未来の翼 8話

 築地での戦いから数日・・・
 「う〜ん・・・」
 サロンで一人ノートを目の前にうなってる隆起
 「あら?中尉、どうされました?」
 そこに来たのはティーカップとポットを持って来たすみれだった
 「あ・・・すみれさんちょっと考え事を・・・」
 そう言ってノートを閉じる隆起
 「なにを考えていらしたの?」
 「それは・・・個人的にちょっと・・・」
 ここだけの話、隆起はこの状況に陥ると打開するのが難しくなる
 「おおかた、花組の情報でしょう?」
 すみれがズバリと言った
 「おしいですね、正確には花組の戦闘時の陣形を考えてたんですよ・・・って・・・」
 うっかり喋ってしまった隆起
 「中尉・・・そのような事は少尉に任せればよろしいのでわ?」
 すみれが言ってることももっともである、本来は隊長である大神がこういうのを考えるはずである
 「いえいえ、大神さんはモギリとか事務局の手伝いとかあるので大変でしょうから」
 「全く・・・そこまでする必要があるんですの?」
 「あ〜〜・・・特にないですね〜」
 結論をキッパリ言った隆起だった
 「それより中尉、ティータイムにしませんこと?あまり詰め込んでもよくありませんわ」
 「じゃあいただきますね」
 とそこに・・・
 「あ!隆起はん見つけたで、米田支配人が探してたで」
 小走りで紅蘭が来た
 「りょーかい、それじゃあすみれさん」
 「まあ支配人の呼び出しじゃあしかたありませんわね」
 
 支配人室
 「木立隆起入ります」
 支配人室の中には米田、さらには大神がいた
 「どうしました?」
 帝撃花組隊長、更に総司令がいるという時点でなにかあると思った隆起
 「ああ、最近の敵との戦闘地域を確認したらよぉ・・・」
 「戦闘地域?・・・芝公園・・・深川・・・築地・・・この3ヶ所が何か?」
 共通点がなさそうに思えた隆起だが・・・
 「その3ヶ所は帝都の地脈ポイントだ、去年の戦いでそこを制圧されて六破星降魔陣という魔術をかけられた・・・」
 大神が淡々と話す
 「じゃあまたその六破なんとかが発動されるんて事じゃないんですか?」
 隆起が聞く、去年帝都に住んでいた隆起は六破星降魔陣の恐ろしさを身をもって体験している
 「可能性は低いな・・・」
 米田が隆起の意見を取り下げた
 「では?なぜ?」
 「お前らの報告だと敵の幹部勢は合計5人、前回一人は倒したが前回の戦闘でこっちの手の内がバレてる可能性がある」
 米田が淡々と喋る、その表情は酔っ払いの支配人ではなく帝国陸軍中将の米田一基だった
 「それと・・・だな」
 米田が更に口を開いた
 「お前の素性を少し調べさせてもらった」
 「俺の!?」
 隆起が驚きの声を上げる
 「帝国陸軍中尉、木立隆起、剣術に関しては軍でもトップクラス・・・生年月日・・・それ以外が出ない」
 それ以外の隆起の情報が出ない、それは隆起にとっても違和感があった
 「おまえ・・・恋人亡くしたとか言ったよな」
 米田の一言に隆起が一瞬動く
 「お前のお袋さんに話聞いたんだ、いや正確にはな、お前が2日前陸軍省に言ってた時におまえのお袋さんが来たんだ」
 「(あのクソババァ・・・)」
 隆起は内心で毒づく
 「お前の過去も全て聞いた、ほとんど一人で生きてたようなもんだってな、その恋人とやらはお前のいい剣術の相手っつーこもとな」
 「(どこまで喋ったんだアイツ!!)」
 「それで・・・その恋人とやらの写真を見せてもらった」
 「えええ!!!」
 思わず大声を上げる隆起
 「どうりでお前が紅蘭に惚れるわけだな」
 その写真を眼前に突きつけられた隆起
 「おわ!紅蘭そっくり」
 隣にいた大神が声を上げる、その写真の少女は髪こそ短いが顔の輪郭、目つき、紅蘭とそっくりだった、
  しいて言えばメガネとそばかすがないくらいである」  「最近紅蘭と仲いいらしな、そういうのは戦闘でもいいほうにいくこともあるからな」  「なにが言いたいんですか・・・」  今までに聞いたことのない隆起の声・・・その声に2人は驚いた  「俺の過去探ってどうしようていうですか・・・中将・・・」  「いや・・俺ぁお前が今までどうだったのかってのを知りたかっただけで・・・」  いままでにない隆起の気配にに慌てる米田  「用がないのなら・・・これで失礼します」  と隆起が部屋を出ようとしたとき・・・  ヴィーーー!!ヴィーー!!  鳴ってほしくない警報がなってしまった・・・それが隆起の運命を左右する出撃だった・・・  「銀座に魔躁機兵出現!!帝国華撃団花組は至急出撃してください!!繰り返します・・・」  地下司令室・・・  「状況は説明したとうりだ、敵も本腰を入れてきたと思われる、十分に注意するんだ」  軍服姿の米田が言った、敵は日比谷公園を占拠、付近の住民にも被害が出ている  「・・・・」  「隆起はん?どっか具合でもわるいんでっか?  さっきの一件いらいうつむいたままの隆起に紅蘭が声をかけた  「ああ・・・大丈夫・・・」  その様子を見た米田は・・・  「(やりすぎたな・・・)」  内心では反省していた  「よし、帝国華撃団、花組出撃!!」  大神の号令が司令室に響いた  銀座、某所  「ゆけい!降魔に脇侍ども!この帝都を破壊しつくせぇい!!」  リーダー格と思われる男が降魔と脇侍を指揮している、それに続いて破壊活動を行う降魔と脇侍  「そこまでや!!」  「帝国華撃団!参上!!」  どこからともなく現れ、ポーズを取る花組  「待っておったぞ華撃団・・・ゆけい!降魔ども!」  男の命令と共に花組へと突撃していく降魔と脇侍  「せい!!」  「はあ!!」  それも改良された神武の敵などではなくさくらと大神の2人だけで一掃した  「この程度じゃ私たちは倒せないわよ」  さくらが挑発的な態度で言った  「そろそろ動いてはどうですの?三下?」  後ろからすみれが続く、ある意味驚異的な連携である  「まあよかろう・・・我の名は水稀(すいき)、いでよ!水珀箋撫(すいはくせんぶ)」  地面に怪しげな魔方陣が現れそこから魔躁機兵が現れた  「はあぁぁぁ!!!」  水稀が魔躁機兵乗るやいやな、隆起がいきなり切りかかった、その行動に花組はおろか、翔鯨丸の風組も驚かせられた  普段冷静に戦術を分析する隆起が熱くなっていた、誰もがそれを確信した  「おそい!!」  だがその攻撃をたやすくかわす水稀  「スキあり!!」  「覚悟せえ!!」  後ろに下がったスキをつきマリアと紅蘭が集中砲火を浴びせる  ドオォォォォ・・・・  辺りに砂煙が立ちこめた・・・が次の瞬間!  「はっ!」  水稀の魔躁機兵の砲弾のような攻撃が砂煙の中から雨のようなにをがとんできた  「くっ・・・」  「あぁ!!」  攻撃体制からのカウンターアタックに防御も回避も出来なかったマリアと紅蘭は直撃を受けてしまった  「マリアさん!!紅蘭!!」  「おちつけ!陣を組んで体制を立て直すんだ!!」  大神と隆起の声がほぼ同時に出た  「アイリス、マリアと紅蘭を頼む!」  「アイリスにおまかせー、イリス・ジャルダ・・・」  アイリスあ必殺技で回復させようとした時・・・  「させぬ!!食らえ!!水聯鵬發(すいれんほうはつ!!)」  まさに一瞬の隙だった、必殺技を発動する瞬間を狙った1撃がアイリス機に向かっていく  「まずい!!アイリス避けろおぉぉぉ!!」  一瞬遅い判断だった、その1撃まさに今アイリス機に直撃した時だった  「アイリス!!」  「大丈夫か!!」  一瞬花組全員が絶望したがさかさず通信が入った  「アイリスはテレポートで離脱しました!急な移動だったため意識を失っています、これより翔鯨丸はアイリス機、   並びに損傷の大きいマリア、紅蘭機も回収します」  由里が現状を報告し、3体の神武・改を回収した  「くっ・・・すでに3機・・・」  遠距離攻撃の2人と回復の要を失った花組は窮地に立たされた  「大神隊長・・・」  ふと隆起から通信が入った  「隆起君、なんだい?」  「俺が考えた陣形なんですが・・・こんな感じです」  その陣形は接近戦使用に考案されたものでこういう図である   大 さ 隆  (隆、隆起)(大、大神)、(さ、さくら)、(ア、アイリス)    ア カ    (カ、カンナ) (す、すみれ) (紅、紅蘭) (マ、マリア)     す   紅   マ  「現在、マリアさん、紅蘭、アイリスが離脱で普段の戦闘はできません、この場は接近戦を仕掛けるしかありません」  大神は一瞬悩んだが決断した  「よし、じゃあ各隊員、モニター出ている陣形を編成!」  「了解!」  大神の号令が響き陣形を展開する花組、アイリス離脱のため、アイリスの位置にはすみれがついた  ジリジリと敵との間合いをつけていく花組、アイリスの離脱で回復はできない、捨て身の作戦だ  「いくぞ!!」  大神の2回目の号令と共に先陣を切ったのはさくらだった、それに続き隆起が砲撃を水稀に浴びせる  「うおぉぉ!!」  「えぇぇい!!」  「チェストォ!」  そこからすみれ、カンナ、大神の三人が一気に突っ込んだ  現状の花組配置は・・・      敵  大 す カ       隆   さ    という状況である  「神崎風塵流・・・鳳凰の舞!!」  「四方攻相君!!」  「狼虎滅却・・・怒号烈震 !!」  ドゴオォォォォン・・・・  辺りに轟音と共に視界を覆い隠すほどの砂煙が上がった  そして、砂煙が晴れるとそこにはボロボロとなった水稀の機体があった  「これでおわり!!木立風師流・・・惷瞬碌花(しゅんしゅんりっか)!!」  花のような華麗な動きで一刀両断!水稀の機体は大きな爆発と共に跡形もなく消え去った  「やれやれ・・・予想以上に苦戦しましたわね」  すみれが言った  「すいません・・・俺が勝手な行動をしたから」  隆起が突然口を挟んできた  「俺が最初に何も聞かずに突っ込んだりしたから・・・」  すこし自暴自棄気味の隆起に大神とすみれが声をかけた  「まあ命令無視はいけないけどさ、今度から気をつければいいことだよ」  「そうですわ、次はしっかりやってくださいな」  その言葉に少し落ち着きを取り戻した隆起  「はい・・・マリアさんたち・・・大丈夫でしょうか?」  自分のせいで離脱した3人の事を気遣う隆起  「解りませんけど・・・とりあえず戻りましょう」  さくら機から順に翔鯨丸に収用されていく  翔鯨丸内・・・  「司令!!」  まっさきに駆け込んだのは紛れもなく隆起だった  「おぉ・・・どうした?」  あまりの勢いに呆気にとられる米田・・・と後ろで翔鯨丸の操縦をしている風組  「マリアさんや紅蘭、アイリスは??」  真っ先に出た言葉がそれだった  「なーに、ちーっとばかし気を失っただけだ、すぐ目を覚ます」  いつもの口調に安心する隆起  「おめえの単独行動が今回の事態を招いたことはわかってるな?」  と急に切り替わって隆起へ問う米田  「はい、今後はこのような事がないようにいたします、本当に申訳ありませんでした!」  深深と頭を下げる隆起  「わかればいい、それじゃあ帝劇にもどるか、おーい出て来い」  と、扉から続々と花組の面々が出てくる   帝劇・・・  部屋で横になっていた隆起、過去の事を思い出していた。  あの恋人の事、今回の戦闘での失敗は米田の言動で頭に血が上っていたせいでもある  でもそれを言い訳にはできない、そういうことをずっと夕食後から考えていた  コンコン・・・  不意に部屋のドアがノックされた  「あいてまーす」  入ってきたのは紅蘭・・・ではなくマリアだった  「マリアさん・・・あの・・・」  今回の戦闘の事を謝ろうとした隆起だがさきにマリアが喋り始めた  「私もね、前、隊長が来てすぐのころに過去の事を敵に知られてね、単独行動に出てそれで隊長とか皆に迷惑をかけたことがあるの」  (サクラ1第3話、俺は隊長失格参照)  「マリアさんでも・・・そういうことあるんですか」  マリアといえば固いイメージがあり、単独行動に出たなど思いもしなかった隆起が思わず口に出てしまった言葉だった  「ふふ、まあそういうことよ、単独行動は隊員に迷惑をかけるから気をつけなさい」  「はい、申訳ありませんでした」  「それじゃあ、おやすみなさい」  そういい残し部屋を出て行くマリア    1時間ほどして・・・  バン!!  「!!!!???」  突然窓が大きな音を立てた、思わず剣をとる隆起  「風か?」  窓を開けてみるが誰もいない  「風・・・!?」  一瞬隆起の横を黒い影のようなものが走った  「風じゃない!」  部屋中に立ち込める夥しい妖気、隆起は集中し、敵の場所を探る  「そこだ!!くらえ!!惷瞬碌花!!」  思いっきり切ったつもりだが手ごたえがまるでない  「ふふふ・・・」  ふと奇妙な笑い声が聞こえた  「どこだ!出て来い!!」  月明かりに照らされて部屋のイスのに人影が見えた  「誰だ!」  構えを解かずイスの人影を睨みつけたまま間合いを詰める隆起  「かつての恋人に誰だって・・・あんたそりゃないでしょ」  「え・・・」  聞きなれた声、トゲのある口調、隆起には耳覚えがあった、いや、ありすぎた  「おまえ・・・なのか?秋・・・」  思わずその名前が出てしまう隆起  「そう・・・君が好きだった新寺秋・・・それも過去の名前だけどね」  新寺秋、隆起のかつての恋人であり、よき剣仲間であった  「どうして・・・お前が」  「私はね・・・反魂の術で生き返らされたの・・・神王様によってね」  その言葉に隆起は思わず刀を落としてしまう  「つまり・・・敵同士・・・か」  平静と保とうとするが内心ではかなり同様している隆起  「今日は挨拶代わり、次逢う時は・・・殺すよ」  そう言い残し消える秋  「マジかよ・・・」
次回予告
 こんにちわ、真宮寺さくらです
 隆起さん、あの戦闘から元気がないんです、大丈夫ですかね?
 と思っていたら部屋に閉じこもってでてきてくれないんですよ
 <次回、心を閉ざす理由(わけ)>
 太正桜に浪漫の嵐!
 
 隆起さん、訳を話してくださいよ!!