「しきと肉」


      ここは遅刻坂の手前にあるローソン
     三弦堂学園とICUパシフィックジュニアハイスクールの生徒達にとって、通学路にある恰好の道草場所として
     憩いの場であり、溜まり場でもある。

     今日も数多くの製とがたむろしているが、その一角に一人異彩を放つ女生徒がいた。

謎の女生徒:・・・・・・・・。

      三弦堂学園2年1組生徒、長谷川志紀(はせがわしき)、通称しきである
      その美貌と長身とグラマラスな肢体とで、高校生とは思えない艶を放っていてただ立っているだけで絵になる。
      ただ、常に無表情な上に無口なキャラクター故に、「凄い美人だが何を考えているか判らない人物」として知られている。

しき:・・・・・・・・。

      そのしきだが、さっきからソフトクリームを片手に何かを一心不乱に見つめている。

しき:・・・・(撫でたい・・・・)。

     ・・・どうやらローソンの駐車場の隅で眠りこける猫を発見したものの、撫でに行くべきかどうか逡巡している様だ。
     今買ったばかりのソフトクリームの存在が、ねこのナデリングを行なうにあたって猛烈にジャマなのだ。

   
猫:・・・!(むくり)
しき:・・・・!!!!

      視線を察知したのか、目を覚ました猫。
      そしてしきと目が合った!
しき:・・・・(う・・・・!!)

      猫のぷりちーさに無表情にクラクラしている模様。。

しき:・・・・(な、撫でたい・・・・!!!)

      猫好きメーターが臨界点を突破した模様。。



しき:・・・・(猫ってソフトクリーム舐めるかな・・・)。



      なんかムチャな事を考えている模様。
      そして、彼女が意を決して一歩を踏み出そうとしたその時・・・!


            ずん!!

   猫:フギャ!!(シタタタタタ)

しき:・・・・あ・・・・猫が・・・。


      猫は、大地を揺るがすような下品な足音に驚いて一目散に逃げ去ってしまった。
      言っておくが断じてしきの細い足から出た足音ではない。

下品な声:GFFFFF。な〜にやってんだぁしきぃ?


      そこに現れたのは小型ダンプ並の体躯の大男。(つーかデヴ)。
      あまつさえ、そのブルドッグに似た顔にはオシャレかはったりのつもりか毒々しい隈取りのペイントまでしている。
      彼は三弦堂学園3年S組(特殊学級)の地揺 太(ちゆらしふとる)通称あーすくうぇいくである。
      受験浪人と留年の連発で現在高三にして三十ン歳という特注サイズのバカである。
      エエ歳をして三弦堂学園の番長を自称しており、その校下で悪行三昧を働いているロクデナシでもある。



あーすくうぇいく:そんなとこでソフトクリームもって固まってねェで俺様と遊ぼうぜえ。
          ソフトクリームなんかより美味いもんを食らわせてやるぜぇ?
          前から後からな。GFFFFF!
しき:・・・・。



      などと言いつつ、しきの量感たっぷりの尻を撫でまわすあーすくうぇいく。
      バカで好色な上に平然とオヤジセクハラをするあたり、救いがたいゴロツキだ。



しき:・・・・お断りするわ。


あーすくうぇいく:つれねえこと言うなよ。一人もん同士仲良くしようじゃねえか。



しき:私にも選ぶ権利があるわ。
     私、ラードを食べる趣味ないの。



あーすくうぇいく:・・・・んだと?(ピキッ!)



しき:それにね。




      と、言うやいなや手に持っていた溶けかけのソフトクリームを地面に落とすしき。
      ソフトクリームは地面に落ちてベシャリと潰れる。

しき:このソフトクリームよりふにゃふにゃなものなんか誰も欲しがらないと思うわ。



あーすくうぇいく:・・・・!!!!
         て、て、て、てめえ!人が下手に出てりゃ付けあがりやがって!




      自分のセクハラ三昧を棚に上げていきなり理不尽に怒り始めるあーすくうぇいく。
     こうなると手が付けられない。
     事の成り行きを見守っていた周囲の野次馬達の間に戦慄が走る!

あーすくうぇいく:上等だあ!ぶちのめしたあとでガバガバになるまでやり潰してやらあ!



      
猛然としきに襲いかかるあーすくうぇいく!!
     危うししき!!


るるる:おやめなさい見苦しい!


    バチバチバチバチィッ!!



あーすくうぇいく:ぐぎゃーーーーーーっ!!!!

      あわやしきにあーすくうぇいくの手が届こうかという瞬間!!
      その巨体が猛烈な紫電に包まれる!!

      そして黒コゲになったあーすくうぇいくは白目をむいてその場に崩れ落ちる。


          ずずうぅん!!

るるる:ふん!こんな見苦しい生き物がわたしの三弦堂学園生徒の一人と思うと、鳥肌が立つわね…。



      巨大ヤキブタとなったあーすくうぇいくの後から憤懣やる方無い表情で現れたのは・・・。
      ご存じむらなここと中尾るるるであった。

るるる:1組の長谷川さんね?大丈夫だったかしら?


しき:・・・・・・ええ。


るるる:貴方がこの物体に取った態度は立派だったけど、いささか無謀ね。
      私がたまたま護身用のスタンガンを持っていたからいいようなものの、あのままだったら大変な事になっていたわよ?



      と言うるるるの手にある代物は、護身用スタンガンなんて生易しいものではない。
      どう見てもバイオハザード2に出てきた電撃銃並のコワモテの「兵器」である。
      まあ、相手は怪獣だったから別にいいんだが。

しき:そうならない事は判っていたから平気よ。


るるる:あら?あなた何か格闘技でも体得しているのかしら?


しき:そうじゃないわ。
     貴方が居るのが見えたから貴方に始末してもらおうと思ってたのよ。

るるる:・・・・・・・・。




      ヒュ〜と二人の間を空しい風が吹き抜けていく。
      見れば、流石のるるるも目が点になっている。

るるる:(・・・・・・・・や、やりにくい相手ね・・・)。


しき:でもお礼は言って置くわ。
     ありがとう。

るるる:あ、あらそう?
      ・・・ふふふ・・・そうね・・・。


      と、ここぞとばかりにお得意の妖艶な笑みを取り戻すと、さりげなくしきの手を手に取り撫で始めるるるる。

るるる:感謝の気持ちは形で受け取りたいものね?うふふふ・・・・。


しき:・・・・・・・・。


     つまるところ、るるるの目的もあーすくうぇいくと大差無かったりするわけである。


るるる:どう?このまま私の家までご一緒して・・・・。




ちゃむ:しきだーーーーーっ!!

        むにゅ!

しき:!?


      突如!降って湧いた様にしきの背後に現れたちゃむ!
      それと同時に、しきの巨大な胸を後ろから揉み上げる!!



ちゃむ:むむっ!!

     もみもみもみもみもみ

しき:あっ・・・・・・。


ちゃむ:でかいっ!!

るるる:何をしているの!私より先になんてことを!!


ちゃむ:にゃ!


      
いいところをジャマされた上に自分のやりたかったことの先を越され、
     柳眉を逆立てながらしきからちゃむをひっぺがするるる。


しき:・・・・・・。


るるる:あっ!いえ、先にって別に深い意味は無いのよ、うふふふふふ。(ちっ!)


ちゃむ:しきオッス!


しき:・・・・・・(・・・・・・猫)。


       なでなで
ちゃむ:?



       
猫っぽければいいらしい。

ちゃむ:おぅ!そうだしき!
      たこ焼き作っちくり!

しき:たこ焼き?



      
しきのたこ焼き作りの腕前はプロ顔負けである。
     ちゃむは、彼女のたこ焼きのファンなので彼女を見付けるとすっ飛んでくるのだ。



ちゃむ:うん!コンビニで小麦粉も買った!
      だから作って!

しき:それはいいけど・・・・タコが無いとたこ焼きは作れないわ。

ちゃむ:う・・・・・・・。
      こ、コンビニにタコ売ってなかった・・・。

しき:・・・・・・・・。



      
少し考え込むしき。
     ちらと視線を移すと、そこにはまだプスプスと煙を上げてぶっ倒れているあーすくうぇいくが。


しき:たこ焼きの替わりに豚モダン焼きならつくれるけど。


るるる:おやめなさいっ!!



      るるる、ナイスツッコミ。