杭州 〜西湖十景と龍井茶と青磁と杭州料理〜 2日目

平成17年8月14日〜17日





蘇堤の日暮れ



○8月15日



左:ホテル前の道路、街路樹が深い、右:ホテルに停まっている高級車群


午前6時半に起床、7時から1階で朝食。
写真には撮り忘れたが、このホテルの朝食バイキングは素晴らしかった。中華料理が5種類くらいに、焼ソバに焼ビーフン、饅頭や粽などの点心が5種類、そして粥だけで3種類、粥に載せる搾菜や塩卵、皮蛋といった付け合せも充実している。さらにはその場で茹でて出してくれるワンタンもある。そして出されている料理の全てが美味い。
コペンハーゲン駅の傍にあったバイキング形式のレストランとは真逆である。日本でもこれほど美味しい朝食は、そう食べられないだろう。おかげで自分としては朝から大食いをしてしまう。


8時過ぎに出発。


六和塔


左:六和塔全景、右:南岸は新開発地



左:銭塘江の下流(東側)、右:銭塘江の上流(西側)


銭塘江のほとりに建つ塔。入場料は20元、塔に登るのに別途10元。古い塔なのでエレベーター等という物は付いておらず、60mを階段で登らなければならない。
ただ、最上階からの眺めは素晴らしい。


玉皇山へ向かう為にタクシーを捜すのだが、六和塔の麓でたむろしていたタクシーの運ちゃんによると玉皇山へは「行けない」という。何でも工事中だか何だかで駄目だと言っているらしい(太田さんと水上さんは中国語を習っているので、簡単な会話くらいなら理解可能、もちろん自分はサッパリ駄目)。そして運ちゃんは、代わりに龍井へ行かないかという。しかし我々は龍井茶には興味はあっても龍井という場所はボッタクリ観光地の臭いがプンプンとしているので興味は無く、どうせ行くなら中国茶葉博物館に行きたいと考えていた。そこでその旨を説明するのだが、その運ちゃんは駄目だといい、しつこく龍井を勧めて来る。こちらも強固に龍井行きを拒否していたら、その内に向うが諦めて行ってしまった。
水上さんの考察だと、龍井の茶屋に客を連れて行くとマージンが貰えるから、それであそこまでしつこく客引きをしているのではないかと。確かにそういう感じではあった。

仕方が無いので別のタクシーを捜していたら、偶々客を降ろしたタクシーを見つけたので、これと交渉してみたところ、茶葉博物館行きをあっさりとOKしてくれた。


中国茶葉博物館


左:博物館全景、右:茶畑と山



左:青磁(刑州窯)、右:青磁(鈞窯)



左:龍井茶は耐熱コップの茶葉に直接お湯、右:お茶請


休日だったからか入場料は無料。普通だと15元くらい必要。
客は少ないが、展示は面白い。お茶の木から葉っぱの加工方法、團茶(茶葉を固めて煉瓦状にしたもの)の展示から、各時代の茶器の展示等もある。結果から言うと翌日行った南宋官窯博物館よりも器の展示数が多かった。

博物館の敷地内にある茶館でお茶を飲む。
龍井茶の本場ということで3人とも龍井茶を注文。1杯30元とそれなりに高いお茶にも関わらず、耐熱コップに葉っぱを入れてお茶を注いだだけの物が出てきた。龍井茶はこうやって飲むのが本場の飲み方らしいが、何とも安っぽい。

お茶請に出てきた菓子は3種類。一つはピーナッツの落雁みたいなもので、味は良いがボロボロ崩れて食べ難く、粉っぽい為にむせ易い。もう一つは梅か何かの実を砂糖煮にしたもの。種を出すのが面倒。そして日本の砂糖のかかった煎餅にそっくりなもの。本当に亀田のあれそっくりである。

同じく敷地内のミュージアムショップを見に行く。売られている茶器は日本でも簡単に手に入るようなものしか置かれていなかったが、書籍は面白そうで値段も安いものが並んでいた。しかし全てショーケース内に入っており、出して中身を読ませて貰いたい旨を説明するのも面倒だし、どうせ市街地の大きな本屋に行けば同じ物が安く売られているだろうと高をくくって、何も買わずに出る。しかし結果として市街地の本屋には置かれておらず、ここで買っておけばよかったと後悔する事になる。


道路まで出て流しのタクシーが来るのを待っていると、乗合タクシーのようなバスがやってきた。一人2元。
玉泉まで移動。天外天菜館で昼食をとる予定だったのだが、このレストランは植物園内に有り、植物園への入場料10元を別途取られる事になる。
もう少し腹を空かせてからということで、先に玉泉を見ることにする。


玉泉




西湖三大名泉の一つらしいのだが、泉といっても園内にあるのは藻で緑色に染まった池だけ。ここにある茶屋では玉泉の水で茶を淹れているという話なのだが、この水を漉しているのだろうかと心配になる。
一応庭があるが、そう大したものでもなかった。


天外天菜館


左:西湖醋魚、右:鱶鰭スープ



左:8種類の茸の炒め物、右:東坡肉



左:猫耳麺、右:杭州の名物料理(山外山菜館の看板)


入り口が2ヶ所あり、向かって右が一般人用、左が金持ちOR外国人向けとなっている。もちろん我々は左側。

鯉(?)の黒酢餡蒸し(西湖醋魚)、鱶鰭スープ、8種類の茸の炒め物、東坡肉、猫耳麺、白飯。

鯉(?)は身がふっくらとして良い。日本では魚を料理するのに焼くか煮るかしかしないが、「蒸す」という手法も取り入れてみたらどうなのかと思う。ただ黒酢が効きすぎていたのと小骨が多いのには閉口する。
鱶鰭スープは、鱶鰭の他にも海鼠、何か高そうなもの、セロリ等が入っていた。「何か高そうなもの」というのは節があって透明でコラーゲン質な何かで、竜の落し子か何かかと思うのだが良く判らない。
8種類の茸の炒め物は、椎茸、エノキ、シメジ、木耳、マッシュルーム、ナメコ、袋茸、エリンギ(?)と、日本で良く見る茸ばかり入っていた。
ここの東坡肉は良く火が通って柔らかだった。こういう美味しいものは毎日でも食べたいものだ。
猫耳麺は、イタリア料理のニョッキに似た小さな麺(ヌードル)が入ったスープで、普通にマカロニ入りのスープを飲んでいるような感じだった。量も少ないし(写真ので1人前)

鱶鰭が高かったので、ビールを入れて280元くらいかかった。


道路まで戻ってタクシーを拾い、西湖東岸にある茶屋で茶を飲む。


西湖国際茶人村


左:所狭しと並べられたお茶請、右:凍頂烏龍茶




左:白茶、右:龍井茶(ここでもコップ)







一人80元程のお茶を注文すると、机の上に溢れんばかりの果物や豆類を持ってきた。食べた分だけ金を取られるのかと思ったが、この辺りの茶屋では御茶請は無料で食べ放題らしい。レジの傍には、他にも家鴨の足や豚の耳を煮た物や、煮卵、クッキーやパイのようなものまで置かれていたが、天外天菜館で食べ過ぎてあまり食べられなかったので、パイに似た菓子しか追加で取らなかった。
ここでは三者三様に水上さんは烏龍茶、太田さんは白茶(緑茶の一種)、自分は龍井茶を注文する。種類によって淹れ方から器まで変わって来るのは面白い。

クーラーの効いたこの茶館で午後4時過ぎまで時間をつぶす。


4時を回って日の照りも大分柔かくなってきたので、西湖湖畔を散歩する。


柳浪聞鶯


西湖湖畔には柳が多く植えられている


西湖十景の一つ。西湖湖畔には柳が多く植わっているが、東岸には特に多い。その柳に止まった鶯の声が美しい事からこの名前がついたらしいが、この真夏に鶯もへったくれも無い。
奇麗なのだが、暑いので鑑賞している余裕は余り無い。

そのまま湖畔を歩いて、雷峰塔まで行く。


雷峰塔(雷峰夕照)


左:エスカレーター、右:塔からの景色


西湖南岸の丘の上に建つ塔。20世紀初頭に付近住民に煉瓦を窃盗されて崩壊したが、最近になって再建されたらしい。おかげで丘の上まではエスカレーター、塔の内部にはエレベーターという文明の利器が備わっていて人に優しい。その分値段も張って、40元。
またこの塔は西湖十景の一つでもある。夕暮れというには時間が早かったが、塔からの景色は良い。


雷峰塔の直ぐ南に西湖十景の一つである「南屏晩鐘」のある浄慈寺があるのだが、既に午後5時を回って入れなかったので諦める。


そのまま湖畔を歩き、蘇堤を北に歩く。
ついでに西湖十景の花港観魚と蘇堤春暁も観て回る。









左:花港観魚の碑の付近には孔雀が放し飼いになっている、右:赤ん坊を襲う孔雀



蘇堤上の景色

3km以上もある蘇堤を歩いているうちに日が沈み、空の色が黄色から紅、緑、そして青へと移り変わっていき、その内にポツポツと湖畔に建つ街灯、そして湖に浮ぶ舟に灯りが点り始める。連続した時間の中での景色の変化を、こうまで楽しめるのは素晴らしい。ただ言うならば、もっと涼しい秋か春にここに来れたのなら、もっと楽しめたのだろうと思うと残念だし、ここに来るまでに数キロを歩いて足にかなり来ているので余裕も無いのも残念だ。


西湖の北岸にまで出た後、タクシーを拾って今晩の飯屋へと移動する。


香溢浣紗賓館

開元路と延安路の交差点の南西隅にあるホテルのレストラン。
9時閉店のところへ8時過ぎに入ったために、大急ぎで注文・喫食する。




鴨の醤油煮、香菜のサラダ



青菜の椎茸炒め、セイの天婦羅の甘酢餡かけ



宋嫂魚羹、雪菜の湯麺


鴨の醤油煮、香菜のサラダ、青菜の椎茸炒め、?(魚編に青の月が円で「セイ」と読む淡水魚)の天婦羅の甘酢餡かけ、黒酢味の魚スープ(宋嫂魚羹)、雪菜の湯麺。

鴨の醤油煮は、鴨肉を醤油ダレで煮込んだ(蒸した)物。冷菜にしては美味しかった。
香菜は癖があるものの、セロリなどと一緒にサラダ風にしてみると案外美味しい。最近の料理か。
青菜の椎茸炒めはそのまんま。日本で出て来てもおかしくない。
セイの天婦羅甘酢餡かけは、セイ(川魚らしいが詳細不明)がどんなものか良く判らないが、ともかく衣がサクっと揚がっている所に餡がしっとりと絡み、それをしっかりとした弾力のある身が受け止めている。食感と味とが共に楽しめる美味しい料理で、この皿の為に翌日もこの店に来たいくらいである。
宋嫂魚羹は、魚のアラ汁に黒酢と醤油を入れてトロミを付けたようなもので、日本料理に近かった。
雪菜の湯麺は、雪菜の漬物で塩味を利かせたスープに腰も糞も無い伸び切った麺が入っている。中国人はスープにはこれだけ気を配るのに、どうしてボヘミアのヌードルみたいな麺を入れるかなと不思議に思うが、これはこれで美味しいのがまた不思議。

以上、ビールに白飯も含めて126元。


延安路を蜿蜒と歩いて南下する。
多くの家庭ではクーラーなど無く日中には暑くて外に出られないため、夜になると通りのあちこちに人が出て涼んでいるが、何かそのまま囲まれて身包み剥れそうな雰囲気が漂っていて怖い。気を引き締めて歩く。

途中、果物専門のスーパーがあったので覗いて見ると、桃から葡萄、西瓜に茘枝、バナナ、果てはドリアンまで置かれていた。しかも全てかなり安い値段で、昼間の茶館で出てきた果物類も金銭的には殆ど負担がかからないものだということが良くわかった。またこういう店は北京では見た事が無く、南方系の土地柄なのかとも思える。


古玩街


左:灯篭の店、右:屋台街(ここでは食べなかった)

観光客向けの御土産物街。ここに並ぶ店の店構えは100年以上前の時代のものに統一されており、日本だと伊勢のおかげ横丁や金沢の東山茶屋街に近いもので面白い。到着したのが午後9時過ぎで遅かったが、4分の3以上の店が煌々と明りを灯して営業している。
お茶マニアの水上さんと太田さんは、ゆっくりとお茶を試飲できる店が無いかと探していたのだが、結局「天福名茶」(台湾系の茶屋)しか見つからず、そこで試飲タイムに入った。一度試飲を始めると長いので、自分一人で骨董屋を探して歩く。
端から端まで歩いて何軒か見つけたものの、良さそうなものは高く、安いものはどうでもいい品ばかりで、掘り出し物というものは見つからなかった。ガラクタ市みたいに路上で品物を広げている所もあったが、既に店じまいをしていてゆっくりと見れなかった。ホエブスの古い灯油コンロがあったが、腐食が進んでいて難しそうだったので諦める。

天福名茶に戻ってみると、ようやく銘柄を決めて計ってもらっている所だったので、同じ物を1つほど包んでもらったのだが、この時の注文の仕方が悪かったので、後々ややこしい事になってしまった。


呉山公園の広場を通ってホテルまで歩いて帰る。


午後12時前に就寝。




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