「哀愁の温水プール(前編)」
りむ:あ〜あ、来る日も来る日もトイレ掃除。確かに朝起きられない私が悪いんだけど、
でもなんでトイレ掃除ばっかりなのかなあ・・・。
何か手馴れてきちゃってる自分がイヤだなあ・・・。
6月。初夏の暑さがじっとりと肌に感じられる季節。
毎日暑かったり、雨が降ったりと大変な時期だ。
りむ:あーやだやだ。とっとと掃除終わらせて、帰ろう。
花の14歳の放課後がトイレ掃除で終わっちゃうなんて、不毛もいいとこだよ。
夏が近づくと、トイレは蒸れる。
蒸れたトイレはにおいもきつくなってくる。
だが来る日も来る日もトイレ掃除をしていたりむは、最近そんな匂いも
気にならなくなってしまっていた。
??:りむ〜〜〜〜!
そこにおるんやろ、りむ〜〜〜?
りむ:あ、セレナちゃん!
今、トイレ使えないよ。清掃中だからさ、悪いけど別のトイレに行ってくれない?
セレナ:あー、ええの。うちは、りむと話がしたかっただけやから。
一人寂しくトイレの床を磨いているりむのところにやってきたのは、
金髪碧眼、年齢不相応な胸と年齢不相応な肢体を持った女生徒だった。
彼女の名は『流 セレナ』。パシフィックハイスクールでも数少ない、
一目でそれとわかるハーフの女の子である。
セレナ:なあ、りむ?なんであんたいつも遅刻ばっかりしとんの?
ひょっとしてトイレが好きなんか?
りむ:そ、そんなわけないよ!
セレナ:だっておかしいやん。トイレ掃除のペナルティ期間が終わりそうになると、
決まって遅刻してくるやんか。
まあトイレが好きなわけあれへんけど、やっぱ今のままやったら、
『トイレ臭い14歳』になってまうで。
気づいてへんかもしれへんけど、最近あんたアンモニア臭いわ。
りむ:ええっ?!本当?!!
うううう、そんなのイヤだ。
そんな『トイレ臭い青春』は嫌だよう。
セレナ:ところでりむ?
来週いよいよ、プール開きやなあ。
りむ:そうだね!
最近暑いからなあ。やっとって気がしないでもないよね。
セレナ:水辺に集う青い果実たち!
くぅ〜〜〜、たまらんわあ。
りむ:ちょっとセレナ?あんた何おやじ臭いこと言ってんのよ?
・・・・って、うわ!
セレナ:りむは去年よりどのくらい成長したんかなあ・・・?
りむ:ちょ、ちょっとやめてよ・・・
あたしそんなんじゃな・・・・
セレナはどういうわけか女の子が大好きなのだ。
彼女は急にりむにしなだれかかってきた。
セレナ:うちは去年より3センチも成長したで・・・
りむ:そ、そんな問題じゃなくて・・・・
夕方のトイレの中で愛し合い、絡み合う女生徒二人・・・。
ん〜〜〜〜、背徳の香りがするねえ。
(りむ:ちょっと!あたしはそんなんじゃないってば!)
と、その時
パリッ!!
二人:きゃっ!
二人の間に小さな火花が飛び散った。
セレナとりむはあわてて、飛びのいた。
セレナ:・・・・あ〜〜〜あ、せっかくええ感じやったのに・・・。
りむ:はぁ、今日はセレナの帯電体質に助けられたわ。
あたし、先に上がるからね!
セレナ:あ、ちょっと待ってぇえな、りむ〜〜〜〜〜!
りむ:まったく、冗談じゃないわ。
あたしは素敵な男の子が現れるのを待ってるのに、どうして
女の子に言い寄られなきゃいけないのよ・・・・。
セレナ:くくく・・・待っとれ、りむ?
必ずあんたを、うちの物にしたるでぇ!
来週のプール開き、楽しみにしてや!
初夏の蒸し暑さが残る夕方のトイレで一人、
虚空に向かっておのれの野望を語る、流・セレナ。
やばいぞ彼女は本気だぞ!
来週のプール開き・・・そこでりむを待つ運命とは?
続く
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