母子家庭の抱える現在の問題点NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ 赤石千衣子
■現行の社会支援の問題点と改善要望
1.児童扶養手当 2.遺族年金 3.養育費 と父との面会など 4.生活保護制度 5.子どもの状況と必要な社会的支援 6.年金制度と母子家庭 7.婚外子差別など戸籍上の差別 8.寡婦控除 9.誰もが生きやすい社会に |
■日本の母子家庭の現状1、母子家庭の増加母子家庭が増えてきている。01年3月に厚生労働省から発表された平成10年度全国母子家庭等実態調査によると母子世帯数は95万4900世帯で5年前の調査から2割増加している。このうち離婚母子世帯が全体の約68.4%で前回調査から29%の増加、死別母子世帯は18.7%と減少、非婚母子世帯は全体のわずか約7.3%でありながら、その増加率は85%と著しい。さらに、離婚が成立していないが母子家庭として暮らしている世帯の数は統計上表れてはいないが、相当数あると思われる。 |
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母子世帯の増加の最大の原因は離婚の件数の増加である。03年1年間で約29万組が離婚している。このうち子どもがいる夫婦の離婚は約6割といわれる。 また非婚による出産も増加している。婚外子の出生数は年々増加し、2002年全出生数における婚外子の出生率は10年前の約2倍の1.9%となっている。 母子家庭の母の平均年齢は40.9歳である。ひとり親になったときの平均年齢は、34.7歳。母子世帯の子どもは、1人か2人であり、末子は10.9歳が平均である。 平均年収は229万円で一般世帯の平均世帯収入の約3分の1と非常に少ない。特に生別母子世帯がその収入は低い。 |
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| 注 収入には生活保護費、児童扶養手当、年金、就労収入、養育費、仕送りなどを含む また母子家庭の住宅状況は、持ち家率が26.6%と大変低い。死別の場合の持ち家率は66.7%と比較的高いが、離婚や非婚を含めた生別母子家庭の場合は17.3%となっている。また家族との同居率は、13.6%である。このため、公営住宅や公団、借家に住む母子家庭は多く家賃負担が家計に与える影響は否定できない。 このように母子世帯の生活実態は厳しい。その理由は日本の社会制度や子どもへのサポートが薄いなどさまざまな要因に起因していると思われる。 2.母子家庭の生活 母子家庭は総じて低収入であるため、その家計はギリギリのところで営まれている。母子家庭の家計簿を紹介する。 都内に在住する子どもが小さい母子家庭の家計簿。非常勤職員のため、給与は低い。 |
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次に紹介するのは、子どもが大きくなり教育費がかかるようになった母子家庭の家計簿。
子どもへの修学援助金借り入れで乗り切っている。
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母子家庭の家計の苦しさは、就労状況が悪いことが原因である。 98年の厚生労働省調査では約84.9%が就労している。就業していないものの中でも求職中の割合が40%と高くなっているのは、失業が増えているからだと思われる。 日本の母子世帯の就労率は非常に高い。世界的にみると、母子家庭の就労率は、アイルランド23%、イギリス41%、アメリカ60%、ノルウェー61%、イタリア69%、スウェーデン70%となっており、先進国中でもっとも高い(財団法人 家計経済研究所編『ワンペアレントファミリー(離別母子世帯)に関する6カ国調査』9ページ)。 さらに、最近、臨時パートの比率が高くなってきている。1993年(平成5年)の調査では、臨時・パートが31.3%であったが、1998年(平成10年)には38.3%と増加している(平成10年全国母子世帯等調査の概要)。 日本労働研究機構(以下、JILと略)の2001年調査でも、正社員正規職員42.5%、パートアルバイト33.9%、嘱託・準社員臨時・派遣12.5%、自営8.4%となっている(日本労働研究機構『母子世帯の母への就業支援に関する調査』2002年) 年齢的に見ると、正社員・正規職員は40代前半までは比率が上昇するが、40代後半から低下し、50歳代では31.8%とかなり低下する。年齢が上がると不安定雇用になる傾向が見られる。また、学歴が高くなるほど、「正社員・正規職員」の比率が高くなる傾向にある。 職種は、「事務的な仕事」が24.8%、「専門知識・技術を生かした仕事」20.2%、「サービスのしごと」17.2%、などと分散している。勤務先の規模は中小企業の割合が高い。 副業を持っている人の割合は10%となっており、ファミリーレストランや、スナック等飲食店、新聞カタログの配達や集金業務、化粧品の訪問販売、自宅でのパソコン入力などの内職となっている。 働いていないが「今すぐ働きたい」と答えたもののうち、働いていない理由は、「年齢制限のため仕事がない」47.8%、「時間について条件の合う仕事がない」42.4%となっている。 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむが02年に実施した調査でも、「正社員」46%、「パートアルバイト」27%、「嘱託・準社員」10%、「派遣」7%、「自営」4%、となって不安定雇用が多い実態が出た。また副業を持っている人が約25%もあり、夜、早朝の仕事、土日などの仕事をして低収入を補っている。(しんぐるまざあず・ふぉーらむ02年「母子家庭の仕事とくらし」以下「仕事とくらし」)また職業能力の向上については希望はあるがやれない人が多い。もっている資格については、役に立っている資格としては、看護師、パソコン、介護福祉士の順に高い。母子家庭になってから取得した資格としては、ホームヘルパー、パソコン、簿記などが多い。就労支援として何がほしいかを聞いたところ、「病児保育の充実」47%、「職業訓練の受講」42%、「延長保育や休日保育の充実」38%となっている。「残業ができないパートでも首がきられそうだ」「子どもが小さいうちは残業ができないからといわれて企業から敬遠され、子どもが大きくなれば年齢制限にかかるのではないかと思う」という母子家庭の母親の悩みが調査でも浮き彫りになっている。 厚生労働省は、03年には母子福祉基本方針というのを定め自治体で今後5年間で母子福祉支援計画を定めることとしている。その内容は子育て生活支援、就労支援、養育費確保、自立支援であるが、この中でもっとも全面に出されたのが就労支援であった。 具体的な就労支援のメニューとしては、自立支援教育訓練給付金制度(雇用保険に加入していないパートなどのシングルマザーでも、教育訓練給付金制度を活用できるしくみ)、母子家庭高等技能訓練給付金(看護師や理学療法士など高等技能の訓練を受ける場合、最後の3分の1の期間だけ月額で10万3000円給付する制度)、常用雇用転換奨励金(企業がパートで雇ったシングルマザーを常用雇用に転換した場合に30万円を給付)などのメニューがある。 こうした制度はいわば児童扶養手当の削減で摘み取った予算によってまかなわれるが、国の補助率が3/4で自治体負担が1/4であるが自治体も財政難のためなかなか実施していない現状である。 しんぐるまざあず・ふぉーらむが03年に実施した自治体就労支援策の調査によると、母子就労支援計画を定める計画のない都道府県が17県あった。政令都市、市町村でもまったく取り組まれていないところが多いという現状がある。 就労支援などきめこまかい母子支援策を行うという理由付けで、児童扶養手当が減額されたが、まだ母子支援策もないという状況がかなりの自治体で続いている。 さらに母子世帯就業支援特別措置法は2008年3月末までの時限措置として、国や自治体が母子家庭の母親の就業確保に「特別な配慮」をするよう求めている。この具体策として厚生労働省は平成15年10月、庶務などを担当する非常勤職員にシングルマザーを積極的に採用する方針を決めた。 今後就業支援センターなどに求人情報をいれるという。 またNPOでも動きがある。NPO法人あごらでは、ひとり親家庭の母を対象としたeラーニングによる「地図データ入力支援技術者養成講座」及び「コンピュータ支援翻訳者 養成講座」が「厚生労働省 母子家庭自立支援教育訓練給付金事業」の講座として指定されたので、その研修を受ける人を募集している。副業的な収入であることなどが非常に残念だがこうした動きもある。 |
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■現行の社会支援の問題点と改善要望1.児童扶養手当児童扶養手当は、「離婚による母子家庭など、父と生計を同じくしない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため」、月々、母子家庭等の児童に支給される手当である。1961年新設された死別母子家庭のための母子福祉年金では離婚を支給事由とできないため、主に生別の母子家庭を対象に1962年に発足し、以来、額の改定や国籍条項の撤廃など制度の改善がおこなわれてきた。 85年に大幅な見直しがあり、年金の補完から切り離し、手当額を2段階とし、都道府県の4分の1負担を導入した。また未婚の母を対象外とする案が出されたが、国会で成立しなかった経緯がある。 98年には、所得制限を収入ベースで子ども一人の場合、407万円から300万円に大幅に切り下げた。 また児童扶養手当は婚外子が認知を受けている場合は受給できなかったが、離婚後の子どもと取り扱いが異なるのは婚外子差別であり、法の下の平等に反すると、奈良、京都、広島の母子家庭の母が訴訟を起こしていた事態も受けて、父からの認知後も支給されるように98年政令が改正された(本訴訟は、02年1月最高裁判決で児童扶養手当法違反で、原告勝訴となった)。 02年までは、所得の2段階制で、全額支給は42370円(子ども1人の場合、2人目加算が5000円、3人目3000円)、部分支給は28350円であった。しかし02年、所得制限限度額と手当額の見直しが行われ、子ども一人の場合、年収で130万円以上所得が1万円上がるごとに、1870円減額され、年収で365万円まで支給されることとなった。また、養育費も申告させ、8割を収入として認め、この分が手当額が減額されることとなった。この改訂の結果、手当が増額された世帯はわずか3%、減額された母子家庭が46%である。 母子家庭にとって、所得保障として児童扶養手当は大きな支えとなっており、平成14年末で受給世帯は759,194世帯となっている。これは母子世帯の約80%にのぼる。 全国母子寡婦福祉団体協議会、ハンドインハンドの会、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、母子家庭共和国など母子家庭の当事者団体、あるいは、有識者のあいだから、02年の児童扶養手当見直しについては大きな反対論が巻き起こった。手当予算の抑制のためにだけ減額措置をしてはならない、就労支援や養育費確保を行うので、手当額を減額すると厚生労働省がしめしていたが、就労支援は次年度からやっと動き始めるという段階であり、本来就労支援を充実し実効があがってから手当減額をおこなうべきだという意見であった。 現実に、就労支援策は一部自治体では熱心にとりくまれているが、その他の自治体では、まったくとりくまれていない。 さらに母子寡婦福祉法の改訂により、08年に手当額の5年受給後は半分までの減額ができるとされており、減額については母子家庭の状況、関係団体の意見を聞いて決めることとなっている。この5年後の減額についても、母子家庭の当事者の不安は強い。母子寡婦福祉法には父親にあたる者が養育費を支払うよう法律に努力義務を明記するようになったが、「努力義務」にとどめるなら国や行政に支払いを命じる権利はなく、効果が疑問視されている。 2.遺族年金 厚生年金に加入していた夫と死別し、18歳以下の子どもを扶養している場合、遺族基礎年金に子ども加算がつき(子どもひとりで月額約8万円程度)、さらに遺族厚生年金が支給される。夫の報酬比例部分が38万円であった場合、夫は40年間、年金保険料を払った計算となり、子ども2人で年額192万円となる。 父がいないという状態に着目して支給される手当と年金の格差は昭和60年の制度改正で児童扶養手当が遺族年金と切り離されることで、大きなものとなった。 3.養育費 と父との面会など日本の子どもに対する非監護親からの養育費支払いの現状は極めて低くかつ無責任である。また面接交渉を行っている割合も低い。 平成10年度全国母子世帯等調査によると、「子どもの父と養育費の取り決めをしている」35.1%、このうち、文書による取り決めありが66.6%となっている。養育費の取り決めをしていない理由は相手に支払う意思や能力がない61.1%、取り決めの交渉をしたがまとまらなかった11.3%となっている。 日本の離婚の多くが協議離婚となっているため、当事者同士の話し合いでは、養育費の取り決めを行うことが困難である実態が推測される。 さらに、「養育費を現在も受けている」20.8%(平成5年は14.7%)「受けたことがある」16.4%となっており、取り決めをしても、5年前からは増えたとはいえ、養育費を受け取ることができない状況が浮き彫りになっている。養育費の額は、1世帯あたり53.200円となっている。 しんぐるまざあず・ふぉーらむの03年の調査によると、離婚後も子どもが父と会っていると答えた母子家庭は、約3分の1だった。 |
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NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ子育て調査 03年による
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母子家庭の母の立場から言えば、簡便に離婚手続きとともに養育費の取り決めが行われ、養育費の支払い確保がされるための法的・社会的措置が取られることを望まれる。また子どもにとっては、父との面会交渉は、例外はあるが総合的に見れば子どもの成長にとってよい影響を与えると見られるので、こうした取り決めも負担なくスムーズに行われることが望ましい。そして、養育費や面接交渉が、社会的な常識となることを望まれている。 03年4月、東京と大阪の裁判官らをメンバーとする「東京・大阪養育費等研究会」は子どもを育てる親の年収と養育費を払う側の年収と子どもの年齢・数から養育費を算定できる表を作った(判例タイムス1111)。この算定基準はこれまでよりも比較して高額の養育費である。すでに調停の場面で使われていると聞く。 担保執行法制の改正が行われ、04年から強制執行によって将来分まで養育費が収入の半分まで差し押さえ可能となった。 さらに不払いの場合、間接強制制度も民事執行法の改正とあいまって検討されている。 養育費の支払い確保の制度は、子どもの権利として推進されるべきである。しかし、母子家庭の低所得はこれだけで補うのは困難であると思われる。養育費の支払い確保が行われれば児童扶養手当制度の廃止されてもいいのではないかという意見があるが、これは拙速というべきであろう。 子どもの面接交渉を行っているほうが、養育費の支払いも行われている。こうしたことから面接交渉をすすめていくことの重要性はもっと認識されるべきである。しかし、DVや離婚に至る経緯で父との面会できない事情も考慮されるべきである。また、親同士が面接交渉を円滑に進めるための援助も今後必要と思われる。 4.生活保護制度母子家庭のうち生活保護受給世帯は69350世帯である。このうち半数が就労しながら受給している。しかし母子世帯の多くは生活保護を受けず生活保護基準以下で暮らしている。これは、日本の場合生活保護受給者に対するスティグマが強いこと、扶養義務者への照会が前夫や親兄弟に行われること、預貯金の規定が厳しいことなどが理由として考えられる。 03年、社会保障審議会生活保護制度の在り方に関する専門委員会が開かれ生活保護制度について検討している。12月の中間報告では、母子加算の廃止は盛り込まれなかったが、今後04年7月までの結論で母子加算の廃止や、有期限が出る可能性がある。生活保護以下の収入で暮らす母子家庭が多いことを理由に、母子加算を廃止することへは、異論が大きい。実際、ドメスティックバイオレンスや離婚や母子家庭になるまでの経緯で精神的にもダメージを受けている母にとっては、すぐ自立への活動はできない。申請時の問題、自立指導の問題など、さまざまな問題がある。 5.子どもの状況と必要な社会的支援母子家庭の悩みの中には子育てに関する困難が大きい。 平成10年度全国母子世帯等調査の概要によると、子どもについての悩みとして「教育・進学」41.4%、「しつけ」18.7%、「就職」14.7%となっていた。 長時間の仕事に追われて、帰ってくると家事をこなし、合間に子どもの話を聞き、宿題をみてやる。そういった中で、子どもとゆっくり向き合う時間がないという悩みがある。今後、副業をする母子家庭が増えれば、子どもと母親の時間がもっと奪われていくことだろう。 こうした母親の声を紹介する。 :仕事で休みが思うようにとれず、学校行事も運動会等本当に親が行かないと困るもの以外は、ほとんどほかっておかなければならず、上の子は、中学に入り部活等自分の世界を持つようになり母親が仕事で不在でも大丈夫になってきたが、下の子に関しては、かまってやる時間が少ないので困っている。やめると次の職がないので仕事は続けるが、もう少し子どもの為に時間をとってやれるような生活をしたい。また、子育てからはちょっと離れるかもしれないが、子どもの将来を考えると進学等について経済的に強い不安を感じている。(41歳 離婚 常勤)(しんぐるまざあず・ふぉーらむ編「シングルマザーの子育て調査」(仮題)04年) また学校や保育園が母子家庭への無理解であるという不満、放課後や土曜日、長期の休みでの子どもの過ごし方に関しての不安、また教育費の不足から、思うように進学させられない母子家庭の実情もある。子どもの最終進学目標は、高校36.5%、短大6.9%(平成5年は10.4%)、大学34.5%(平成5年は37.2%)となっており5年前よりも大学、短大が低くなっている。これは不況によって、子どもの進学が厳しくなっている現実を表していると思われる。 そのほか、病時保育を含めた保育の充実、学童クラブの充実、医療費の減免の充実、そのほか子どもを支える地域のさまざまなメニュー、学校・保育園の理解、ファミリーサポートセンターの利用料の減免、奨学金制度の充実など、シングルマザーの子どもを支えるさまざまな施策が望まれる。 また父との交流についてもできる限り、子どもとの面会ができるほうが望ましいと思われるのであって、別れた父親との交流を支える仕組みも必要となる。 6.年金制度と母子家庭公的年金制度が片働き世帯を標準に設計され、離婚を前提としていなかったため、もっとも生別母子家庭が年金制度のはざまで不利益を被ってきたといっても過言ではない。 専業主婦だった女性が離婚した場合、第3号被保険者であった結婚期間は基礎年金部分しかないため、また離婚後の就労も低賃金であるため、老齢年金は極めて低くなる。 しんぐるまざあず・ふぉーらむが行った年金調査では、シングルマザーの老齢年金のシミュレーションを行ったが、30歳で離婚後30年間パートで年金保険料は免除していた場合65歳で月額38000円となる事例を紹介した。これは例外ではない。 04年の年金改定で、離婚後の年金分割が政府案に盛り込まれた。しかし、07年からの実施は分割とその割合は夫の同意あるいは裁判によるなど、条件が厳しすぎるという意見もある。 また税制の100万の壁、年金の130万円の壁といわれるように、年収を130万円以内に抑えて夫の扶養内にとどまろうと労働調整するパート主婦は多いため、同じ職場であっても、自分の収入だけで家計を維持している母子家庭の母親の賃金も抑制される。 7.婚外子差別など戸籍上の差別<日本では戸籍の続柄の記載が法律婚によるこどもの場合は長男か長女…となるところを、婚外子(=非嫡出子)の場合は、「男」女」とされる。相続分はいわゆる婚内子(=嫡出子)の2分の一と定められている。このような差別がある。婚外子か否か、ということは本人には選択の余地も責任もないのだから、差別は憲法の定める法の下の平等に違反するものだ。このような法律による差別が残っているのは先進国の中でも日本だけで、国連人権規約委員会から1994年と1998年に人権侵害であると差別撤廃を勧告され、また03年には女性差別撤廃委員会、04年には国連子どもの権利委員会から是正の勧告が出ているにもかかわらず、法改正は遅々として進んでいない。 婚外子に対する人々の意識には変化が出てきている。いわゆる「未婚の母」がNHK朝の連続テレビ小説の主人公になるなど、前向きに捉えられている風潮も出てきた。 8.寡婦控除税金を計算する際に受けられる控除のひとつに寡婦控除がある。 離婚か死別の場合は受けられるが、非婚の母子家庭は受けられない。年間35万円もの控除を受けられるかどうかは、住民税はじめ前述の児童扶養手当受給の可否にも大きく影響してくる。しかし非婚の母でも過去に離婚歴あるいは死別歴があれば寡婦とされ、この控除を受けられるのである。親の事情によって、本来こどものために支給される手当の支給基準が変わってくるというのはおかしな話ではないか。この摩訶不思議というか矛盾している現行の寡婦控除はぜひすべての母子家庭に適用してもらいたい。さらに一歩進んでいえばその名称をあらため、たとえば「ひとり親家庭控除」とし、すべてのひとり親世帯に適用できるようにしてもらいたい。そうすれば児童扶養手当は父子家庭は受給対象とならない、という現行の不公平と思われる基準を是正することにもつながる。 9.誰もが生きやすい社会に「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」は母子家庭の当事者を中心にシングルマザーが子どもと共に生きやすい社会、暮らしを求めて、提言・情報交換・相互援助、交流等をメンバーがボランティアとして活動している任意団体だ。前述で掲げた社会制度の問題点を行政へ提言、差別の解消と権利の拡大を世論に訴える活動を続けている。 シングルマザーが生きやすいかどうかが、その国の福祉・社会保障施策の試金石となる。重要なのは当事者であるシングルマザー自身が社会変革の提言を積極的に行えるような土壌を社会システムとして作り出していくことだ。 参考文献 |