
 「迷ってるんか?ここまできて?」
 「・・・あいつとの勝負はさけられねぇ・・・わかってるはずなんだ・・・」
 あいつとはそう、新寺秋=夢魔、空蝉である、かつての恋人との戦い、隆起は覚悟はしていたが心が痛んだ
 「隆起はん・・・」
 「ん?・・・・な!」
 紅蘭が精一杯背伸びをして軽く口付けをした、そう触れるかその程度のものである
 「勝ったら、ちゃんとしたのしたる」
 顔を赤くしながら言う紅蘭
 「こりゃあ何が何でも勝たねぇとな」
 自然に隆起の顔にも笑顔が浮かぶ
 「いよっし、ほないこか、皆まっとるで」
 「おう!」

 艦橋
 「翔鯨丸、高度1000を維持、目的地まで距離1500M!」
 「霊子核機関正常に作動!出力120%を維持!」
 「各種砲塔異常なし!いつでも砲撃可能です!」
 艦橋では風組3人の報告が飛んでいた
 「よし、ここからが正念場だ!油断するな!」
 米田からも檄が飛ぶ
 「間もなく樹海上空入ります、翔鯨丸面舵一杯!!」
 ここらが作戦のルートである、大きく迂回して樹海を避けるようにして山の裏手から攻める作戦だ
 「敵さんの本拠地だ!いつ来るかわからねえぞ!」
 「了解!」
 ビーーービーーー!!
 翔鯨丸内に警報が響き渡った
 「降魔および大型魔躁機兵出現!!その数およそ200!!」
 「接触まで130秒あまり!迂回コースでは正面衝突です!!」
 まるで読んでたかのように翔鯨丸の正面にきた敵
 「よし!全砲門開け!花組の神武・改は隆起、マリア、紅蘭機のみ出撃しろ!!」
 「了解!!」
 3人が慌しく艦橋から出て行く
 「なんで私が出撃しないのですの!?」
 真っ先にキレたのはすみれだった
 「白兵戦しかできねえあたいらがでても意味ねえだろ」
 間髪いれずカンナが突っ込んだ

 翔鯨丸の併走するかのように3機の神武が飛ぶ
 「じゃあマリアさんは翔鯨丸の上に乗ってください、精密な射撃するには安定した足場のほうがいいです」
 「ええ、了解」
 「俺と紅蘭は翔鯨丸の左右にわかれて砲撃だ、1匹たりともぬかすんじゃねえぞ」
 「そっちこそ、ヘマるんやないで」
 今回の指揮は隆起がやっている、戦場にいる人間のほうが的確な指示がだせるという大神の見解である
 「敵、射程までのこり10秒です!」
 椿からの通信が入る
 「了解!!」
 「9・・・8・・・7・・・」
 刻々と進んでいく時間・・・そして・・・
 「0!!全機砲撃開始!!」
 その言葉と同時で翔鯨丸の14・7サンチ単装砲を初め、装備された8門の砲門が一斉に火を噴く
 「でえぇぇい!!」
 それをきっかけに隆起、マリア、紅蘭の神武も一斉に攻撃を開始する
 「何体か抜けました!翔鯨丸に向かって一直線です!!」
 由里の的確なサポートもあって次々と降魔を打ち落としていく3体の神武
 「大型魔躁機兵です!こっちに向かってきます!!」
 戦況が花組に傾いてきたところにかすみが声をあげた
 「よし!のこりの花組隊員も全員出撃だ!消耗は出来るだけ避けるんだぞ!!」
 「了解!!」

 花組は翔鯨丸を囲むように陣形を展開、敵にそなえた
 「ほえ〜、ほんとに飛ぶんだなぁ」
 カンナが空中に浮かんでる神武を見て声を上げる
 「カンナさん・・・紅蘭じゃないんですから俺・・・」
 「それどない意味や?隆起はん」
 (なんとなくわかるぞ隆起くん・・・)
 と内心で思う大神だった・・・
 「敵接近!!大型魔躁機兵1、降魔、液射3です!」
 「了解!!」

 とその時
 ごお!!
 太いレーザーのようなものが翔鯨丸をかすめた
 「な・・・」
 「なんつーもんぶっぱなしてくんだ・・・」
 その1撃に思わず絶句する大神と隆起
 「・・・・・」
 ふと前を見ると肩に砲塔を装備した魔躁機兵があらわれた
 「あんたが親玉かい」
 隆起が魔躁機兵によびかけるが返答がない
 「少尉、いきましょうか?」
 すみれが大神に攻撃するか否か聞いた
 「じゃあ紅蘭とマリアでとりあえず攻撃だ!敵の行動パターンも知りたいし」
 「「了解!!」」
 紅蘭とマリアがその魔躁機兵に照準をあわせるやいなや・・・
 ガン!!
 「うわぁ!!」
 紅蘭の機体にその魔躁機兵が体当たりをしてきた
 「やろぉ・・・」
 さかさず隆起が切りかかるがさらりとかわされてしまう
 「やれやれ・・・帝国華撃団といえどこの程度か」
 はじめて魔躁機兵の操縦者が口を開いた
 「僕の名は紫苑、そう呼んでもらおうか」
 「その名を呼ぶまでありませんわ!!」
 さかさずすみれが長刀を振るうがみごとに空振り
 「せっかちだなぁ、こんどはこっちからいくよ!」
 神武のスピードの2倍近い速さで向かってくる紫苑、その狙いは・・・さくらだった
 「でやああぁぁ!!」
 さくらも剣を振るい迎撃試みるが相手のスピードに完全にやられている
 「おそいおそい!せい!!」
 紫苑の機体の右拳がさくらの神武をとらえた
 ガン!!!
 「ああ!!」
 すこし後方に後退するさくら
 「さくらくん!!」
 「大丈夫です!!」
 すぐに体制をたて直し剣をかまえるさくら
 「相手の攻撃は早いですけどそこまで重くはありません、おそらく勢いをとめれば・・・」
 「それならここは俺が!!」
 さかさず隆起が紫苑につっこんでいく
 「だぁあ!!」
 隆起のスピードもたいしたものだが紫苑はその上をいく
 「おそいってば」
 紫苑が隆起の後ろを取った瞬間
 「ほい!」
 「そこ!!」
 どどぉお!!
 「ぐぉあ」
 紅蘭とマリアの砲撃が見事に紫苑をとらえた
 「でえぇぇい!!」
 「チェストォ!!」
 一瞬紫苑がひるんだ隙にすみれとカンナが一気に間合いをつめる
 「なんの!!」
 紫苑がカンナの拳をかわすが
 「せい!!」
 スガ!!
 「く・・・」
 すみれの長刀が直撃する
 「まだまだぁ!!」
 「はああぁぁぁ!!!」
 今度は大神と隆起が切りかかる
 ズガガガガァ!!
 「ぐああぁぁ!!」
 紫苑の機体はすでに機能停止寸前である
 「さあ!観念したらどうだ!!」
 大神が紫苑に叫ぶ
 「この程度で降参するもんか・・・最後に特大のくらわせてやる!!」
 紫苑が肩の砲塔にエネルギーをためはじめた
 「まずい!!総員退避・・・」
 ドオォォォォン!!!
 「ぇ・・・?」
 隆起がすっとんきょうな声をあげた
 ふっとんだのは紫苑の機体であった・・・後ろをふりかえると・・・
 「やったぁ!命中!!」
 「椿やるわねぇ」
 「・・・・(これでいいのかしら・・・)」
 翔鯨丸の艦橋でハイタッチしてる由里と椿がみえた
 「あー・・・翔鯨丸の砲撃ですねぇ」
 隆起があきれたように言う
 「らしいね・・・」
 大神も空いた口がふさがらない状態である・・・
 「ここが私の見せ場だというのに・・・」
 文句をいってるのはすみれである
 「ま、なにはともあれ、敵は倒したしいいだろう」
 大神はそういう結論にした、いや、しといた
 「じゃあ翔鯨丸にもどりますか・・・」

 艦橋
 「おつかれさまでーす」
 椿がこ機嫌で花組を迎えた
 「椿さんもたいした腕ですねぇ」
 隆起がおもわず褒める
 「偶然ですよ偶然」
 すこし照れたかんじの椿
 「よし、これより翔鯨丸は目的地に進行!全速前進!!」
 米田の号令が翔鯨丸にひびいた
次回予告!
 どうも、大神です
 ついに最終決戦、帝都の命運がついに決まります

 次回!乙女の恋は花と散る!?

  太正櫻に浪漫の嵐!!

 いくぞ!!帝国華撃団出撃!!