「血のプールサイド事件」



十兵衛先生:さて諸君!
        本日の体育授業は1、2、3組合同で行なう。


      と、年甲斐もなくピチピチのビキニパンツにこれまた年齢に見合わないムキムキの筋肉を
      晒してプールサイドに立つ眼帯の中年男性。
      そして、その前に憮然とした表情で並ぶスクール水着の女生徒の集団。

      三弦堂学園体育教師幸安十兵衛。
      厳格な熱血親父と言う風情の人物だが、その実態は強引なノリで無体な事を
      他人に要求するかなりの問題人物。


るるる:………質問があります先生。

十兵衛先生:なんだ中尾?

るるる:女子の体育担当は右京先生のはずですが?(そう言う自分も実は男だが)

十兵衛先生:右京先生は喘息と消化不良を併発して病院に行った。
        季節の変わり目だからな。
        そんなワケでワシが代理だ。
なこ:あのう……それじゃ今男子の皆さんは何を?

十兵衛先生:奴らにはグランドを50周ほど走っておけと言ってある!

なこ:………。

しき:………(挙手)。

十兵衛先生:今度は長谷川か。なんだ?

しき:………もう10月です。

十兵衛先生:10月だな。

しき:なぜこの季節に水泳なんですか?

十兵衛先生:屋内プールだから寒くはなかろう。
        お前たち水泳部だって泳いでるじゃないか。
しき:水泳部もこの季節は体力トレーニング主体ですが。

十兵衛先生:ええい!四の五の抜かすでないわ!
        ワシは夏の間の水泳授業では男子どものむさくるしい裸しか見られなかったのだ!
       せっかく女子の授業の担当を出来るチャンスを逃してたまるかっ!!
       今日はワシが水泳だと言ったら水泳なのだ!


      一斉に氷点下まで下がる女子一同の視線。
      幸安十兵衛とはこんな男である。

十兵衛先生:さ!そういう事だ!
        思う存分泳ぐがいい!若鮎のごとく!
          このワシの眼福のために!



るるる:………しくるう、ちょっと。

しくるう:はっ!お呼びでありますかるるるさん!


      るるるの呼びかけにとてとてと走り寄ってくる小柄な少女。
      犬杜 紫玖流(いぬもり しくる)、通称しくるう。
      るるるの幼馴染で、るるるの正体が男である事も知っているが、その関係にはなぜか男女の恋愛感情は
      全くなく、完全な主従。
      るるるの命令はなんでも聞く忠実なしもべである。


るるる:ロッカーからわたしのスタンガンを持ってらっしゃい。

しくるう:はっ!了解であります!



      <<<<<<<<中略>>>>>>>>。



十兵衛先生:こ……コラ……貴様ら……!
        きょ、教師をスタンガンで昏倒させて……縛り上げるとは……なんと言うケシカランことを……。(痺れている)

るるる:ケシカランのはどっちです!
      みなさん、!この措置に何か不満は?


      きれいに首を横に振る女子一同。

るるる:はい、そう言う訳ですので、先生はこちらのプールで思う存分泳いでいて下さいな。


      ドボーーーーン!

十兵衛先生:ぬおっ!
        ここは消毒用の塩素プールではないかっ!
        こんな場所ではお前らの肢体が見えな……いや、授業の監督ができん!
なこ:あの、中尾さん……先生にこんな事をするのはあんまりではないかと……。
     塩素は身体に良くないですし……。
十兵衛先生:そうだ!よく言った瑠璃川!!

るるる:まあ、やさしいのね那々子は……。
      そうね、那々子に免じて特別に………。

十兵衛先生:うむ!すぐワシの戒めを解くのだ!

るるる:しくるう特別に消毒剤を増量サービスしてあげなさい。

しくるう:はっ!(ざらざら)

十兵衛先生:うおおおおおおっ!
       なんと言う事を!
       ぐぅ!股間がヒリヒリチクチクしはじめたではないかっ!

      (注)
      危険なので決して真似をしないように。。

るるる:さ、行きましょ那々子。

なこ:……あうう、いいのかなぁ……。

十兵衛先生:おおおおおっ!チクチクがぁ〜〜〜〜!
     いや、だんだんこれが気持ち良いような気も!
     ぬぉぉぉぉ!


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      結局自由時間状態になったプールで水遊びに興じる女子一同。

      ドボーーーーン!

      そんな中で一番端のコースで黙々と飛び込みとコース往復を繰り返すしき。
      流石に水泳部だけあって、フォームもスピードも大したものだ。
      プロポーション抜群なだけあって、その姿は十兵衛先生ならずとも眺めていたくなる美しさである。

なこ:……すごいですね、しきさんは。
     運動神経もいいし美人だしスタイルもいいし……。

るるる:あら、那々子あなただって負けてないじゃない?
      プロポーションだって、ほら。

      なでり(水中で)


なこ:うきゃあ!

るるる:……うふふ。
     (小声で)ちょっと、しくるう。
しくるう:はっ!不肖ながら、私も胸のサイズではクラスで屈指の大きさであります!

るるる:そんな事は聞いてないわよ!

しくるう:はううっ!も、申し訳ないであります!

るるる:授業の前に言い付けておいた那々子の水着への細工は済ませたんでしょうね?

しくるう:もちろんであります。
       言い付け通り、縫い目を弱らせておいたであります。
       着用者が激しい運動をすればほどなくちぎれとぶであります!
るるる:うふふ……。
      こうして泳いでいる間に那々子の水着はバラバラになって、あの子は衆目に裸体を晒す事になるわ。
      ああ、羞恥に紅く染まる那々子の可愛い顔を想像するだけで、私……。(ぞくぞく)

      
嗚呼、なんとおそるべき、そしてステロタイプのいやがらせであろうか!
      男嫌いのるるるなだけに、男子に見られる事のない状況を巧みに計算している!
      危うしなこ!

      と、妄想するるるるの傍らに、それまで黙々と泳いでいたしきがプールサイドに上がって来た。


      ザパーーー


クラスメート:は、長谷川さん!!み、水着が……!

しき:………?

      そこにはいつの間にか水着を失って全裸になったしきの姿が!!!

しき:………………あら?

クラスメート:きゃああ!あ、あたしの水着が!!

クラスメート:やだあたしも!なにこれ〜〜〜〜!!



      なんと、見ればプールで泳いでいた女生徒達の水着が次々とちぎれ、布切れとなって水面に浮かんでいる!
     もはやプールはパニック状態である。



なこ:は、はにゃあっ!?
     な、なんなのこれ!?
     みんなの水着が脱げちゃってる!

るるる:……………!?
      って、那々子?あなたはなんともないの!?

なこ:え?あ、はい。
     私はなんともないですけど……。

るるる:……………。

      ぐい

しくるう:あう!!
       な、なんでありますか!?苦しいであります!
るるる:しくるう……一応聞くけど………あなた一体何をしたの?

しくるう:はっ!
       ご命令通り、自分は那々子さんの水着に細工しようと更衣室に忍び込んだでありますが、
       困った事に那々子さんのロッカーがどれなのかがわからなかったのであります!

るるる:……………それで?

しくるう:そこで自分は、一クラス分全てのロッカーの水着に細工をする事を思い付いたであります!
       大は小を兼ねると言う奴であります。
       いやー、おかげで前の授業をサボる事になってしまったであります。

るるる:………あなたもしかして2組と1組のロッカーを間違えたんじゃないでしょうね?

しくるう:へ!?

るるる:水着が脱げてる子はみんな1組の子よ!

      なこは2組。しきは1組、るるるとしくるうは3組である。

しくるう:………。

るるる:………。

しくるう:はわわっ!?

るるる:このバカタレがーーーーーっ!!

      ガクガクガクガク!

しくるう:も、申し訳ないであります〜〜〜〜!


      ぶちぶちぶち

るるる:!!

しくるう:あう!?

るるる:な、なんであたしとあなたの水着までちぎれるのよ!

しくるう:はうっ!うっかり自分とるるるさん用の水着にまで細工してしまったであります!


るるる:きーーーーーっ!!

しくるう:あああ揺さぶるとこぼれるであります〜〜〜〜!

るるる:ま、まずい!
      このままじゃあたしの正体がみんなにばれちゃうわ! 
      いそいで更衣室に戻るのよ!

しくるう:は、はいであります!


      その時、プールの入口にランニングの挙句デロデロになった男子の集団が現れた!


男子生徒:ひでえよ先生〜〜〜〜。

男子生徒:もう走るのはカンベンしてくれ〜〜〜〜。

女子生徒:キャーーーーーーっ!!!

女子生徒:来ちゃだめええええ!!

男子生徒たち:おおおおおおおおっ!?
          (集団鼻血ブー)


るるる:見るんじゃなーいっ!


      バリバリバリバリ!


男子生徒たち:ギャーーーーーー!?



十兵衛先生:ぬおぉぉぉ!
       
なにやら楽しい光景が広がっている気配が!!
       
ええい!誰かワシをほどけーっ!
       
おおう!チクチクがぁ〜〜〜!



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  男子達の鼻血とるるる必殺の無差別スタンガンにより、プールサイドは地獄絵図と化したと言う。
      後に「血のプールサイド事件」と語り継がれる事件である。