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混沌の庭研究所

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2002年06月24日 月曜日 [長年日記]

_ [読了] 最果ての銀河船団

250年のうち35年間だけ光を放ち、それ以外は火が消える奇妙な恒星、オンオフ星。この星系には、人類が銀河で出会う三番めの、知性を持った非人類型生命体――蜘蛛族が存在していた。ここからもたらされるであろう莫大な利益を求めて、二つの人類商船団が進出する。だが軌道上で睨み合いを続けるうち、ついに戦闘の火蓋が切られ、双方とも装備の大半を失い航行不能となってしまった。彼らは、地上の蜘蛛族が冬眠から目覚めて、高度な産業文明を築くのを待つしかなかった……。ヒューゴー賞、キャンベル記念賞に輝く、大宇宙SF巨編!

最果ての銀河船団 上巻/ヴァーナー・ヴィンジ/創元SF文庫より]

戦争を繰り返しつつ近代化への道を歩む蜘蛛族の世界に一人の天才科学者が現れ、彼らは今まさに原子の火をも手に入れようとしていた。一方、軌道上の主人公たちは、エマージェントの凶悪な指導者の下で奴隷状態におかれながら、長い雌伏の時を過ごしていた。そして刻々と蜘蛛族世界への侵攻の時が迫る中、ついにチェンホーの反撃が始まる。宇宙の深淵で3000年を生きてきた伝説の男が立ち上がったのだ! ハードSFとスペースオペラの醍醐味をあわせもつ傑作巨編。

最果ての銀河船団 下巻/ヴァーナー・ヴィンジ/創元SF文庫より]

あまりにおもしろくて1300ページ一気読みしてしまいましたが、おかげで眠くて死にそうでした。だが、それだけの価値はありましたな。星間文明、ファーストコンタクト、電算機人間、帰ってきた伝説の男などなど、ネタ満載でSFファンにはたまらない逸品です。

この物語の舞台は人類が宇宙進出を果たした遙か未来、地球から進出した人類はあちこちの星系で文明を興しては滅亡しを繰り返しています。その中に共通言語と情報ネットワークで結ばれたチェンホーという商業文明があり、数千年の長きに渡って星系間を商業で結びつけています。このチェンホーから一人の男が船団を率いてオンオフ星を目指すことになったのですが、そのために彼は数世紀をかけて一人の男を捜し出します。ちなみにこの時代の人類は寿命が500年程度まで伸びていますが、これに亜光速での移動による時間遅延が加わって人によっては1000年単位の時間を生きているわけです。ついに目的の男を捜し出し、船団は暗期が終わろうとしているオンオフ星に辿り着くわけですが、そこでエマージェントという人類文明からやって来た船団と鉢合わせしてしまいます。このエマージェント、奴隷制を社会基盤に持つかなーり悪辣な文明で、にこやかな顔を見せつつウィルス兵器でチェンホーに奇襲をかけてきます。しかし、チェンホーのネットワーク放送を傍受して星間航行技術を再獲得したエマージェントですから、ある一点を除いて技術レベルはチェンホーに大きく後れを取っています。チェンホーの反撃をくらって敢えなく相打ち。そんなわけで、お互いにっちもさっちもいかなくなったチェンホーとエマージェントは眼下の惑星に生息する蜘蛛族が星間航行船を修理できる技術レベルに文明を進化させるまで待つことになります。……蜘蛛族はようやく自動車を作り始めたという程度の技術レベルだというのに実に気の長い話です。しかもこういう場合、過去は水に流してお互い協力していこうって展開になるかと思いきや、ここでもエマージェントの悪辣ぶりがいかんなく発揮されるステキ展開。陰謀でもってあっさりとチェンホーの生き残りを支配下に収めてしまいます。この事実を知るチェンホーはわずか2人。彼らは反撃の時を30年以上待つことになります。

とまあ、前半はこんな感じなんですが、他にも蜘蛛族の天才科学者シャケナー一家の話とか3000年前の話なぞが随所にちりばめられていて飽きさせません。特にシャケナーの天才っぷりはほんにすばらしい。……蜘蛛だけど。最後のどんでん返しなんぞ、まさかああくるとは思いませんでしたよ! ファーストコンタクトもどうやって持っていくのかと思ったら、あれは予想外。シャケナー、次の明期に再び地上に現れるとよいのだがな……。あそこがどうなったかわからないのがちーと不満です。1300ページはちと長いですが、これは読まないといけませんぞ。