真昼の決闘〜校庭編〜
右京:えー、今日の体育は陸上全般の・・・ごふっ!ごふっ!・・・記録を測定する。
特に公式記録となるわけではごふっ!・・・ないが、今回の記録を参考に・・・うっ(くらっ)
体育祭の選抜種目の選手を選考するので・・・(口元から血)・・・手を抜かずに測定してくれ。
ううっ!し、心臓が!!
女生徒:きゃあっ!右京先生だいじょうぶですかっ!?
右京:だいじょうぶ・・・大したことではない。いつもよりずいぶん楽なくらいだ。
気にしないでくれたまえごふふっ!(吐血)
三弦堂学園体育教師右京。
常に何かを患っており、四六時中生死の境をさまよう男。(でも体育教師)
毎年今年こそは危ないと言われつつも、なんだかんだで生き延びて勤続年数を重ねている。
黙っていれば線の細い美形なので女生徒にはそれなりに人気が高い。
右京:測定種目は今渡したプリントの通りだごふっ!
測定する順番は自由だが、きちんと時間内に全種目を・・・うっ!(ばたり)
なこ:ええと、100M走と幅跳びとハードルと・・・。
クラスメート:なこはけっこう運動神経はいいのよねー。
トータルで見れば多分ウチのクラスじゃダントツじゃない?
なこ:そ、そうかしら?
クラスメート:ぼにゃ〜っとしてる割に走ったりすると物凄いタイム出すしさー。
見かけと内容が一致してないからずるいよねー。(笑)
クラスメート:だよねー。アタマか身体か顔かどれか少しわけてよ。
なこ:あはは・・・。
そう言われましても・・・。(苦笑)
クラスメート:まあそれは冗談だけど、測定なんてかったるいしー。
さっさと終わらせちゃお。
謎の声:うふふふ。
お笑いね。
校庭に名突如鳴り響く妖艶な大音声!
見ると、朝礼の時に園長先生とかが乗る演壇上にいつの間にかすっくと立つ人影が。
・・・でかい声なのも道理で、ご丁寧に拡声器を使って校庭の全員の目を引いている。
壇上の生徒:だめよ貴方達、そんなことでは・・・。
なこ:さ、3組の中尾さん?
三弦堂学園2年3組の生徒で、生徒会長の中尾るるるである。
なこの居るところに忽然と現れては、なこにちょっかいを出しに来るのだが、
その度合いがあまりに激しく、しょっちゅう一緒に居る印象があるので、口さがない生徒たちの間では
「なこ」に対してその紫のカチューシャから「むらなこ」と呼んでいるとかいないとか。
清楚ななことは対照的に妖艶な魅力で熱狂的なファンも多い。
るるる:那々子程度の運動能力に感嘆している様では、わたしの華麗な記録を前にしたら貴方がた
きっと失神してしまうわね。
そう思わない那々子?
なこ:は、はあ・・・。
そうなんでしょうか・・・。←(呑まれまくっている)
るるる:「そうなんでしょうか」ですって?
まあ、わたしの実力に疑問があると?
・・・うふふ那々子、ずいぶん自信がおありの様ね・・・。
なこ:え!?いえ、あの、その、そういうわけじゃなくて・・・。←(繰り返すが呑まれまくっているだけ)
右京:おい、中尾くん、3組のキミが一体こんなところで何を・・・。
るるる:先生は引っ込んでいて下さいな。
コレはわたしと那々子の問題です。
右京:問題とかそう言う次元ではなくてだな・・・。
今は授業中で・・・。
るるる:口だし無用ですわ!!(ビシス!)←弱ツッコミ
右京:ぐはぁっ!
幼稚園児がくらっても泣かないような弱ツッコミに、派手に吐血しつつキリモミで吹っ飛ぶ右京。
ついでに心臓停止(ぴーーーーーーー)
るるる:と、言う訳で那々子。
なこ:は、はいっ!
やおら着ていた制服を脱ぎ捨てるるるる!
遠くで見ていた男子生徒が鼻血を吹いているが、下にはちゃっかり体操服を着用済み。
るるる:わたしと勝負してもらうわ!!
なこ:ええっ!?(な、なぜ!?)
るるる:そして私が勝ったら・・・うふふふ。
なこ:か、勝ったらどうするんですかぁ!?
るるる:うふふふ。
なこ:(びくびくびくっ!)
と、言う訳でワケのわからないうちになこ対るるるの陸上対決が始まってしまった。
クラスメートたちも、タイクツな測定よりはよっぽど面白いのですっかり観客モードである。
それどころか審判を買って出るものや校庭に石灰でラインを引き始めるものまで居て、
すっかりノリノリである
右京も死んでるしな。
なこ:くすん・・・わたし、別に勝負なんてしたくないのに・・・。
るるる:うふふふ・・・。負けないわよ那々子。
クラスメート:位置について!
よーい!
ぱーん!!
だだだだだだ!
クラスメート:ゴール!!(カチッ!)
るるる:ふっ!タイムはいかが?
クラスメート:えっと・・・。
ほぼ同着ね・・・。
コンマ2秒の差でなこの勝ちみたいだけど・・・。
るるる:まっ!!なんですって!?
しぶしぶやってるくせに手を抜いて勝負が出来ない生真面目ななこであった。
まあ、負けたらるるるにあんなことやこんなことをされると思うと、いくら危機感のないなこでも
さすがに勝ちはゆずれないのだが。
るるる:・・・ふ!まだまだ!勝負はこれからですよ那々子
なこ:あううう・・・。
そんなこんなで競技をかさねるも、二人の記録はどんぐりの背比べでどうも
決着がつかない。
るるる:(く・・・こんなはずでは・・・!)
こうなったら次の勝負で決着をつけましょう!!
なこ:ま、まだやるんですかぁ・・・?
るるる:当然よ!
最後の勝負は・・・ハンマー投げよ!
なこ:は、ハンマー投げ!?
・・・あのう、それって先生にもらったプリントには書かれてない種目で・・・。
るるる:この期に及んでそんなものを気にしていてどうするの?
そんな他人の作ったルールに引きずられて生きているようではダメよ那々子。
そう言う自分はかってに他人を引きずりまくって行動しているようだが。
なこ:でも私ハンマー投げなんかやったこと無いから投げ方わかんないですぅ!
るるる:このハンマーを持ってグルグル回転して、その反動で向こうに投げるだけよ。
そうね、ハンデとしてわたしが先にお手本を見せてあげるわ。
と、言うやいなやハンマーを引っつかんで女子とは思えないパワフルな回転をはじめるるるる。
ぶんぶんぶんぶんぶん!
るるる:えーいっ!
ぶぉん!
・・・・・どごーん!
クラスメート:す、すごい・・・。
るるる:ふっ、ざっとこんなもんね。
さっ!次は那々子の番よ。
なこ:は、はい・・・。
ぶぉぶぉんぶぉん
あぶなっかしい腰つきでハンマーを回し始めたなこ。
が、次第にその回転数が上がって行く。
なこ:はにゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!
ぶんぶんぶんぶんぶん!
るるる:い、いつまで回しているの!!
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!
なこ:い、いつ投げればいいんですかぁぁぁぁ!?
るるる:もう十分だからさっさとお投げなさいっ!!
ぶひょぉん!
・・・・・ひるるるる・・・・
一方こちらは心臓停止した後、保健室で蘇生したばかりの右京先生。
右京:ふう・・・。わたしとしたことが、これで今年に入ってから142回目の心臓停止か・・・。
・・・ふ、困ったものだ。
困るどころの騒ぎではない。
右京:こうしてはいられんな。
早く授業にもどらねば・・・。
ガシャーン!!
ドボス!
右京:どほば!
なこの投げたハンマーが保健室の窓を突き破って右京のみぞおちに命中!
右京、143回目の心臓停止・・・。(ぴーーーーーーー)
るるる:・・・ふ。見当違いの方向に投げてしまったわね。
この勝負、わたしの勝ちですね!
なこ:はにゃぁぁぁぁ・・・。←目を回してフラフラ
るるる:さあ!潔くその身体を私にゆだね・・・!
クラスメート:でも中尾さん・・・。
飛距離だけならなこのハンマーの方が遠くまで飛んでるわよ。
るるる:・・・!
な、なんですって!?
クラスメート:だってほら、あんなとこまで届いたわけだし。
るるる:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふ、さ、流石ね那々子・・・。
今回は引き分け扱いにしてあげるわ・・・。←(すげぇくやしそう)
こんだけ人を振りまわしてるんだから勝ちを主張しても良さそうなもんだが、
どうやらプライドが高いが故に、名実ともに完全勝利で無いと気が済まないらしい。
るるる:でも!(ビシッ)次こそはわたしの完全勝利よ!
それまでにせいぜい腕をみがいておおきなさい。
・・・と、捨て台詞と共に艶を振りまきながら校舎へと去って行くるるる。
難儀なキャラである。
クラスメート:・・・台風みたいな人ね。
クラスメート:そういやあの人、自分が負けた時はどうするのかをとうとううやむやにしちゃったけど・・・。
ほっといていいのなこ?
なこ:あうううう・・・・・・・ゆ、揺らさないで・・・・。←まだフラフラ
ちなみに右京先生はちゃんと次の日にもいつもどおり元気に(でも不健康)学校に来ておったり。
・・・実は不死身かも。