| 強制執行体験報告 養育費の強制執行をかけた設楽さんの場合 報告 大矢さよ子 ここで紹介する設楽さんの場合は、7年分の養育費未払い分の強制執行後に元夫が養育費の減額を申し立て調停にかけ、また破産宣告をすると言ってきたケースです。 半年を越える時間を費やし、子どものために頑張り、額は少なくなってしまいましたが支払いが改めて約束されました。 調停が終わったあと、「子どものために、やらないよりはずっとよかった」と言っています。彼女の養育親としての尊厳を見た思いです。 設楽さんの場合 ○設楽さんの現在 38歳 会社員 子どもは女の子12歳。 (実家の近くに家を建て 母子2人暮らし) ○元夫の現在 公務員。借金あり。 再婚し妻との間に子どもが3人(小2と4歳と0歳)。3人のうち、1人は奥さんの連れ子、再婚時に養子縁組している。 ○離婚・養育費の取り決め 1994年 離婚 公証役場で公正証書を作成、養育費は月5万円を約束した (他に慰謝料として200万円を賞与で分割20回払い)。 ○養育費が支払われていた期間 1994年7月から1997年1月までの 2年6ヶ月間 経 過 ■第1回養育費の強制執行 1997年11月 (1997年 2月分から10月分までの養育費9ヶ月分45万円+慰謝料1回分10万円 合計55万円) ■第2回強制執行に至るまでの経緯 1回目の強制執行のあと7年間滞納がありました。 元夫の住所が分からなかったこともありますが、それ以上に、手続きのために何度も会社を休まなければならないのと、公証役場・司法書士の事務所・裁判所の場所が離れているため移動に時間がかかり、手続きにかかる金額のことを考えるともう1度強制執行をする気持ちになれなかったそうです。 元夫の所在もやっと04年 3月に分かりました。 そこで養育費を支払ってくれるように手紙を書きましたが相手にされませんでした。 2004年の法改正で、これまでの未納分と将来分を含めて強制執行が可能になったことを知り、再度強制執行をかけることにしました。 ■第2回の養育費強制執行(2004年6月) 1997年11月分から 2004年 5月までの養育費未払い分及び 将来分の養育費分と他に慰謝料未払い分とあわせて530万円を強制執行の手続きをすることを決めました。 強制執行が可能な書類(調停調書・公正証書など)がそろっていれば、弁護士さんより司法書士さんの方が費用負担は少なくてすむので、司法書士さんに手続きを依頼しました。 ■元夫が養育費減額と、離婚後の紛争調整を調停にかけてきた(2004年7月)。 裁判所から子の監護に関する処分(養育費減額)、離婚後の紛争調整(慰謝料も未払い分)の調停の出席依頼の連絡がきました。 強制執行を依頼した裁判所には、事件の停止手続きなどは来ていないということだったので、給与の差押え(供託)はされていました。 「差押禁止債権の範囲変更の申立書」も裁判所に出されていることも分かる。 今回の調停に元夫は弁護士を立てていました。 設楽さんの方は、仕事もそうそう休むことができないし、また弁護士を立てると費用がかかるので、「どうしようか」と相当悩みましたが、最終的には強制執行を依頼した司法書士の方に弁護士さんを紹介してもらいました。 ■調停にどう臨むかを弁護士と相談 8月上旬、元夫側が出した「差押禁止債権の範囲変更の申立書」を弁護士さんに読んでもらうと、申立書に書かれている「借金があるから払えないとか、子どもが3人いて大変だなんていうことは、養育費のことと関係ない」と言われました。 とりあえず「差押禁止債権の範囲変更の申立書」に対する意見書のみ先に作成し裁判所へ提出することにしました。 弁護士さんは、設楽さんが会社を休まなくてすむようにと土曜日に相談を受けてくれ、他の連絡はFAXで連絡をとるなどと配慮をしてくれました。 また費用のことも、出せる範囲で構わないということでした。養育費の減額調停については、その意思は無いという方向で返事することに決めました。 9月上旬、裁判所から届いた「差押禁止債権の範囲変更の申立書」には「男と生活している」などありもしない事柄も書かれていました。 また、他には、借金があり子どもも3人目が生まれ、奥さんも病気がちで生活に困っているということが書かれていました。 借金については、「やっぱりな…」というのが設楽さんの感想でした。 以前取り決めた金額を請求することは、出来ないかもしれないという不安が頭をもたげてきます。でもできる限りこちらの要求を通すようにやっていこうと決めました。 ■弁護士さんから調停の代理を断られる 11月中旬の調停を前に、FAXで今後の対応を相談したが、「場所も遠くて時間の調整が出来ない。それから調停は弁護士がいなくても大丈夫ですよ」と断られてしまい、期待していたこともあって、「法的なことを知らないで太刀打ちできるのか」と悩んでしまいました。 「『自分たちでとれ!』といわれても限界がある。養育費の義務化を法律でしっかり決めてもらわないと、泣き寝入りする母子家庭が減ることは無い」とつくづく感じてしまいました。 ■調停で元夫側が破産宣告 11月中旬の調停での元夫側の言い分は「月2万しか払えない、ボーナスは生活費にあてるから0円」という身勝手なものでした。 設楽さんが今現在は、要求をのむ気は無いと言ったら相手方弁護士が「このまま話合いが平行線をたどるようなら”破産宣告”する」と言い出してきたそうです。 破産宣告をした場合、養育費も免責の対象になるのかどうか調停委員の人たちも「詳しくは分からないのでなんとも言えない」という対応でした(04年までは免責の対象になります)。 設楽さんは「子どもが来年、中学生になるので自分の収入だけでは、塾などに入れられず困る」と、離婚後10年間の生活等を話し調停委員に理解を求めました。 調停委員は「相手も今給料の半分を差押えられていて、生活に困っているのよ。だからね、分かってあげて」と言ったそうです。 ■元夫は破産手続きをすすめていた 前回の調停で次の調停まで破産の手続きはストップすると言っていたのに、実はもう破産手続きを進めていたことが分かりました。 元夫側の弁護士の案は「今差押えている過去の養育費の差押えを取下げてくれれば、破産のときにその債権はない事にして、破産後、借金などの養育費以外の債権をすべてなくしたら生活が落ち着く。 その後過去の分も合わせて養育費を支払う。差押えを取下げなければ過去の養育費は、免責になってしまうのだからその方がよいのではないか」と言われました。ただし債権がなくなり楽になっても、支払える金額は、月々2万5000円、夏冬賞与各9万円でそれ以上は、絶対に無理だと言うのです。 設楽さんの案は、破産しないことを前提に、「差押えは取下げず、ただし差押えの限度額を減らし月々2万5000円程度、夏冬賞与各10万円程度で過去分を完済してもらい、その他今後の養育費として月1万円〜2万円支払って欲しい」というものでした。 相手を信用できないので差押えは取下げたくなかったのです。 しかし、破産の手続きが進んでいるのであれば考えを変えなくてはならないことも頭をよぎりました。 ■差押さえた分の配当の(受け取り)手続きを開始 680円分の切手を裁判所へ郵送し、手続のための書類が自宅に届きました。とても面倒に見えました。 この配当(受け取り)は2004年7月から11月までの給料を差し押さえたものです。 ひと月に差し押さえることができる金額は、相手の収入の2分の1までなので、1回約16万6千円です。 その内訳は、養育費 約15万円、慰謝料 約1万5千円くらいだったと思います。 総額 83万円ぐらいになり、供託されているので、裁判所及び法務局へ行って手続きをすれば、受取れます。(裁判所の手続きまでは、すんでいる) ■最後の調停を前に和解 元夫の弁護士から和解案がFAXで自宅に届きました。 内容は、「月額2万5000円の養育費、夏冬賞与各9万円を成人に達する月まで支払う。この内容で和解し、過去の未払い分についての養育費、慰謝料を放棄する。」 というあまりにも呆れたものでした。 前回の調停で「月2万5000円は、低すぎるし、賞与も9万円では納得できない」と言い「せめて高校入学時に養育費の増額を次の調停までに検討して来て下さい」と話したはずだったのに。 和解案には、増額については一言もありませんでした。 他に案があったら連絡がほしいとのことだったので、すぐに、「こんな内容では、納得できないし、今まで何度も会社を休み誠意を持って話合いに臨んできたのに、これではあまりにもひどすぎる。 男と生活していたとありもしないことを言われてもがまんしていたが、こんなに誠意のないことでは、名誉毀損で訴える! もう一度よく検討して欲しい」と書き他に金額の案と、中学から大学までにかかる費用の参考金額を添付しFAXを送りました。 そして初めて、こちらの意見が盛り込まれた和解案が届いたのです。 内容は、「月額2万5000円の養育費、夏冬賞与各9万円。高校進学の月から、月額3万5000円の養育費、夏冬賞与各12万円に増額し成人に達する月まで支払う。 ただし、大学等へ進学した場合卒業する月まで支払いを続ける。この内容で 未払い分の養育費及び慰謝料の差押えを取り下げ和解する」というものでした。 いつまで話し合ってもこれよりよい案は無いと思い、和解することに同意しました。 ■最後の調停(2004年12月) 最後の調停の日、裁判所へ向かう途中道路が渋滞し調停の時間に間に合いそうもなかったため、裁判所へ遅れることを伝え5分程遅れて裁判所へ到着しました。 内容確認が続き、ほとんど話が終わった頃に元夫側が「あっそうそう破産は、取り下げたから」と言ったのです。寝耳に水でした。 設楽さんは相手が破産するから仕方なく差押えを取り下げ、未払い分の養育費及び慰謝料は、強制執行しないという案に同意したのに、と思いました。 しかし、相手の弁護士は「破産を取り下げないなんて言ってない」と言い調停委員、調査官たちもそれに納得して一緒になって私に「これでよいじゃないか」と言うのです。 結局、強引に押し切られて 最後の調停は、終わりました。 6月に総額530万の金額の強制執行をかけたわけですが、もらえたのは、7月から11月までの給料で差し押さえた83万円だけです。残り447万円が受けとれなかったことになります。 また、その447万円と04年7月〜11月までの養育費25万円は、調停で決めた通り、差押さえを取り下げ『未払い分の養育費及び慰謝料は、強制執行しない』となっているので、債権はなくなったわけではありませんが、もらえる見込みはありません。 強制執行にかかった費用は、約19万5千円です。 1.元夫の住所を調べた金額 (弁護士に依頼 本籍地から現住所を追ってもらった) 3万円 2.司法書士に支払った金額 約10万円 3.弁護士に支払った金額 1回目の相談料 2万円 (司法書士の事務所で相談) 2回目の相談料 1万円 (弁護士の事務所へ行き 直接相談) 3回目の相談料 3万円 (FAX、電話での相談及び資料送付等すべて) 4.他 裁判所への書類送付などの費用(切手代等) 5千円程度 ■設楽さんの感想 離婚して10年過ぎいまさら養育費のことを蒸し返すのは、どうなのかとさんざん悩みました。 でも、これからの娘の将来を考え、きちんと父親としての責任を果たしてもらうということが大切だと思い、自分なりに手を尽くし約10ヶ月間かけてやっと決着がつきました。 この間、手続きには、費用も掛かり、まわりの心無い人からは「養育費なんてもらわなくても親子2人贅沢な生活が出来るんだからよいじゃないか」(決して贅沢なんてしていないのに)「だから新しい生活をしている 前の旦那を困らせなくてもいい」など言われました。 また、自分の味方のはずの弁護士さんからは、結局FAXや電話での連絡だけで大した相談には乗ってもらえず、やっと1人悩みながら考えた和解案について電話連絡した時には「これしか受け取れなくていいの? 僕だったらもっと取れるように出来たのにね。まあ設楽さんがこれで納得したなら仕方ないね」と言われました。(馬鹿にされていたのでしょうか?) 法律のプロである相手側の弁護士からも私は、馬鹿にされていたのかもしれません。くやしい思いをたくさんしました。おまけに調停の結果もあまり良いものではありませんでした。 けれど、私は今までやってきたことには、後悔はありません。 離婚後の10年間自分に自信が無くいつも迷っていました。 しかし今回のことをやり遂げたことでこれから先、親子2人前向きに頑張っていけるという自信を強く持てる様になりました。 決着がついたあと、元夫と話す時間がありました。 本心かどうか分からないけれど「今まで本当に悪かった。これからは、きちんと約束通り養育費を支払うし娘のことで困ったことがあればいつでも連絡して欲しい」と言って連絡先のメモを渡されました。 元夫から減額の調停を申し立てられ、ありもしないことを言われたときは、とても腹が立ち「絶対に許せない」と思いましたが、すべて終わった今は、彼は精神的に弱い人で私たち母子と自分の新しい家族との間でとても苦しんで来たのだと感じました。 私は、「これからは、子どもたちのためにしっかり頑張って」と言うことしか出来ませんでした。 離婚後も元夫、元妻と関わりを持つのがいやで「養育費を請求しない」という方も多いと思います。 しかし、子どもたちにとっては「親」は「親」なのです。会うのが嫌、関わるのが嫌と言い、何もしないのは大人の勝手です。 親としての責任を果たすためにも養育費は必要なのではないかと私は思います。 ですから、今悩んでいる同じ様な境遇の方たちも、苦しい時は、周りの人たちがきっと支えになってくれます。少し大変だけれど、かわいい子どもの将来のために自分のために頑張って欲しいと思います。 |