著・白雪☆
「なんや、和彦君、こんなとこにおったんか」
彼女−−保科智子−−は屋上の扉を開けるなり、即座に彼の姿を見つけてそう言
った。その通る声に周りにいた生徒たちも全員振り向く。そんなことはお構いな
し、と彼女は和彦の方へ向かっていった。
「んもう。屋上行くゆうんやったらちゃんと言うてから行かなあかんじゃないの」
近づくなり説教。和彦も負けてはいない。
「なんだと〜?ちゃんと言ったぞ、俺は。聞いてなかったのは智子の方じゃない
か!俺が話し掛けても『うんうん』って生返事ばかりでさ。本に夢中になるのも
いいけど、ちゃんと人の話を聞けよな」
ん〜?とにやけた顔の智子。
「せやこというてええんか?ホンマ。5時間めの数学の宿題、先生に指名された
の誰やったかな・・・・・・」
ちょっと思考気な和彦だったが、すぐに気づいたようだ。見る見るうちに顔が青
くなる。
「あ゛〜っ!忘れてたっ!そうだ今日は俺が当たってたんだ。ど〜しよ〜(涙)」
智子は呆れた顔−−でも昔、和彦と知り合う前の顔とは微妙に違っていた−−で
和彦の顔を見ると一言。
「・・・・・・なんであたしが返事しなかったかわかる?あの問題結構難しかったんや
から。今日は和彦君に帰りがけにでもごちそうにならんと気ぃおさまらんわ」
「え?俺のために・・・・・・ありがとう、智子。恩に着るよ」
両手を合わせて拝むようにして頭を下げる和彦に、智子も満足げ。
「そういうことで、帰りは『ときめ後』のビッグパフェ、おごりやからな」
「え?うんうん、何でもおごっちゃいます。おごらせていただきます〜」
そんなこんなで毎日が過ぎていく。
written by 白雪☆
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