四国八十八箇所の旅

平成13年4月28日〜5月5日



北海道テレビに「水曜どうでしょう」というローカル深夜番組がある。さいころで出た目の交通機関(深夜バス等)で移動しながら北海道を目指したり、東京から北海道まで3日以内で原チャリで帰ったりと、旅を中心とした馬鹿番組であるが、この番組での人気シリーズに「四国八十八箇所の旅」がある。罰ゲームとして、八十八箇所を3泊4日や4泊5日で回らされるというものであり、夜遅くまで寺々を回ってゲンナリとしている出演者の様子が笑いを誘う。
こういう馬鹿番組の好きな友人Oにこの番組のビデオを送った。すると、半分予想はしていたが「あれは面白い。わしらもやろう」という反応が返って来た。そしていつの間にかトントン拍子で話が進み、遂にはGWの7日間で自分達も八十八箇所を回ることとなったのである。
そして、四国の山道には欠かせない名ドライバーHの参加も決定し、GWの初日4月28日に、我々3人は徳島空港に集合したのである。


○4月28日 晴れのち曇り
0930 第一番 霊山寺
1025 第二番 極楽寺
1045 第三番 金泉寺
1110 第四番 大日寺
1135 第五番 地蔵寺
1205 (昼飯)
1225 第六番 安楽寺
1250 第七番 十楽寺
1315 第八番 熊谷寺
1340 第九番 法輪寺
1405 第十番 切幡寺
1455 第十一番 藤井寺
1615 第十二番 焼山寺
1740 第十三番 大日寺
阿波史跡公園泊


寺一覧





左:変身前 右:変身後

まずは第一番の霊山寺門前売店にて、お遍路の準備をする。3人とも遍路杖と白衣、それにHとOは輪袈裟、そしてOはさらに般若心経の経本と笠に持鈴と頭陀袋と数珠も購入しその場で着替え、そのまま霊山寺でお参りをする。
お遍路のお参りの仕方としては、

(1)山門にて一礼
(2)手洗いで手と口を清める
(3)線香とロウソクを供え、納札とさい銭を納める
(4)般若心経と真言を唱える
(5)大師堂で(3)と(4)を繰り返す

という順序になる。本来はこれに納経も行なうのだが、これをすると金(一寺当たり500円、88寺で4万4千円)と時間がかかり過ぎるので、今回はパスすることにした。
ともかく、略式とは言え(1)〜(5)までで大体20分弱かかってしまう上に、正式にお参りが出来るのは寺の開いている午前7時〜午後5時までしか無い。そしてこれに寺院間の移動時間が入るのである。水曜どうでしょうでは5泊6日でも無理があったのに、7日間でも果たして間に合うのかどうかが心配になってきた。

ともかく、17番までの寺の多くは徳島平野沿いに点在する為にスムーズに進み、昼飯にセルフうどんなどを食らいつつ数をこなして行き、日も傾き始めた午後3時すぎに初日のメインイベントである焼山寺へと向かった。

四国の山道はひどいものが多いという話は前にも聞いていたし、水曜どうでしょうを見ていても狭い道の連続が映し出されていたので、事前にある程度の覚悟はしていた。直前の藤井寺で見た焼山寺への道の地図に「大型車両通行不可」と書いてあるのを見て、「とうとう来たな」と思った。が、しかし、想像以上にひどかった。
一応舗装はしてある。しかしタイヤの幅ギリギリの狭い道が多い上に、すぐ脇が断崖絶壁の谷底であるような道が多いのである。そしてそう言う場所でも対行車は容赦なく向かってくる。山道を走り慣れていたHでさえもうめいていた。間違ってもOと二人だけで来なくて良かった。自分が運転していたら、何度となく谷底に落下していただろう。


焼山寺への山道。見えにくいが左手は谷になっている

約1時間ほどで標高800m近い焼山寺に到着した。「絶景」という言葉そのものの眺め。そんな場所に立派な古寺が建っているのである。まったく寺社権力の恐ろしさを思い知らされた。

道を選んで山を降り、13番目の大日寺でタイムリミットとなる。そして宿営地探し。何と今回の旅はすべてテント泊なのである。無茶と言われるかも知れないが、6泊もしていたらそれだけで4万円近くかかってしまう。我々にはそんな金は無いのである。
と言って、テントの張れる場所もそう多くはない。平地、人気の無い場所、車の入れる場所、そして出来れば水場がある所。公園や神社を回ってみた挙げ句、やっとのことで条件に揃う場所を見つけて、そこで宿営。麻婆豆腐・茄子・春雨の合成品を作ってご飯にかけて食べる。





○4月29日 雨
0710 第十四番 常楽寺
0730 第十五番 国分寺
0735 第十六番 観音寺
0810 第十七番 井戸寺
0900 第十八番 恩山寺
0930 第十九番 立江寺
1020 第二十番 鶴林寺
1130 第二十一番 太龍寺
1240 第二十二番 平等寺
1320 第二十三番 薬王寺
1350 (昼飯)
1515 (宍喰温泉)
1645 第二十四番 最御崎寺
1730 第二十五番 津照寺
金剛頂寺駐車場泊



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朝からパラパラと雨が降っていた。嫌な予感は的中して、その日一日中雨が降っていた。おかげで靴はずぶ濡れになって足の状態は悪くなった。おまけに「バイキング」という文句に踊らされて薬王寺付近のレストランで食事をしたら、対応は悪いわ麦のほとんど入っていない麦飯を食わされるわ、えらい目に遭った。
それからこの日からは決まって風呂へと入ることになった。この日は宍喰町の宍喰温泉に入ったが、薄い白濁のアルカリ泉で、久しぶりの本格的温泉に束の間の幸せを味わうことが出来た。



室戸岬を回る頃には大雨になる。折角の室戸岬の眺めも全く楽しむことが出来なかった上に、深い霧で走行困難になる。更には宿泊地がなかなか見つからず、頼みの綱の国立少年自然の家もテント設営を断られてしまい、雨と風の中、金剛頂寺の駐車場でテントを張ることになる。濡れながら韓国風辛味スープを作るが、いまいちの味にしかならなかった。今思うと、スープの素でも加えておけば良かったように思う。
雨だれを聞きながら就寝



○4月30日 曇りのち雨
0655 第二十六番 金剛頂寺
0800 第二十七番 神峰寺
0950 第二十八番 大日寺
1050 第二十九番 国分寺
1120 第三十番 善楽寺
1205 第三十一番 竹林寺
1230 第三十二番 禅師峰寺
1310 第三十三番 雪蹊寺
1330 第三十四番 種間寺
1415 第三十五番 清滝寺
1500 第三十六番 青龍寺
1640 第三十七番 岩本寺
1800 中村市内サンリバー四万十にて温泉入浴
中村市内運動公園内泊



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朝は風はあったものの雨は止んでおり、雲のすき間からは朝日さえも覗いていた。今日は晴れるかなと甘い期待をしたものの、神峰寺辺りからぽつぽつと雨が降り始め、その後は降ったり止んだりの繰り返しだった。
高知県は広くて移動距離が厳しいので、昼飯は雪蹊寺門前の売店で焼き芋を食うだけとなった。芋自体は安くてうまかった。夕飯は雨で自炊をしたくなかったので、「土佐名物皿鉢料理だぁ」などとほざきながら、スーパーで買ってきた刺身パックを並べて誤魔化した。半額になっていたので沢山買い込んだが、あまりの量の多さに最後には吐きそうになった。
28番の大日寺から、もう一人メンバーが加わって4人になった。テントは4人用だったがそれまでの2泊で3人までが限度なのが分かっていたので、自分一人だけ車内で寝ることになった。


↑間違い探し



○5月1日 曇り時々雨
0645 出発
0755 第三十八番 金剛福寺
0950 第三十九番 延光寺
1055 第四十番 観自在寺
1215 第四十一番 龍光寺
1245 第四十二番 仏木寺
1320 第四十三番 明石寺
1530 第四十四番 大宝寺
1600 第四十五番 岩屋寺
1720 第四十六番 浄瑠璃寺
道後温泉入浴
運動公園側子供の城駐車場泊



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雨は時たまパラつくくらいだったが、それでも一日中曇っていた。
水曜どうでしょうの二回目の八十八箇所の回で、浄瑠璃寺へ向かう途中に近道をしてパンクするシーンがあった。ビデオを見ているOと二人でその抜け道を見つけようとした。ビデオでは国道33号線を右折して尾根筋の小道へと入っていたのだが、それと見当を付けておいた三坂峠はそのシーンの風景とは全く違い、それからもしばらく探したもののそういう脇道は見つからなかった。諦めてループから浄瑠璃寺へと抜ける道に左折したところ、偶然その探していた道へと出てしまった。どうやら番組では一度引き返してその道へ入っていたために右折することになっていたようであった。ともかくパンクするくらいひどい道であることには間違いなかった。
この日も昼飯はまともに食えなかった。観自在寺境内で売っていたおむすびと素麺を購入して、龍光寺への移動中に車内で食べることになった。
この日の入浴は道後温泉へ行った。今回は玉の湯。大風呂と違って人が少なくゆっくり出来たが、休憩所からの眺めはあまり良くなかった。
夕飯は、面倒だったので外食。温泉への道すがら見つけた880円食べ放題の店に入る。値段相応のメニューで味も底々。で、ついつい食べ過ぎてしまう。
宿営地はさ迷ったあげく、子供の城という公園の駐車場にテントを張る。靴下と下着がネタ切れになったので、持ってきたバケツと洗剤で洗濯をし、紐を張って干す。路上生活者に段々と近付いて行っているが、文句は言っていられない。



○5月2日 雨時々曇り
0635 出発
0645 第四十七番 八坂寺
0705 第四十八番 西林寺
0730 第四十九番 浄土寺
0740 第五十番 繁多寺
0810 第五十一番 石手寺
0910 第五十二番 太山寺
0940 第五十三番 円明寺
1050 第五十四番 延命寺
1120 第五十五番 南光坊
1140 第五十六番 泰山寺
1205 第五十七番 栄福寺
1230 第五十八番 仙遊寺
1300 第五十九番 国分寺
1330 (十円寿司にて昼食)
1550 第六十番 横峰寺
1705 第六十一番 香園寺
湯の谷温泉にて入浴
小松町付近の公園泊



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朝起きると雨だった。干した筈の洗濯物が乾いていなかった上に、洗濯中に邪魔で脱いでおいた上着をその場に置きっぱなしにしていたため、上着も濡らしてしまう。おかげでこの日は裸足で靴を履かなくてはならなくなり、靴ずれを起こしてしまう。踏んだり蹴ったりである。
また、仙遊寺では、これまでの雨と先日の地震とで寺への山道で崖崩れを起こしかけており、目の前の崖崩れで同僚一人を亡くしているHの話もあり、びくつきながら頭大の落石の脇を通った。あれから新聞に載っていない所を見ると、事故にはなっていないようである。



↑土砂崩れの現場と十円寿司(奥が普通の寿司、手前が10円寿司)

横峰寺も山の上にあるが、ここの山道は傾斜が急で、その上雨で濡れて滑りやすくなっていたので、タイヤがつるつるになっていたHのデミオでは何度かABSが作動する状態に陥ってしまう。後でドライバーのHに聞いた話だが、一、二度は本当にやばかったそうで、ゾッとする。
また、夜は伊予小松町を見下ろす公園の駐車場にテントを張り、牛肉沢山の鋤焼きをしたが、あまりに久しぶりだったもので失敗し、やたらと水気の多い鍋になってしまう。
おまけに夜中に駐車場でヤンキー同士の喧嘩まであり、干した洗濯物も乾かず、引き続いて踏んだり蹴ったりな一日だった。



○5月3日 曇りのち晴れ
0650 出発
0700 第六十二番 宝寿寺
0715 第六十三番 吉祥寺
0730 第六十四番 前神寺
0910 第六十五番 三角寺
1100 第六十六番 雲辺寺
1125 第六十七番 大興寺
1200 第六十八番 神恵院
1210 第六十九番 観音寺
1235 第七十番 本山寺
1300 (うどん屋「あさひ」にて昼食)
1330 第七十一番 弥谷寺
1430 第七十二番 曼荼羅寺
1450 第七十三番 出釈迦寺
1510 第七十四番 甲山寺
1530 第七十五番 善通寺
1625 第七十六番 金倉寺
1645 第七十七番 道隆寺
1715 第七十八番 郷照寺
丸亀市内銭湯にて入浴
府中湖湖畔にて泊



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大興寺辺りでやっと晴れ出す。実に四日間も雨に祟られ続けたのである。一体誰の所為なのであろうか。天気が回復すると共に運も開け、昼間に偶然に立ち寄ったうどん屋でおいしうどんを食べることが出来たり、銭湯の場所を聞きに入った酒屋が偶然に外国製ビール専門店で珍しいビールを購入できた上におまけでビールをいただいたり、銭湯のコインランドリーで念願の洗濯物の乾燥が出来たり、これまで最多の18寺を回ることが出来たりと、最高の日となった。
夕食は相変わらず手抜きで、宇多津市内の回転寿司屋で済ませてしまう。
それから香川県は野良犬が多く、宿泊地のダム湖湖畔でも野良犬にたかられそうになったりした。


左:あさひの店舗とうどん



○5月4日 晴れ
0700 出発
0715 第七十九番 高照院
0735 第八十番 国分寺
0815 第八十一番 白峰寺
0840 第八十二番 根香寺
0935 第八十三番 一宮寺
1030 (屋島麓のうどん屋「わら屋」でうどん)
1105 第八十四番 屋島寺
1220 第八十五番 八栗寺
1310 第八十六番 志度寺
1350 第八十七番 長尾寺
1430 第八十八番 大窪寺
1510 (うどん屋「八十八庵」にて打ち上げ)
1700 ヴェラ塩江着



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それまでと打って変わって、朝から暑くなる。屋島寺にて翌日のうどん屋巡りをするKと合流する。八栗寺では、麓のうどん屋「山田屋」付近の渋滞で一時身動きが取れなくなるものの、午後三時には無事に八十八箇所を回り切ることができた。
またこの日はうどんの国・讃岐にちなんで「わら屋」では釜あげうどんを、そして「八十八庵」では打ち込みうどんを食べる。前日の「あさひ」共々、さすがうどんの国のうどんと言えるような美味しいうどんであった。


左・中:わら屋と釜上げうどん 右:八十八庵の打込みうどん


そして7日ぶりの屋根の下での宿泊となった。



番外:うどん屋巡り

○5月5日 晴れ

0730 出発
0830 彦江
0850 がもう
0910 たむら
1000 中村
1100 谷川(自分は食べず)
1230 山内
1330 長田
1430 山下
1500 解散
2045 神戸着

うどん屋を回る。
GWだった為か、とにかくどの店も行列だった。他にも山越と宮武にも立ち寄ったが、あまりの行列に通過せざるを得なかった。しかし、いくらブームと言っても、こうしたうどん屋に大挙して押しかけて行列を作ることが良いことかは分からない。

うどんの味は、やはり美味しかったです。さすが本場(本当?)だけあって、その舌触り、歯応え、出汁の味共に良かったです。ただ、蕎麦の時と違って他の普通の店との差はあまり無いので、わざわざこういう有名店で行列を作ってまで食べる必要は無い様に思う。(そもそもいくら美味しかろうとも、ラーメンやうどんで行列を作ってまで食う気はしない。)反対に、こういう有名店の良さの一つが、飾り気の無いしみったれた雰囲気であることを考えると、大量の客で擦れてしまった有名店を避けて、そこら辺にある普通のセルフうどんの店にでも入った方が何ぼか良いだろう。




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